見出し画像

「鬼平犯科帳」の撮影現場に潜入! 時代劇製作スタジオツアー

今回は、時代劇専門チャンネルさんにご協力いただき、絶賛撮影中(※取材時)の「鬼平犯科帳」の舞台裏に潜入。製作のこだわりを垣間見させていただきました!


「鬼平犯科帳」って、いつの誰の物語?―歴史的背景


 舞台裏をご紹介する前に、まずは「鬼平犯科帳」について簡単に紹介していきましょう。
 
時代劇ファンでない方でも、そのタイトルだけは誰もが聞いたことがあると言っても過言ではないくらいの名作ですが、戦後の日本を代表する時代小説家である池波正太郎さんの小説が原作になっています。
池波正太郎さんのその他の作品には「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」など、これらもまた時代劇の原作として有名で、鬼平と同様に何度も映像化されています。
 
そんな「鬼平犯科帳」の主人公は、鬼平こと長谷川平蔵という人物。
実は、“長谷川平蔵”というのは一人の人物の名前ではなく、江戸時代の旗本であった長谷川宣雄、宣以、宣義の親子3代の通称のことだそうで、「鬼平犯科帳」で描かれる長谷川平蔵はそのうち真ん中の長谷川宣以(1745〜1795)をモデルとしています。
 
時は江戸時代中期、大飢饉や浅間山大噴火などの災害などで社会情勢が不安定な時期。そんな中で、平蔵たちが放火犯や盗賊などを取り締まる“火付盗賊改方”として活躍する様子を描いたのが、「鬼平犯科帳」なのです。

というわけで、本来の物語のメイン舞台は江戸・東京。「鬼平犯科帳」では、池波正太郎さんの出生地である東京都台東区から墨田区界隈、現在でいう両国国技館や東京スカイツリーの近くなどが多く登場します。

とはいえ、時代は令和。江戸の街並みは東京では撮影できないので、撮影は江戸の街並みを再現した京都の撮影所で実施されます。
 

松竹撮影所にやってきました!


やってきたのは、京都府京都市の松竹撮影所。
京都の撮影所といえば観光客も立ち入ることができる「東映太秦映画村」を併設する東映京都撮影所が有名ですが、双璧を成す松竹撮影所はその名の通り撮影のみに使用され、一般の観光客は通常は入ることができません。
 
まずは、オープンセットの街並みを見ていきます。

掘割は膝丈くらいの水深だそう。

すでに、「鬼平」ファンの方にとっては馴染みある風景なのではないでしょうか。
2枚目の場所は、すでに撮影完了後であったため内装は片付けられていましたが、鬼平と、密偵の馴染の軍鶏鍋屋「五鉄」のセットです。

そして、こちらは「火付盗賊改」の役宅。この中で取り調べが行われていたと思うと気持ちが締まります。


リアリティある長屋の家並み。

中には土台にタイヤが付いている建物もあり、作品に応じて建物ごと動かして町の形態を変えているそうです。

倉庫にはお店の看板や行燈、籠などがずらりと並びます。
 

 次は室内スタジオのセットの中へ。

室内とは思えない、生け垣や植え込み。

スタジオの地面も東京ではリノリウムやコンクリートであるものの、ここ松竹撮影所、そしてお隣東映京都撮影所のスタジオの地面は土でできているので、例えば下の階があるような家のセットである場合、地面を掘って「地下に階をつくる」という手法で設計できるのが“時代劇のスタジオならでは”です。

そして天井を見上げると足場も木造でできていました!
お寺や神社のような日本の歴史的建造物を彷彿とさせられます。

いよいよ、「鬼平犯科帳」撮影現場へ潜入!


そしていよいよ、役者さん方がいらっしゃるスタジオへ入らせていただきました。
裏では役者さんの談笑も聞こえ、和気藹々としています。

ここも室内スタジオですが、やはり屋外のように感じます。
室内セットを裏から。

みんなで食卓を囲むというシーンだったので舞台裏には料理が用意されていました。人数分の同じおかずがたくさん用意されています。
シーン冒頭から「ちょっと食べ進めている」感を出すため、一口分減らしたり人によって量を変えるなど細かな演出が施されます。 

衣装・音声…。 より細部のこだわりへ


 そして、今回は着付け・メイクを行う建物にも潜入させていただくことができました。
まず時代劇に欠かせないのはこちら。

そう、かつらです。

 どれも同じように見えますが、もちろん役者さんの頭の形やサイズに合わせて、そして演じている役の、当時の階級に合わせて後頭部に持たせている膨らみの大きさなどを絶妙に変えているそう。
 
また、かつらだけでなく着物もずらっとたくさんの種類が並んでいました。
「普段着」の場合は衣装さんがそうした着物に、使い古したように見せる加工=エイジング加工を施していくそうです。

 最後に、効果音などを収録する部屋へ。

 足音をはじめとして、ありとあらゆる音を作るための小道具が、ところせましと並びます。

履物の種類もいっぱい。

一体何に使うんだろう?という道具も。

作品の数だけ、それに合わせるための試行錯誤の歴史ここにあり!


おまけ


東映太秦映画村のおとなり、同じく時代劇専門チャンネル制作の「三屋清左衛門残日録」シリーズ(主演:北大路欣也)の撮影でも使用されている東映京都撮影所にもお邪魔させていただきました。

こちらも足場が木造でできていました。

次にやってきたのは、役者さんが殺陣や日本舞踊、時代劇の所作の稽古を行うために使用されている建物。 

道場。長年使っているのに、それを感じさせない床の光り具合です。

 ここはあの高倉健さんが器具を寄贈された(!)というトレーニングジムだそう。

壁には健さんのお写真がたくさん…貴重です。

 機材こそ、年季を感じさせるものも多くありますが、今でも撮影に通う俳優さんがトレーニングのために利用されています。この場所でトレーニングしたら健さんに見守られている気がしてドキドキしてしまいそうです。

*「殺陣師控室」の文字が目を引く「東映剣会事務局」。

おわりに


「鬼平犯科帳」、そして時代劇の製作現場の裏側ツアー、いかがだったでしょうか。
 
「鬼平犯科帳」が初めてドラマ化されたのが1969年のこと。
そこから55年にわたって何度も映像化、放送され、多くの人に愛されてー。そんな、時代劇製作のDNAが紡がれているさまが、撮影現場からも滲み出ているのを感じました。
 
制作部のMさんのインタビューにもあるように、確かに時代劇は入り口のハードルは高いかもしれません。
でも、一朝一夕では作られない人間ドラマの深さ、作品としての美しさがそこにはあります。
ぜひ、新しくなった「鬼平犯科帳」SEASON1で、時代劇の扉を開けてみませんか。
 
取材にご協力いただいた時代劇専門チャンネルの皆様、株式会社松竹撮影所・東映株式会社京都撮影所の皆様、ありがとうございました!
(取材・文 タンタン)



 「『鬼平犯科帳』 SEASON1」制作スタッフへのインタビュー記事はこちら。



「鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛」特設サイトはこちら

「鬼平犯科帳」SEASON1特設サイトはこちら

 7月6日独占初放送!「鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛」放送情報はこちら

 「鬼平犯科帳」SEASON1 関連放送はこちら


この記事が参加している募集