【開運酒場】スナックのママは同い年〜東武練馬「ブラックピア」〜
年とったなと思うことは日々ある。
先日も、東武練馬のスナックで、そう思った。
東武東上線・東武練馬駅の南口を出て、旧川越街道を歩いて上板橋方向に歩くこと5分。
道沿いにレトロでディープな商店街を見つけた。
「北町アーケードショッピングセンター」。
ショッピングといっても買い物ができそうなのはペット屋くらいで(しかも金魚と小鳥)、他はスナックや居酒屋ばかり。
なんとなく、近隣住民から見向きみされず、朽ちはてつつある神社仏閣の侘しさに似ている。
つい引き寄せられ、足を踏み入れてみると、ほとんどの店が入り口から中の様子が見えず、メニューの表示もない。
取っかかりのないまま店選びに困っていると、一軒だけ外の壁にオススメメニューなどが書かれたスナックが。
店名は「ブラックピア」。
ブラック企業みたい。
一瞬ちゅうちょしたが、「本日クリアアサヒ生 1杯サービス」の文字に木製のドアを開けてしまった。
タダより高いものはないというが、それより目先の損得につられるダメな俺。
46歳、もうすぐ47歳。人間の器は、もうこれ以上大きくならないだろう。
店内はカウンターとボックス席で、思ったより広い。
カウンターの中にはアラフォーと思しき美人ママ。
奥の厨房には50代くらいのマスターがいた。
まずはサービスのクリアアサヒ生を注文。
「それだけで帰っちゃやーよ」と気さくに言うママ。
こちらも「なんだ、一杯だけで帰ろうと思ったのに」と返す。
これだけ雰囲気が和らいだ。
これぞスナックの醍醐味。
相性の良いママがいる店は、確実に運気を上げてくれる。
お通しはポテトサラダとミートボール。
どちらも手作りだそう。
聞けばマスター、飲食店の厨房で腕を振るっていたそうで、やっぱりスナックでも料理は美味しいほうがいい。
ホワイトボードの「ホニャララ炒め」は、冷蔵庫の余り物を適当に炒める、いわば賄い料理。
200円の安さにつられ一皿注文。
2杯目は珍しい山芋の焼酎をロックにした。
「カラオケは?」と聞かれたが、今宵はママとの会話の方が今宵は楽しめそうだ。
普段は練馬区に駐屯する某国家公務員組織のグループ客で賑わうそうだが、今日は来ていない。
「来るとすごく賑やかなんだけどねえ」
抑圧されているマッチョな男たちがスナックで羽目を外す……想像するだけでやかましそうだ。
ホニャララ炒めが出てきた。
ソーセージやらピーマンやらキャベツやら、まさに冷蔵庫の残りもんって感じだが、野菜はシャキッとした炒まり具合で味もいい。
やはりマスターの腕は確か。
「カニカマ飯」も気になったが、次の楽しみに取っておこう。
お会計は、クリアアサヒ生ジョッキ(無料)、山芋焼酎ロック2杯、お通し、ホニャララ炒めで、しめて2600円。店名とは違い全くブラックじゃなかった。
店の外まで見送ってくれたママ。
自分よりずいぶん年下だと思ったら、実は同い年だった。
嬉しい反面、軽くショック。
スナックのママといえば、けっこうなオバサンだと思っていたのだが……。
つまり自分もけっこうなオジサンということだ。
あの時、セーラー服姿だった君が、こんなスナックで、ママをしているなんて───
「お互いあの時は若かったわね」
「そうだね」
「老けたでしょ?」
「そんなことないよ。ぜんぜん変わらない」
「うれしい。そんなこと言ってくれるの***くんだけだよ」
「そうかな」
「ね、この後すぐ家に帰るの?」
「別に。もう1軒寄ってこうかなって」
「じゃあ、ご飯でも食べに行かない? お店閉めちゃうからさ」
「あ、でも……」
「奥さんとお子さんに悪いって?」
「あ、いや、別に……」
「フフ。そういう真面目なとこ、***くんも昔と変わらないよ」
───プチ妄想も楽しい、男46歳、もうすぐ47歳。(あ、ママの歳バラしてもた)
精神年齢だけは昔と変わらないまま、着々とアラフィフに差し掛かっております。
(ちなみにこの店のママとは同じ学校の同級生では全くございません)
■ブラックピア
東京都練馬区北町2-17-10 TEL:090-3439-1959 https://www.snakaranavi.net/shop.php?sno=7076
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