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シェアオフィスインタビュー~世代を超えて多様な人々が学び合う「HLS弘前」~

こんにちは。MAKOTOキャピタル インターンの石井です。

近年、コワーキングスペースなどのシェアオフィスの数は増加しており、施設数でみると、関東が414施設、2015年から2019年までの4年間で2.54倍と全国シェアの半分以上を締めますが、東北も42施設となり、4年間で3.23倍の伸びとなっています。

その他の地方での伸び率も大きく、地方においてシェアオフィスが担う役割も大きくなっているのを感じます。

全国には多種多様なコンセプトのシェアオフィスがありますが、地方では特に、地域と連携したコミュニティ形成が盛んに行われています。

「地域におけるシェアオフィスの役割とは」
「地方における、起業や独立のトレンドとは」
「どのようにコミュニティ形成や起業支援を行っているのか」


6、7月には、宮城県内のシェアオフィス・コワーキングスペースであるINTILAQ東北イノベーションセンター佐々木氏enspace可野氏にお話をお伺いし、紹介しましたが、今回は、青森県弘前市にて、社会人向けだけでなく、地元の高校生/大学生向けにもサービスやコミュニティ形成を行うコラーニングスペース「Heart Lighting Station弘前(HLS弘前)」を設立した、辻正太氏にオンラインでお話を伺いました。


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辻 正太 氏(株式会社まちなかキャンパス/株式会社BOLBOP 代表取締役)
1982年、奈良県吉野町生まれ。東京大学教育学部卒業後、埼玉県の中高一貫校に、体育教師として11年間勤務。
新しい学校の形を模索して、㈱BOLBOPに参画。2016年に弘前市に移住し、翌年「世代や地域を超えて、多様な人がともに学びあい、ともに未来を切り拓く」をコンセプトに「コラーニングスペースHLS弘前」を設立。


地方におけるシェアオフィスの役割

ーー今日はよろしくお願いします!はじめに、HLS弘前について教えてください。

辻:「世代や地域を超えて、多様な人々が共創し、ともに未来を切り開く」という企業理念のもと、フリーランスの方や社会人を対象としたコワーキングスペースの提供、スタートアップ企業や県内外の企業のオフィスを提供しています。

また、地域の高校生や大学生を対象とした無料の学習スペースを提供することで、普段はなかなか接点のない、学生と多様な社会人が交流ができるのもHLSの特徴です。

ーー大学時代、卒業後10年程関東にいらしたということですが、地方への移住に対するハードルは感じていましたか?

辻:正直、とりあえず来てみた、という側面が大きいですね(笑)厳しさをよく理解していなかったんだと思います。移住から、HLSを立ち上げるまで9ヵ月程かかりました。

ただ、東京拠点の会社に所属し、リモートで月20日程度は働いていたので、所謂セーフティネットの存在は大きかったと思います。

近頃は、当時の私同様に、東京拠点の会社で働きつつ、青森に移住する人や、Uターンして自分で事業を興す方はすごく増えてきた印象です。

ーーコロナの影響でその流れも加速しているんですね。実際に、地方に移住してきてどういう流れでHLS設立まで至ったのですか?

辻:移住前から、弘前を拠点に活動している知人がいたので、そこからのつながりで「あの人に会うといいよ」と言われた方にはみんな会いに行ってました。そのつながりがHLS設立にとても生きたと思います。

やはり地方では、自分から人と繋がりに行かないと何かをするにも難しいですね。

ーー他にも、地方ならではの難しさはありましたか?

辻:「一発目に手を挙げてくれる人がなかなかいないこと」ですかね。青森の人はとても温かく受け入れてくれたのですが、実際にイベントを開く際などは、協力者1人目になってもらうのがとても難しかったです。

地方は特に、そういうことが多いと思います。逆に、先行事例や身近な成功例がひとつでも生まれると協力を得やすくなるのは事実なので、質の高い先行事例をしっかりつくりに行くという姿勢がとても重要かと思います。

HLSのようなコラーニングスペースやシェアオフィスはそういった場や雰囲気をつくり、加速させる役割を担うことができると思っています。


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地方での起業において重要なこと

ーー2016年から青森に移住してから、青森における起業やキャリアに関する変化はありましたか?

辻:2つの大きな変化を感じています。1つ目は、「学生のキャリアに対する考え方」が変わったことです。数年前は、8,9割近く公務員や地銀などを目指している印象でしたが、いまは東京にでたり、好きなことで生きていくという雰囲気が形成されてきていると感じています。

地元の大学の医学部生が、24時間勉強ができる場所をつくりたいという気持ちで、「医カフェ」を立ち上げたりもしています。その際は、支援させて頂きました。そのような学生が少しずつでも増えています。

2つ目の変化は、「意図を持ったUターン」が増えていることです。余生を過ごすために田舎にUターンする人は今までもいたと思いますが、明確にやりたいことがあったり、青森で事業を興したいという意図や意志をもった人がとても増えたと思います。

ーー地域活動とビジネスの側面はバランスが重要かと思いますが、地方での起業においてビジネスとして成り立たせるために重要なことはありますか?

辻:ポイントは行政との連携だと感じています。地方では、行政が担う役割が大きいので、ビジネスとして成り立たせるには、行政の委託事業をとりにいけるポジショニングをすることはとても重要です。

行政側でも、様々な新しい取り組みや事業を推進していますが、圧倒的にプレイヤー(事業家)が足りないので、まだまだ新しいプレイヤーが入っていくチャンスはあると思います。

最初は、行政との連携で事業を回しつつ、徐々に自分で事業を拡大させていくという流れが、良いと感じています。


コミュニティ形成、成功の秘訣とは

ーーシェアオフィスでは、「コミュニティ形成」が非常に重要になってくると思いますが、HLSではどのように地域を巻き込み、コミュニティを形成してきたのですか?

辻:まず重要なのは、「つくる段階」から関わってもらうことです。HLSをオープンする際も、リノベ工事を地域の大学生10名程に手伝ってもらい、オープン前からコミュニティを形成していたのが良かったと感じています。

ただ、その学生達も毎日は来れないので、オープンから数日たつと、ぱったりと客足が止まりました。競合も少なかったので、ある程度、自然流入はあると思っていたのですが、利用者が集まらなくて困ったのを覚えています。

ーーどのように集客をしていったのですか?

辻:最初は、無料のセミナーを開きまくりました(笑)元々、青森には、場所やセミナーに対してお金を払うという文化があまりなく、セミナーではお金は取れないと感じました。なので、最初は、金曜日の夜に無料で飲み会を開いて、とりあえず場所を使ってもらったり、認知を拡大させていきました。

そのあとは、全国からまちづくりで活躍している方や知り合いの起業家を招いてセミナーを開催しました。そのうち「HLSに行けば何だか面白い話が聞けるらしい」と、徐々に口コミが広まっていきました。

そのタイミングで県庁の方とイベント共催させてもらう機会を頂き、ほぼ毎日様々なイベントを開いていると次第にコミュニティも活性化していきました。


ーーコミュニティを活性化させていくと、新規の方が逆に入りづらくなってしまうということが起こると思うのですが、そのために取り組んでいることやTipsなどはありますか?

辻:それは間違いなくそうですね。コミュニティの活性化はすごくいいことなのですが、一塊になってしまい、外から入りづらい雰囲気になってしまうことは良くあります。なので、HLSが意識して行っているのは、ひとつのコミュニティを育てすぎず、いろんなコミュニティが乱立している状態にすることなんです。そうすることで、「このコミュニティは合わなそうでも、別のコミュニティなら興味分野が近い人がいそう」といったように、新しい人も入りやすくなります。

できあがったコミュニティがあって、そこに「ドン」みたいな人がいたら入りづらいじゃないですか。なので、最近は自分自身も存在を消すようにしてます(笑)。

やはり中と外の垣根を消して、誰でも入れるコミュニティにしていきたいです。

ーー新しい人がこのコミュニティなら入れそうと感じるのはとても重要ですよね。コミュニティへのコロナの影響はありましたか?

辻:色んな影響がありましたね。基本的に、イベントはすべてオンラインとなったので、コミュニティの熱量を保つ難易度は上がりました。

もう一つ、大きな影響としては、個人の利用者が圧倒的に増えたことですね。元々は、知り合いと一緒に来るという方が多かったので、スペースでは特に何もしなくても、利用者同士の会話が生まれたのですが、個人の利用者が増えると、そのままにしておくと何も話さないということが多く見られるようになりました。

通常の作業スペースというよりも、HLSは「コラーニングスペース」なので、よく色んな人に話しかけれたりします。なのできさくに対応するマインドがあればすごく良い環境だと思ってます。

ーーコミュニティ形成には最適の場ですね。個人の利用者間での会話を促すために行っていることはありますか?

辻:運営に入ってくれている大学生たちが、自主的に色々やってくれています。ご利用カードをつくって、入ってくるときに質問に答えてもらって、利用者が休憩しているタイミングで内容をもとに話しかけに行くとか。あえて利用のハードルをあげたり、色んな取り組みをしてくれているので、コミュニティも活性化しています。


これからのHLSと青森について

ーーたくさんのお話ありがとうございました。最後に、これから青森全体としてどのようなムーブメントをつくっていきたいか、そのなかでHLSが担っていく役割について教えてください。


辻:やはり地方は行政の担う役割が大きいです。Uターンや地元で新しく事業をつくって、最初から自律的になにかやっていくのはかなり大変です。うまくいかなかった企業も多く見てきました。なので、行政が入口を助けて、その先は自律的に動いていけるような状態がベストだと思っています。

私自身も行政と連携してここまで事業をつくってきました。なので、行政のサポートが必要な次の人に場所をあけ、私自身は自律的に動いていくようにしなければなりません。

自律的に動けるようになったら、また別の企業をサポートしたり、青森全体として盛り上がっていくと良いです。

そんな取り組みをしている、元気いっぱいな人がHLSに集まる状態にしていきたいですね。

ーー本日はありがとうございました!MAKOTOキャピタルも東北地方の企業支援のため、今年度の東北グロースアクセラレーター(TGA)を仙台市と主催します。東北地方の発展のため一緒に頑張っていきましょう!


詳細情報
住所      :青森県弘前市土手町133-1 西谷ビル 1F
アクセス    :JR奥羽本線・弘前駅より徒歩10分
         弘南鉄道大鰐線・中央弘前駅より徒歩5分
ホームページ  :https://hls-hirosaki.com/


今回は、青森弘前市にあるコラーニングスペース「Heart Lighting Station弘前」を設立した辻正太氏にインタビューさせて頂きました。

MAKOTOキャピタルでは、東北地方のスタートアップ支援のためTGAを仙台市と主催します。東北の起業家・スタートアップの皆様からのご応募お待ちしております!
Tohoku Growth Accelerator - TGA (tohoku-growth-ap.jp)


引き続き、記事を投稿していきますのでよろしくお願いします!

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担当:石井
2021年9月10日
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