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甘やかしうどん(漫画「3月のライオン」

エビ天といなりあげが両方入っているうどん、そう、あまやかしうどん。「3月のライオン」に出てくるメニューです。受験勉強中のひなちゃんと、ボランティア家庭教師として勉強を教えている零くんに、あかりさんが作ってくれた「天ぷらうどんかきつねうどんか選べない人」に両方選んでいいよ、という思いっきり甘やかすひと品なのです。これ、うっそお~!?と思い半信半疑で作ってみましたが、いえいえ、すごく贅沢。スーパーで売ってる天ぷらに、いなりあげをかけうどんに投入するだけなのに、さくさく衣にじゅわ~っとおあげの競演に、温かいうどん。秋の寒くなる夜これを頂くと、ノックアウトされてしまうのです。

この漫画には美味しそうなものがたくさん出てきて、レシピ本も出版されているのです。お母さんを早くに亡くし、あかりさんがお母さん代わりに育てているひなちゃんとモモちゃん。あかりさんは2日人の妹たちのために精一杯美味しいものを作るのです。そして主人公の零くん、あかりさんに拾われて(!)この3姉妹との交流が始まるのでした。

将棋の漫画なので、食わず嫌いっぽかったのですけれど、将棋を通したヒューマンドラマ、という感じで共感あるあるです。それでも3姉妹のお父さんが出てきた頃あたりで読むのを断念してしまいました。長い漫画作品を追い続けるのって、実は苦手。将棋をする人のドラマがとても面白くて、勝負師とは言え、人であるのだなあ、と。零くんのライバル、二階堂くんは若くして夭折した村山聖氏がモデル。そのお話に感情移入しまくりでした。生き急ぎ、命を燃やし、将棋という熱中できることに心血を注ぎ、駆け抜けていった二階堂くん。そうした人に限ってとても心優しい良い人なのでした。

勝負の世界に、二階堂くんのようなキャラもいれば、どろどろに這いつくばるキャラもいて、宗谷名人のようなおそろしい能力者もいて、文豪のような外見の島田開氏もいて、他にもバラエティに富むキャラが飽きさせません。「ああ、人間だ」と親近感が湧いてしまうことも。試合のときは勝負、でも狭い業界の中では親密なことも。その絶妙な空気感も、独特の世界だなあと新鮮でした。両親を亡くした幼い零くんは将棋にしか生きる術がなかったのだけれども、その将棋のために、素敵な人たちと出会います。零くんも成長してゆくのです。大人になるって、丸くなる部分もあれば、尖ってゆく部分もある。両方バランスを取って、自分を保ち、かつ社会に適応してゆくのでしょう。


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