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社労士的就業規則の作り方 19

鹿児島で社労士をしています原田です。

 私が誰にも知られないように秘密裡に開催した、2024年上半期世界社労士コンテンツアワードで、堂々の入賞を果たした就業規則の作り方です。
誤解の無いように言うと、このアワードの受付・選別・審査・発表・運営は私一人でやっており、かかった時間は全部で10秒です。

ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。


第6章 賃金 第43条

休暇等の賃金控除

(休暇等の賃金)
第43条 年次有給休暇の期間は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払う。
2 産前産後の休業期間、育児時間、生理休暇、母性健康管理のための休暇、育児・介護休業法に基づく育児休業期間、介護休業期間、子の看護休暇期間及び介護休暇期間、慶弔休暇、病気休暇、裁判員等のための休暇の期間は、無給 / 通常の賃金を支払うこと とする。
3 第9条に定める休職期間中は、原則として賃金を支給しない( 〇か月までは〇割を支給する)。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

前提知識として
休日:労働義務の無い日
休暇:労働義務がある日に、義務を免除された日
休業:労働を免除又は禁止された期間
と、それぞれが少し違います。

この条項では、休暇と休業を扱っているので、条題が「休暇」になっています。私用で休んだ場合の賃金の支払いについて定めていないと、人によって異なる対応をしてしまったり、安直に判断してしまうことがあるので、きちんと取り決めて明確化しておいた方がいいでしょう。

第1項は年次有給休暇。平均賃金又は所定労働時間労働した通常の賃金の支払い義務があるとする労働基準法通りです。

有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。

労働基準法 第39条 第9項 より抜粋

 「厚生労働省令で定めるところにより算定した額」とは、健康保険の標準報酬月額を30で割った額を1日単価とした場合です(労働基準法施行規則第25条第3項)。実務上で採用している企業は非常に少ないです(実は見たことがありません)。
 健康保険に加入していない人(パート・アルバイト)がいる場合は、その人の賃金を別途に定める必要があります。標準報酬なので、高くなる場合と安くなる場合が両方ありえます。

 平均賃金にした方が支払額が若干減るので「事業主ウケがいい」と思いがちな方もいるでしょうが、給与計算の手間が非常に大きくなるので、個人的には通常支払う賃金にした方がいいと思っています。調査や助成金等で賃金額を検証する場合も大変になります。

 特に正社員の場合は、平均賃金方式だと、有給分の賃金を控除して、手当として支払うことになるので、給与計算時の手間が3倍面倒になります。

 また、自動計算で行うシステムが入っていたとしても、残業がない月とかは、微妙に減らされているのがありありと分かるので、必要以上の不満を持たせることになるでしょう。

第2項は各種休業等についてです。モデル規則上では第25条から第29条の出産・育児・生理・介護等の休業・休暇についてと、慶弔等の特別休暇や第9条の休職関係です。

モデルでは、第29条に不妊治療休暇がありますが、第43条には書かれていないので、存在する休暇については記載の必要があります。また、名称等を変更している場合は、その名称に合わせる必要があります。

 これらが全て有給又は無給なら、この書き方でいいですが、内容によって変わる場合には、それぞれで記載することになります。
各条文に記載することで、ここから省くことも可能です。

モデルのように、賃金の部門にまとめて書いてあると、給与計算担当者からは喜ばれます。また休業休暇を利用する立場から見れば、各条文に書いていた方がトラブルは回避しやすいです。

第3項における第9条の休職とは、このモデルでは業務上外の傷病休職のことです。実際の第9条にどう記載されているかと、整合性が保てるようにする必要があります。

 私傷病中に賃金を払う企業は非常に稀なので、原則的に無給と記載する方が多いでしょう。また、健康保険被保険者であれば、賃金の一部支給によって、傷病手当金の金額が下がるので注意が必要です。


 こちらは社労士目線で作る時の話であり、モデル規則の解説に書いてあることには、あまり触れていません。併せて参照して理解することが必要です。

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