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「介護施設における生産性向上の立役者は誰?〜介護助手のススメ〜」

社会保険労務士の山地です。

中小企業の同一労働・同一賃金施行を目前に、働き方改革という言葉を聞かない日はありません。

働き方改革が目指すものは、人材確保と生産性の向上です。

今日は介護施設における生産性の向上についてお話したいと思います。

介護の現場は一般的に、残業はそう多くありません。日本労働組合総連合会(以下、連合)が2018年10月から翌年1月に実施した「介護労働実態調査」によると、1か月の時間外労働は平均8.2時間、正職員では平均10.2時間でした。

時間数だけ見ると、恒常的に毎月数十時間も残業している他業種もあるくらいですから十分許容できる範囲です。

しかし、問題は不払い残業、いわゆるサービス残業があることです。上記の調査回答の残業時間のうち、不払い残業なしと回答した人は75%でした。裏を返すと残りの25%、つまり4人に1人はサービス残業していることになります。

連合が行ったこの調査では主に労働組合がある事業所を対象としているため、組合のない事業所ではこの結果よりも実際はもっと多い可能性があります。

時間外労働の内訳を見ると、始業前、終業後ともに
・利用者へのケア・家族等への対応
・ケアの準備・片づけ
・情報収集・記録
がトップ3を占めました。

また、不払い残業に該当したものも同様の結果でした。

なぜサービス残業が発生するのかについて、同調査では「自分から請求していない」が70.9%、「請求できる雰囲気にない」が40.3%になっています。

サービス残業させられてうれしい人はいません。潜在的な不満を放置すれば退職時にトラブルになるでしょうし、ブラックのレッテルを貼られてしまいます。

サービス残業をなくすためのひとつの方策として取り組んでいただきたいのが、「介護助手」の採用です。

利用者や家族と関わる時間をできるだけ増やし、専門性の高いサービスを提供するためには、清掃、配膳・下膳、洗濯、入浴準備など他の人でもできることは他の人にやってもらうのです。

大規模施設ではリネン係、清掃員など独立した職種として採用している施設はあります。小規模なところでも一番忙しい時間帯に短時間でも来てもらえれば助かるはずです。

この「介護助手」は全国老人保健施設協会の東 憲太郎会長(三重県)が発案した取り組みで、三重県では平成27年度から国の地域医療介護総合確保基金のモデル事業として実施されています。

この取り組みの成果は
離職率の低下(導入前の平成26年度の12.5%から導入後の平成30年度は5.1%)
・介護職員の業務量の軽減
・気持ちにゆとりをもって業務ができるようになった
などが挙げられます。

この事業は元気な高齢者に「社会貢献しませんか?」と呼びかけて実施したのが始まりですが、高齢者でなくてもたとえば障害者でもよいと思います。障害の程度は人によって千差万別ですが、介護助手の業務を担うことが可能な人もいるでしょう。

介護助手導入マニュアルはこちらから
https://www.pref.mie.lg.jp/CHOJUS/HP/000225066.htm

令和3年3月1日から障害者の法定雇用率が従前の2.2%から2.3%に引き上げられています。(※民間企業の場合)


介護職員の業務負担を軽減してサービス残業をなくし、障害者雇用の創出にもつながる「介護助手」の採用で、働きやすい職場環境整備に努めてほしいと思います。(*^_^*)


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