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【小説】ラヴァーズロック2世 #46「共犯関係」

あらすじ
憑依型アルバイト〈マイグ〉で問題を起こしてしまった少年ロック。
かれは、キンゼイ博士が校長を務めるスクールに転入することになるのだが、その条件として自立システムの常時解放を要求される。
転入初日、ロックは謎の美少女からエージェントになってほしいと依頼されるのだが……。

注意事項
※R-15「残酷描写有り」「暴力描写有り」「性描写有り」
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※連載中盤以降より有料とさせていただきますので、ご了承ください。


共犯関係


夏の陽差しが照りつける乾いたアスファルトの車道。結露したペットボトルが入ったビニール袋をぶら下げて歩いていると、見覚えのある小男が後ろから周辺視覚にふらりと入ってくる。

「君が病気だとはいわないよ。だけど今回に限っていうなら、客観的判断力で勝っているのはぼくのほうだと思うんだ」

ロックはゆっくりと周りを見渡してから「そんなことより、ウィジャボードはどこにあるんですか?」と訊ねた。

ロックのその動作の鈍重さにストライプさんは驚きの表情を隠せない……まるで老人ではないか……。

「今日は仕事ではなく、ひとりの友人として来たんだ」

「そんな暑苦しいセリフをストライプさんがいうなんて……」

「ぼくが冷淡で皮肉屋なのは平和なときだけだよ」

ストライプさんは背が極端に低いので、否が応でも頭頂部が目に入って来る。薄毛のために頭皮がこれでもか、と見えてしまっている。この人は若いふりをしているが、本当は恐ろしく年老いているのではないか……。

「とにかく、担当者がやって来たら無視したり無下に追い返したりしないで、とりあえず話だけでも聞いてあげてほしい。これだけは約束してほしいんだ」

「クラウディア社?」

この場所に現れるずっと前から、通信を介して説得し続けてきたのに、この少年ときたら……まるで今はじめて聞いたような口ぶりで……。

「君が思っているとおり、巨大企業も宗教団体も、それから良識者委員会も、ある意味ではみんな〈ぐる〉さ。でも、ぼくらには何もできない。かれらが成層圏で繰り広げているゲームには参加できないし、それを理解することすらできないんだ。ぼくらにできることは最大限かれらを利用しつくすことだけ。その果ての終着駅で何が待っているかなんて考えずにね。ぼくらにとって唯一希望があるとすれば、それは〈永遠に続く繫栄なんてものは絶対にない〉ということだけさ……」

説得をあきらめてしまったストライプさんが帰ってしまったあとも、ロックはそのことに気づかず、炎天下の車道を歩きながら、ストライプさんの主張に対して見解を述べ続けた……まるで独り言のように。

かれが路上で倒れているのを発見されたとき、ビニール袋の中のペットボトルはパンパンに膨れて破裂寸前だったという。

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