アルコールを分解するまで。
頭の血管1本1本に何かが詰まって、体が前に傾いていく。息が浅くなって詰まる喉に意識を向けていないと、無感覚な世界に落ちて行ってしまう。
どうして。いつから。ふわふわ身体が浮くような感覚はどこに消えてしまったのだろう。友人のくだらない話にも大笑いして、なんだかそのあとは涙がでてくる。今、目の前の幸せに泣くのだ。
映画の主人公になったような気分で席を立ち、お化粧を直して。まっすぐ歩けない自分にも笑って。お酒に頼って失敗して、記憶が飛んだ。
なぜか隣人が最寄り駅に迎えに来ていて、駅前の看板で自分の頭を支えている写真や、家のエレベーターの前で熟睡している写真が残っている。これは反省するための記録だ。
笑っていないと崩れてしまいそうだったのに、笑っている自分も嫌いだった。何にも向き合わず、感情だけを爆発させていた。何も見ず、聞かず、ごまかして嘘をついた。酔っていないときの方が、酔っぱらっていたのだろう。
「今が楽しければよかった」が、よくなる日は一生来ない。自分の名前を呼んでもらって振り向いて。駆け寄って。自分の存在を確認していた。誰かの目の中に映っていないと、自分が誰かもわからなくなっていた。
大好きだった写真も、絵画も、本も、私を埋めてくれなくなったから大切にしなかった。同時に1つ1つ自分がなくなっていき、もっと不安になって、「その目」を手放せなくなる日々を重ねるのだ。
目を覚ますときはいつも1人で、何もかもを明るみにする朝が怖くて仕方なかった。全て破綻しているのが現実だったから。おはよう。おやすみ。おかえり。ただいま。
「内緒だよ。」
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