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デサントがお客様とつながりをつくるためにやっていること

デサントの他、ルコックスポルティフやアンブロなど、10ブランドを展開するデサント社。主にスポーツアパレルの製造・販売を行っています。

デサントでは様々な顧客接点をつなぎ、収集したデータをもとに顧客の利便性をさらに向上させる取り組みを進めています。デサントがお客様との関係性強化のために重要視していることとはなんでしょうか?

2024年5月17日にメグリとSprocketの共催で開催されたオンラインセミナー、『デサントから学ぶ、お客様との関係性作り』のレポートをお届けします。


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物理カードを廃止し、会員組織をデジタル化

登壇者:
デサントジャパン株式会社 DTC部門 デジタルビジネス部 CRM課 課長 塚園 俊英 氏
デサントジャパン株式会社 DTC部門 デジタルビジネス部 EC販売1課 四十山 貴士 氏
メグリ株式会社 代表取締役 田代 健太郎 氏
株式会社Sprocket 代表取締役 深田 浩嗣

田代氏:まず、デサントさんがお客様との関係性づくりの中心としている「CLUB DESCENTE」についてご紹介ください。

塚園氏:CLUB DESCENTEは2018年に設立しました。直営店と自社ECで別々になっていた会員データを統合した会員組織です。2020年にはアプリをリリースし、物理的な会員カードをデジタル化しました。さらに2021年には百貨店各店舗へもCLUB DESCENTEを導入していきました。

CLUB DESCENTEの変貌

田代氏:物理的な会員カードをデジタル化するにあたって一番苦労したことはなんでしょうか?

塚園氏:一番は現場に立つ販売員とお客様のデジタルスキルの問題でした。お客様の年齢層は比較的高めで、日常的にアプリを使わない方も少なくありません。販売員も皆がデジタルに習熟しているわけではありません。デジタルに不慣れなお客様と販売員同士でのコミュニケーションでいかに進めるかというところは苦労しました。

それでも、物理カードとアプリをしばらく並行しつつ、販売員からの丁寧な説明を徹底することで最終的にはアプリに完全に移行することができました。

深田:社内では物理カード廃止の反対意見はなかったのですか?

塚園氏:喧々諤々はありました。ただ、ポイントの有効期限もあり、お客様が物理カードを持つメリットもなくなっていきますのでデジタル化を推し進めました。

自分たちが楽しめる企画だからこそお客様の心を掴む

田代氏:チャネル・ブランドを横断した取り組みについてご紹介ください。

塚園氏:お客様は基本的に各ブランドのファンですので、顧客体験はブランドを軸に設計しています。一方で、我々のブランドの多様性を活かせるよう、会員組織に横軸を通した施策を行っています。

具体的には、例えばCLUB DESCENTE SPECIAL WEEKSというキャンペーンを実施しました。各ブランドと契約するアスリートの貴重なグッズやデサントならではのエモ体験を抽選でプレゼントするというものです。そうすることで、購買いただいたブランド以外のブランドにも触れる機会を生み出しています。

キャンペーンを企画する際に社内で関係者に伝えているのは、「自分が楽しくなるような企画かどうか」ということです。自分たちが楽しいと思えるものではないと、お客様もそうは思えないためです。

深田:効果を測る指標はあるのでしょうか?

塚園氏:キャンペーンの指標としては当然売上を見ますが、まずはどれくらい応募があったかを追っています。

CLUB DESCENTE SPECIAL WEEKSの概要

自ら現場に行き、リアルな顧客像を描く

田代氏:オフラインでのお客様とのつながりを創出するために、どのような考えで進められていますか?

塚園氏:購買接点だけでは新しいお客様とのつながりを十分につくることはできません。そこで、リアルなスポーツの現場を重要視しています。その場には、将来我々のお客様になっていただける方々が間違いなくいるためです。

ブースを出展し、会場で使えるクーポンを配布したり、抽選会を行ったりし、その場で会員登録していただける取り組みを行っています。その後、登録された方に向けて期間限定ポイントやクーポンを付与することで、来店のきっかけづくりをしています。

その際に大事にしているのは、現場にいるのはどのようなお客様なのか想像するということです。会員獲得をゴールとするのではなく、その後もお客様とつながり続けるためにはどうすべきかを描いた上で、現場での活動とその後のコミュニケーションを設計します。

深田:顧客理解のために行っていることはありますか?

塚園氏:現場に赴き、リアルなお客様像を肌感でつかむようにしています。例えばゴルフツアーであれば、そもそもチケットが高額ですから比較的経済的に余裕のある方でしょう。そして、現地でプレーを見たいほどゴルフをこよなく愛している方なのだと想像できます。

男子ゴルフツアーでのお客様との接点創出の例

ECサイトの究極のゴールは店頭と同じ接客ができること

田代氏:ECサイトでのお客様とのつながりづくりについてもご説明ください。

四十山氏:ECサイトでのコミュニケーションはどうしても画一的になってしまいます。そこで、お客様それぞれの目的に合った接客や状況に応じた案内ができるかどうかが重要だと思っています。

ECサイトでお客様との関係性を強化しながら、CX改善・CVR向上につながった施策の代表例を3つ紹介します。

まず、店頭でご購入された方に配布しているチラシにあるQRコードからECサイトに来訪された方にのみ、ポップアップで特別なクーポンをご案内するものです。こちらは、ポップアップを出していない場合に比べてカート投入率が大きく改善しています。目的が明確なお客様にこそ、その目的に合った案内をすることが大事なのだと痛感しました。

次に、コーディネート投稿のある商品のページにのみリンクボタンを表示するというものです。商品ページはどうしても長くなってしまうので、いかにコーディネートページまで誘導するかという課題がありました。そこをしっかりご案内することでコンバージョン率を上げることができました。

売上的に一番インパクトが大きかったのが、送料無料の条件に達していないお客様に対して、追加の注文で送料を無料にできることを案内するというものです。これにより客単価が上がり、売上貢献が確認できています。

お客様に寄り添ったCX改善・CVR向上施策の例

田代氏:ECサイトの施策を企画するにあたって、もとからデサントさんのほうでイメージはあったのでしょうか?

四十山氏:CX改善ツールの導入前から、他社さんのサイトを含めて、どういう接客を受けたら嬉しいか、店頭ではどのような接客をしているのかをリストアップしました。

その中から、インパクトの大きさと実装の難易度から優先順位をつけて、実行していっています。

ECサイトでも店頭と同じ体験ができるということが究極のゴールです。店頭で販売員が伝えている情報をECサイト上でも伝えられることを目指しています。

田代氏:そういったわかりやすいコンセプトが、一つひとつの効果的な施策に落とし込まれているのですね。ありがとうございました。

執筆:スプ論編集部


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