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「早く壊れないかな…」トースターを店頭でチェックしてネットで買ったが意外な落とし穴にハマった話

マイボイスコムのキッチン家電についての調査結果では、トースターの所有率は72.7%です。毎日の朝食で欠かさずに使っているという家庭も多いでしょう。

Sprocketのコンサルタント・S村さんは、トースターの買い替えで後悔していることがあるそうです。

S村さんの買い物エピソード「かいものがたり」から、身近な家電を購入する際の顧客体験の改善ポイントを探っていきます。

※この記事は、特定の商品・サービス・店舗を推薦あるいは批判する主旨のものではありません。


毎日使うものだからシンプルに火力が強いものを

S村家の家族構成からお話しますと、おじいちゃんとおばあちゃん、夫、子ども3人の7人で暮らしています。

トースターは、朝食のトーストを焼いたり、チルドのピザを焼いたりするのに、ほぼ毎日使っています。比較的自炊はする方ですが、オーブンレンジもあるので、トースターに強いこだわりはなく、以前使っていたものも4・5千円のよくあるものでした。どのメーカーのものかも覚えていません。

ある日、トースターのドアの留め具部分が壊れてしまい、ガチャンと音を立てて開くようになってしまいました。焼けないわけではないのですが、開け閉めの度に気になるので、そんなに高いものでもないし買い替えることにしました。

トースターにいろんな機能がついていても結局家族の誰も使わないことがわかっていたので、買い替えるトースターもシンプルに強い火力で手早く焼けるもので良いと思っていました。あとは、2枚の食パンやピザが丸々入るスペースがあれば十分といった感じです。

トースターのイメージ(画像:ilove/Shutterstock.com)

探すという行為自体が好きな夫

家電選びの条件は、使う機会の多い私のほうで考えることが多いですが、購入の際には夫婦で相談します。夫はいろんな商品を探して、どこでお得に買えるか調べるといった行為自体が好きなようなので、その部分はお任せしています。

「何曜日に注文すればポイントがたくさんつく」といったことまで調べてくれます。私自身はそういうのめんどくさいと思ってしまうタイプなので、やってくれて助かっています。

トースターを買い換えようと思ったときも、特に製品情報を調べたりはしませんでした。前と同じようなものが同じくらいの価格で買えれば良いと思って。夫婦でお出かけすることが好きなので、買い替えるトースターについてもウィンドウショッピングがてら近所の家電量販店を見て回ることにしました。

顧客体験の改善ポイント:
「トースターなら◯◯!」といったブランドが醸成できていたら?顧客の選択肢を狭めることで、購買につながる確率は変わるはず。

「チン!」の聴き比べまでしても店舗では買わず

どこかのポイントを貯めていたり、ひいきにしているお店があるわけではないので、量販店を3つほど回り、サイズ感や価格帯をチェックしていきました。あと、ツマミを回してみて「チン!」の音を聴き比べしてみたり。「この音色は良い」とか「これは音が雑だ」とか(笑)。

シンプルなのが良いといっても、あまりに安いものは選択肢には入れませんでした。なんとなく火力が弱くて焼くのに時間がかかりそうですし、すぐに壊れても嫌なので……。

どの店舗でも店員さんからは声はかけられませんでしたし、こちらからも相談しませんでした。いろんな商品を扱う家電量販店の中で4・5千円のトースターはそんなに熱心に売り込むようなものでもないのでしょう。

一緒に見ることで大まかに「こんなので良いよね」という共通のイメージを夫婦で持つことはできましたが、その場では買いませんでした。「どうしてもこれ」というものに出会ったわけでもなく、逆に言えば割りとどれでも良いなといった印象でした。

我が家ではトースターに限らず、店舗で情報収集して買うのはネットというケースが多いですね。結局、似たようなものだったら大抵はネットのほうが安く買えるので。

顧客体験の改善ポイント:
もし店頭でスタッフが声をかけていたら?その時売れるのはトースター一台だけかもしれないが、それをきっかけに固定客になる可能性はないか?その場で売らなくても、自社ECの存在をアピールするチャンスかも。

使ってみて初めてわかった大きなストレス

その後、調べ物好きの夫がECモールで「これ、オシャレじゃない?」と見つけてきた商品が、条件的にもちょうどよかったので、それを購入しました。ネットだと写真で第一印象が決まってしまいますね

他の候補を見ることなく、それで決めちゃいました。買うときも、買ったあともどこのメーカーかということは気にしませんでした。これがPCや洗濯機、冷蔵庫だったらメーカーもチェックしたと思います。

届いて使ってみて、大後悔!タイマーのツマミが出っ張っているところのない完全な丸型で、これがとにかく回しづらい!力を入れないと回らないし、料理中で手が濡れていたり、何かを持ったまま操作しようとするとうまく掴むことすらできません。

買うまでは気づかなかったツマミの形の違いで後悔…(画像:klyaksun・Fumika Shibata/Shutterstock.com)

量販店で「チン!」の音を聴くためにあんなにツマミを回したのに、そこに気づかなかったなんて……。たまたま量販店で触れたものの中には、丸型のツマミのものがなかったのです。ネットで買う商品を選んだときも、店頭と同じ条件でチェックしたつもりでしたが、ツマミのことは完全に抜け落ちていました。

それを理由に買い替えるほどのことではありませんが、毎日のことだからこそ使うたびにストレスが溜まっていく……。「いっそのこと壊れてくれれば、また買い替える踏ん切りがつくのに!」と思ってしまうほどです。

今回の反省を活かし、次に買い替えるなら、必ずツマミの形と回しやすさを店頭でチェックしますね。その場で買うか、しっかり機種まで決めきってからネットで買うようにしたいと思います。

顧客体験の改善ポイント:
些細なポイントが使い勝手を左右することも。それをきちんと顧客に訴求できているかチェック。店頭だけでなく、Webサイトでも伝えていくことが大事。


どれでも同じようなトースターの認識を変える

実際に使ってみないとわからない商品の利便性を顧客にどう伝えていくかは大きな課題の一つでしょう。

トースターの購入について「欲しい機能、やりたいことは限られているので、細かく検討して商品選びするのは面倒」と感じている潜在顧客に対して、「毎日の家事の地味なストレスが解消される」と提案することで、「このトースターは、毎日の家事の地味なストレスが解消される商品」と気付きを与えることができるかもしれません。

家電製品の訴求メッセージは機能やスペックを押し出しがちですが、顧客視点で考えることで独自のコミュニケーションを築いていくことができそうです。

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