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2階の窓から

小学生6年生の時の話です。

僕が住んでいた家は木造2階建てで、田舎によくあるような瓦屋根の家です。

トイレまでは2階の寝る部屋から遠く、階段を降りて、ぐるっと家を半周するように廊下を歩きます。

トイレまでの直線は明かりを付けても薄暗く、まるであの世へ続いてるような不気味さです。

おまけに昔の家にあるような古いトイレで、男子便器とボットン便所が隣り合ってるタイプです。

だからトイレに行くのがとても怖かったのです。

帰りもその廊下を歩き、後ろからおばけか何かが追ってくるんじゃないかという恐怖で、駆け出してしまうほどです。

階段を上るのも、何かのコントであったように、下から手が出てくるんじゃないかと怯えて上がるのです。

ワーワーワーとわめきながら戻ることもありました。

というくらい、トイレに行くのは恐怖でした。

いつの日か、トイレに行くのが面倒になり、2階の窓からオシッコをすることを覚えてしまいました。

窓から、1階の屋根にシャーッとするのです。

部屋には妹も弟もいましたが、窓開けて「星がきれいだなー」といいながら月の光に照らされてキラキラ光る放物線を描いてました。

ある日お母さんに、ここからオシッコしてるのか問われました。

弟が告げ口をしていたようです。

「どおりでションベン臭いと思った!」とお母さんは言いました。

こっぴどく怒られ、オシッコをしたところに水をかけて掃除をすることになりました。

トイレの怖さより、お母さんの怖さのほうが勝っていたので、僕はトイレにちゃんと行くようになりました。

FIN

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