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社労士的就業規則の作り方 13

鹿児島で社労士をしています原田です。
 就業規則は嫌いと言ったら激しく怒りますと言うと、みんなが好きですと答えてくれる、一部の人に好評な就業規則の作り方です。

ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。


第4章 労働時間、休憩及び休日 第26条

産前産後の方の健康管理

(母性健康管理の措置)
第26条 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、所定労働時間内に、母 子保健法に基づく保健指導又は健康診査を受けるために申出があったときは、次の範囲で時間内通院を認める。
① 産前の場合 妊娠23週まで・・・・・・・・4週に1回 妊娠24週から35週まで ・・・2週に1回 妊娠36週から出産まで ・・・・1週に1回 ただし、医師又は助産師(以下「医師等」という。)がこれと異なる指示をしたと きには、その指示により必要な時間
② 産後(1年以内)の場合 医師等の指示により必要な時間
2 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき勤務時間等について医師等の指導を受けた旨申出があった場合、次の措置を講ずる。
① 妊娠中の通勤緩和措置として、通勤時の混雑を避けるよう指導された場合は、原則として時間の勤務時間の短縮又は時間以内の時差出勤を認める。
② 妊娠中の休憩時間について指導された場合は、適宜休憩時間の延長や休憩の回数 を増やす。
③ 妊娠中又は出産後の女性労働者が、その症状等に関して指導された場合は、医師 等の指導事項を遵守するための作業の軽減や勤務時間の短縮、休業等の措置をとる。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

 男性の育休取得も増加していますが、健康管理的には、出産される女性への配慮が最も重要です。配慮義務は均等法等で定められていますが、そうした視点をもった対応も必要になってきています。

第2項の①については、満員電車に乗らないからいらないと言われたりしますが、渋滞中の運転もあまりよろしくないので、記載があった方が望ましいと考えます。


育児中と生理休暇

(育児時間及び生理休暇)
第27条 1歳に満たない子を養育する女性労働者から請求があったときは、休憩時間 のほか1日について2回、1回について30分の育児時間を与える。
2 生理日の就業が著しく困難な女性労働者から請求があったときは、必要な期間休暇を与える。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

第1項は、いわゆる哺育時間(授乳に必要な時間)。そのため男女平等を十分理解している厚労省でさえ、対象者を女性労働者に限定されています。現実的には企業内託児所で0歳~2歳の幼児保育をしているとか、会社のごく近くで託児している環境でない限り、実際の活用は非常に難しい。
法律上の権利なので規則としては記載するべきです。

第2項は、法律的にも当然ですが、困難な状態なのに無理させるべきでは無いという人間的な感情からも理解するべきでしょう。


育児・介護休業、子の看護休暇等


(育児・介護休業、子の看護休暇等)
第28条 労働者のうち必要のある者は、育児・介護休業法に基づく育児休業、出生時 育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児・介護のための所定外労働、時間外労働及び深夜業の制限並びに所定労働時間の短縮措置等(以下「育児・介護休業 等」という。)の適用を受けることができる。
2 育児・介護休業等の取扱いについては、「育児・介護休業等に関する規則」で定める。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

 大事な部分は、第2項。これだけ複雑化して、権利が義務が織り交ざっている状態の育児介護関係を、本体の就業規則に含むべきではありません。個人的に賃金規定やパート就業規則等を分けるのが余り好きではない私も、育児介護休業規定は別に定めます。中小企業だと、これを就業規則に入れ込むと、規則の半分ぐらいが育児介護休業ページになる程度に、大変です。


不妊治療の休暇制度

(不妊治療休暇)
第29条 労働者が不妊治療のための休暇を請求したときは、○年○日を限度に休暇を与 える。
2 労働者が不妊治療のための休業を請求したときは、休業開始日の属する事業年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)を含む引き続く5事業年度の期間において、 最長1年間を限度に休業することができる。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課

 はい、なぜモデルに入っているのかが不思議な条文です。まだ何も法令に盛り込まれていないのですが、モデルに入っているということは、次にやって来るのは不妊治療休暇の努力義務かもしれません。

少子高齢化時代なので、意欲的な出産に対する妊活は国としても支援したい気持ちがあるのでしょう。

 明確な法令等はまだ無いので、導入する場合は
1.企業風土作り
 制度で許しても、他の従業員がそうした休暇を非難するようでは意味がありません。
2.期間の検討
 企業として容認できる限度と、本人のスキル喪失等にならない程度の準備が必要です。めでたく妊娠された場合は、次に産前産後・育休とつながるので、妊活1年の場合は、育休1年と併せて2年休職する可能性があることを事前に納得しておきましょう。
3.賃金支払いと徴収
 育休等と違うのは、給付金の対象でなく、傷病手当金も対象外なので、無給になることです。更に社会保険料の個人負担分は発生するので、収入が無くても徴収しなければなりません。
 制度導入と利用で、最大で60万円出る助成金がありますが、恒常的な制度導入となれば、労働に対する報酬として公平性を担保する面からみても、賃金の扱いは慎重にならざるを得ません。
4.フォロー体制の確立
 長い休業になる可能性があるため、業務スキル等が劣化したり喪失したりしないように、定期的な面談(リモート含む)やコミュニケーションが必要となるでしょう。またデリケートな部分もあるので、プレッシャーにならないような配慮等の、不妊治療に臨まれている方への理解が重要になります。


 こちらは社労士目線で作る時の話であり、モデル規則の解説に書いてあることには、あまり触れていません。併せて参照して理解することが必要です。

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