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ひねくれオタクの就活戦記

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イントロ

こんにちは。今日は自分語りをします。
25卒として就活を終えて数か月が経ちました。
去年の5月ごろから就活を始めて、およそ1年ぐらいの長い戦いでした。
私は運よくそれなりの企業に内定を得ることができましたが、戦績としては思ったほど振るわなかった、というのが正直な感想です。
そこで、26卒以降の皆さん、
特に「圧倒的に有能というわけではないが、まあそれなりの企業に内定をもらえるだろうと思えるぐらいには自尊心がある」皆さんのお役に立てれば、あとウケて承認欲求を満たせればと思い、筆を執りました。
なんだか春休みにやってくる引退した先輩みたいですね。
就活に対する姿勢について書きつつ、自分が感じたTIPSも共有できればと思います。

ちなスぺ
・理系院生
・地方在住
・コンサル、デべ、商社志望でコンサルへ就職(デべ商社は向いてなかった)
・ガクチカは起業モドキ(強すぎてこれ一本で戦えた)
・ラーメンが好き
・最近体調を崩して体力がかなり落ちた

思ったより長くなってしまいました。結論ファーストで話せとよく言われるので、結論は目次に示してあります。

夏インターンまで

就活で揶揄されがちな三大要素として、WEBテスト・ガクチカ・自己分析があるが、全部ちゃんとやったほうがいい。

これは個別の最適解と集団の最適解の相違についての話です。
社会や就活の外部の人間から見れば、ガクチカとかいうものは

・「企業が高く評価する」学生生活、学生の資質を評価するという点で極めて学生にとって不利

・そもそも学生生活の中でガクチカ的エピソードを作りに行くのは合目的的で本質の反映ではない

・評価されに行く、という姿勢が嘘をついているようである

という点で茶番であるしカスです。

また近年では、就活の早期化を憂う声も多く聞かれるようになってきました。
サークルの幹部代が2年生になりつつあるとか、昨年には東大が企業に対して声明を出すとか、われわれの身近なところでも早期化の影響が出始めています。

就活の早期化によって学業や活動に注力できず、教養を身に付けることができない、これは社会にとって損失である…
これは集団、社会の論理、外部の論理です。
(エリート学生や大学の先生、就活をやっていなさそうな個人事業主が言いがちなのは当然ですね)

しかし個人レベルでみるならば、就活というゲームに乗る以上、無対策でWEBテストに挑んだりガクチカを用意していなかったりすることは自身の損失です。
どれだけバカバカしいと思っていても、そういう風土がもうすでに形成されていて、それに乗らないと乗らないというのは個別の最適解ではないように思えます。

就活が早期化し、面接解禁の時点で半数以上が内定を得ている現状において、学生の本分を重んじる高潔な精神で本選考から挑んでもそれを評価してくれる企業はほとんどありません。悲しいね。

「就活なんて本来は履歴書書いて送るだけ、早期から始めてるやつはリ〇ルートに流されるバカ」みたいな言説には、同意したくなるニヒルさがあります。
が、新卒就活のリスクとリターンを比較したときにリターンが大きいと考える我々凡人にとってゲームを冷笑して乗らないのは普通に損です。

新卒就活がポテンシャル採用であるということは、これまでの人生のなかで培ったポテンシャルっぽいものを企業が恣意的に判断するということです。
いくら人材不足の時代とはいえ優良企業ではいまだに企業側のパワーが強いです。媚びましょう。企業、特にJTCに入るということは長いものに巻かれることを是とするということです。

そのうえで、なぜ上記の3要素が重要なのか、という話ですが、これを読んでください。https://saize-lw.hatenablog.com/entry/2023/10/21/185938
(正直なところ、この体験記は上の記事の劣化版ともいえます)
読んだ前提で話をしますが、めんどくさい人は「就活においては外部から観測可能な『体(てい)』の一貫性が問われている」ということだけ理解してほしいです。

これを読めば、就活の初期段階で「自己分析」をやれと言われる理由もわかると思います。自己分析の目的は「自己理解」だけでなく「体の一貫性」を強固にするという目的があるわけです。

自分の人生を振り返り、アピールポイントをチェリーピックするのが自己分析の目的です。選ぶ要素は自分が心から本質であると信じている要素である必要はありません。外部向けに体を一貫できるのであれば何でもいいわけです。

ただ、やっぱり自分の本心とあまりにもかけ離れた要素は一貫させることが難しいでしょう。
そのために本心ベースの自己分析をすべき、というものが喧伝されるわけです。
指導者にとっては体の話をするよりも本心ベースでの自己分析を奨励するほうが余計な説明が省けるし結果として一貫性が担保されるので楽ということです。

そして、ここで見つけたアピールポイントに沿って人生の経験からガクチカを抽出するわけです。(経験重視!)
企業によっては、アピールポイントを「リーダーシップ」のように特定の要素に固定しているところもあります。
これはまあマッチングなので、合わないなら無理に受ける必要はないと思います。というか、ESなどの段階で通らないようになっています。動画面接などが用意されているのはそのためですね。

ということで僕は夏前からめちゃくちゃWEBテストとケース面接の対策をしていました。Twitterで就活用アカウントを作成してWEBテストの問題を入手して解答を叩き込んだり、友人と協力してケース問題に関する書籍をこなしたりしていました。
特にケース面接については、いくつかのフレームワークを暗記してその場であてはめていくだけで、どれだけ突飛な問題でもそれなりの解に着地できるようになりました。
今思うとまったく本質的ではない手法ですが、コンサル系の面接のフィードバックでは「よく整理できていてわかりやすいです」としか返ってこなかったので、多分そのレベルで十分なんだと思います。戦略系の面接でも同じでした。質問に食らいついたのが評価されただけだと思います。

就活にまつわるすべてのサービスは「不安をあおるサービス」であることを銘記した方がいい。

就活に着手している方なら重々承知であるとは思いますが、就活ビジネスは美容や受験と同じく、「これをしていないとまずい、これをしていれば普通」という言説をまき散らすことで不安を煽りサービスへのコミット度を高めるビジネスです。 
論理的なESを書くための添削会、GDで差をつけるための特訓会(選考あり)などですね。

彼らによると「就活力」という謎のスキルがあり、これはインターンやセミナーを受けることで向上するらしいですが、ついぞ実感したことはありませんでした。インターンに行って向上するのはインターンでの立ち回りだけです。
というか、8割ぐらいはベンチャー企業への導線です。ベンチャーは普通にやってたら学生との接点が持てないので、就活そのものに組み込まれることで接点を生んでいるのです。
すみません、偏見かもしれません。

かくいう自分も、就活初期にはこういったイベントにまあまあ参加しました。
半分はアマギフ目当てでしたが、もう半分は自分にとってプラスになればいいなあと思っていました。GD会から導かれる謎のベンチャーのインターンにも参加しました。6月という早期に参加したので、インターンでの立ち振る舞いを理解できたのは良かったと思います。
担当してくれた社員が31連勤中の17連勤目とか言っていてこいつ正気か?と思いました。

メンタリングサービスも多く存在しますが、基本的にはカスです。
内定者メンターなんてもってのほかです。
内定者は内定者であって、なぜ内定したのかを類推することしかできません。彼らのロジカルな類推に価値を感じる人が一定数いるのは分かるし、そういう人はメンターについてもらえばいいと思いますが…少なくとも僕は役に立ったと思ったことはないです。友達との相互監督で十分でした。

メンターはすごく強気で話してくるので「おお」と思わされますが、よくよく考えてみると就活サイトやビジネス書で言われていることの焼き直しにすぎません。元ネタのビジネス書買ったほうが時間的にも金銭的にもいいと思います。
(一度戦略コンサル内定者コミュニティのメンタリングについて話を聞いたことがありますが、びっくりするくらい高額でびっくりしました。彼らは大金を払ったとしても責任を取ってはくれないと思いますが…)

ここからは単なる愚痴になるのですが、「ギブ」とか「テイク」とか「情報の希少性」みたいなこと言う内定者は小銭稼ぎしか考えていないから近寄らない方がいいです。
その匿名の人は、会社の採用や就職活動全体において何のポジションも有していません。こいつがいくら情報を規制しようがばらまこうがその企業に与える影響は微塵もありません。セールストークです。

こうしたビジネスと関わりを持つ場合は個人情報を売り渡すことで対価を得る、不安を煽られているだけという自覚を持ちながら取り組むぐらいでいいと思います。

インターン

インターンは周りを蹴落とす場である。遠慮してはならない。

個人的に一番伝えたい部分です。
インターンは建前の上では職業体験ですが実質的には選考の一部です。そして、選考においては他者より優秀であることを顕示しなければなりません。

受ける企業が独創性を求めているのならブレストを企画してガンガンしゃべるべきですし、協調性が見られているらしいのであれば議論の回しと統合を積極的に行うべきです。

特にコンサル志望者は、協調性を評価してくれるなんていうナイーブな考えは捨ててください。
人間性が終わっていても知的能力が優れていれば拾うのがコンサル(だそう)です。
ほんとか?(戦略系だけという説もあります。)

コンサルのインターンでは大体事業戦略の計画がテーマになるので、具体的な経営計画を立てるという目的を見失うべきではないです。仮説を立て具体の話だけをしてください。

問題を構造的に分析して抽象的なレベルで考えてみるのもいいですが、ストーリーのある具体的で地に足の着いた戦略を打ち出す上では不可欠ではないと思います。(有用ではあります。)

コンサル志望者、特に理系の民には議論を抽象レベルまで混ぜ返すやつが必ずいますが、「後で考えよう」と切り捨てていいです。

僕が失敗したのはたぶんここです。
チームでいい結果を出すことにとらわれすぎてしまい、みんなで議論することを優先しすぎてしまいました。

僕が参加したインターンは数時間に一回社員とのディスカッションタイムがあるのですが、みんながしゃべって議論が進んでいるからいいかと思ってプルスウルトラだけしていたらフィードバックで「後半全然しゃべってなかったけど議論着いていけてなかった?」といわれて憤死しました。
基本は議論を主導していた自覚があった分ショックでした。

「答えを出すこと」という与えられたゴールに終始して「アピールポイントを伝えて評価される」というメタ目的を見失わないようにしてください。

余談ですが、インターンにおいて謎の就活コミュニティや内定者コミュニティ、優秀層内でのなれ合いが散見されることがあります。Twitterなどでもよく見られる光景で、彼らを見ていると周りが優秀すぎて鬱とか横転とか言いたくなりそうなものです。しかし、あれは闘争エリートたちが馴れ合いの楽しさを求めてやっているだけだからあまり気にしなくていいと思います。受験期だってなれ合ってるやつらが強いんじゃなくて強いやつらがなれ合ってたはずです。彼らは発信・拡散力が強いので彼らの振る舞いが目に付くことも多いですが、あまり気にしないほうがいいと思います。

就活、もといビジネスにおける「論理的思考力」とはストーリーを構築する力である。

就活においては論理的思考力が大事だ、ESの構成や面接の受け答えは論理的であるべきだ、とよく言われますが、結局どういうこと?となりがちだと思います。
これは持論ですが、論理的であるというのは「ほかの可能性が差し込まれる余地が低く、妥当な推論である」というくらいの意味だと思います。

ここでは数学ぐらい厳密に論理的である必要はなくて、たとえば逆の誤謬を犯していても逆の可能性が”常識的に考えて”存在しなければ十分論理的になります。

よく聞く「仮説思考」がいい例です。仮説というのは結果から原因を推論するアブダクションで、論理的に正しいものではありませんが、検証を通じて「どうやらそれっぽそうだ」という合意が取れればそれは論理的思考の結果として認識されます。

これが表れるのがインターンだと思います。大概のインターンは「なんらかの計画を立てて、発表して、社員からフィードバックをもらう」という形式だと思います。
そこで、社員からの質問に適切に答えられないと、選考で落っこちてしまいます。だから、「どうやらそれっぽそうだ」力=論理的思考力を身につける必要があったんですね。
論理は厳密でなくていいので、致命的な穴をふさぎ、全体を一貫するような納得感のある物語性を与えることで説得する、これができるとすごいです。

また、計画を立てるうえでは仮説を立てて検証のほうが圧倒的に早いです。ビジネスにおいては論理的な厳密さよりも早さが重要らしいので、その点においても仮説思考がもてはやされているわけです。

インターン以降

面接は場数ゲー。

面接は慣れです。数さえこなせばどのような角度で質問されても聞かれたことに答えるだけになります。面接官に対し疑心暗鬼になり、意図を深読みする必要はありません。面接は受験とは違うので、「落とされる」というより「合わない」という認識を持つことが自己防衛の上で重要だと思います。

とはいえ、答え方には工夫が必要です。
上記の論理的思考と通ずる部分ですが、応答が「そうじゃなくてもよくない?」と疑義を挟めるようなものだと主張そのものへの信頼感の低下、もっと言うと体の一貫性への疑義が生じてしまいます。
逆に言えば、いわゆる深堀りは体の一貫性が本当に保たれているか検証しているわけです。
面接のステップが上がるほどパーソナルな質問や将来像への質問が増えるのもこのためです。過去のチェリーピックエピソードだけでなくその場で出てくる、見てわかるレベルで体を保てるのであればまあ大丈夫でしょう、という判断をしているわけですね。

そのため「自分が見せている性質に疑義を産むものではないか」という前提をもって面接対策を行うといいと思います。就活アカウントが深堀質問リストみたいなものを多数共有していると思いますが、それらを活用するのも手です。リストへの回答を用意することが目的にならないようにしながら、うまく活用しましょう。

服装や面接環境、話し方などの本質的でない部分も極めて重要である。

面接という場は、会社からすれば「こいつをうちの社員としていいか」の判断の場であるわけです。インターンの際の説明と矛盾するようですが、「客先に出せるか」が重要な判断のポイントになります。
ここで逆張っても得られる評価は
「本質的な思考ができているな☺️」ではなく、
「他者の視点を想像できないのかな😰」です。

みんながやっているルールに乗れない、というのはその中にどのような思想があったとしても不安要素となってしまうわけです。こうしたマナーやエチケットといわれるものは本質的でないのでやらなくてよい、と考える人はベンチャーや起業といった、同じ考えを持った人が集まっているコミュニティのほうが向いていると思います。

あとがき

思った3倍くらいの分量になってしまいました。これでも書きすぎないように、余談をできるだけ挟まないように注意したつもりでした。見積もりを途方もなく間違っていたようです。
就活を通して、就活はカスであるという認識は結局変わりませんでしたが、虚勢を張ることの重要性やメタ視点に関する理解度が劇的に深まったのは良かったことだと思います。そして、自分が感じたことを大まかにでも記せたのではないかと思います。読み物として面白いものになっていると幸いです。もっと優秀な人ならもっと本質をえぐる説明ができるかもしれませんが、上見てもしゃあないですね。気が向けば追記します。
就職して2年後ぐらいにこの記事を見返した自分がどのように感じるのか今から楽しみです。
散文でサンプリングまみれの文章となってしまいましたが、頑張ったのでほめてくれると嬉しいです。

おまけ

文中で「新卒就活のリスクとリターンを比較したときにリターンが大きいと考える我々凡人にとってゲームを冷笑して乗らないのは普通に損です。」と書きましたが、ここのロジックについて補足します。

ここから先は有り体に言えば『僕は君たちに武器を配りたい』の書評です。

『僕は君たちに武器を配りたい』において、投資活動とは金銭に限らず自分のリソースを企業に投下することでリターンを得る行為であり、投資においては自分の頭で考えて、判断を下すことが重要である、と述べられています。
その点で、リスクを自分の管理下から手放し外部化する投資信託や住宅ローンは悪手である、という主張をしています。
また、新卒というのは自分の労働力、時間などを企業に投資する投資活動と考えることができます。

となると、いわゆる大企業に就職することは自分の手元からリスクを企業に移すことであり、悪手です。どれだけ企業の業績にコミットしたとしても、良くてボーナスが増える程度で企業価値の向上が自分の資産になることはありません。(最近ではストックオプションなどもありますが、大企業では恩恵は大きくないと考えます。)そのため、本書ではより自分のリソースの投下が資産価値の向上につながるベンチャーや起業などを勧めているわけです。

しかし、そもそも投資を自分のリスクテイクが及ぶ範囲で情報を集めて決断できるほど、情報収集、処理、判断に優れた人はそう多くないのではないでしょうか。決断コスト、収集コストを外部化するということにかなりのメリットを感じる人が多いからこそ、投資信託も住宅ローンもフランチャイズも一定の成功を収めているのだと思います。リスクを外部化、不可視化するビジネスがが弱者を食い物にするものだといわれればそうなんですが…
弱者になるな=投資家になれ、というのが本書の主張ですが、そのためには自分の頭で考えるための地力と覚悟と教養が必要で、その参入障壁は高く…以降繰り返しです。

これを乗り越えるには、二つの相反する要素が必要になります。つまり、どこまでも深く情報を集める必要があるが、個人の情報収集能力では絶対に正解にたどり着けないので、ある程度のところで諦めてリスクを許容して決断する必要がある、ということです。これを実現するには本書の著者のような、きわめて高い精度での論理的思考力や情報処理能力が必要です。極めて高い情報処理能力という点で、東大出身なのは本当に合点がいくところです。

彼らのようなエリートは自分の判断に責任をもって投資家的な生き方をすればいいと思いますが、私のような凡人にとってリスクが手元から離れるというリスクと引き換えに情報収集と判断の機会を減らすというのは非常に魅力的に映ります。なんなら、リスクが手元から離れるのはいいことですらあります。そういう風に考えるということが、大企業に所属するリターンのほうが大きいと考えるということです。

本書では英語・IT・会計は奴隷の学問とされています。「使われる側」「非投資家的な働き方」のための学問ということですね。完全に同意します。サラリーマン検定1級、模範的奴隷であるコンサルが、入社前課題としてこれらを課されるのは非常に示唆的だと思います。

曖昧で月並みな意見にはなりますが、「使われる側として今生きている」という現状認識と、「資本家サイドに回るにはどうすればよいか?」という問題意識を常に持って働くべきかと思っています。

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