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「VCって何ですか?」をVCに聞きました。

Spread magazine #2

Spreadは、起業・スタートアップやデジタル・新領域ビジネスについて「知る・学ぶ」ことを目的としたメディア(Spread magazine)と、それに連動するイベント・コミュニティ、そして今後リリース予定の「新規事業創出を実践するプログラム」からなる、大学生・若手社会人をターゲットとした新規事業創出プロジェクトです。

magazineでは、起業に必要な知識を丁寧に紐解きながら、誰でもスタートアップを身近に感じられるような情報や、自分も!と飛び込んでみたくなるようなベンチャーシーンの熱い空気感をお届けします。

今回は「VCに聞く」編。

北海道特化型のVC「POLAR SHORTCUT1号ファンド」を設立した大久保さんに、VCとは何か。基礎基本の解説と北海道のVCが持つ意味を伺いました。

少し聞きづらい、でも気になる「どうすれば投資を受けられるのか?」という具体の話にも踏み込んでいるので、ぜひ最後までご覧ください!

〈プロフィール〉
Spread ファウンダー 大久保 徳彦

株式会社POLAR SHORTCUT 代表取締役 CEO
北海道帯広市出身。慶應義塾大学を卒業後、新卒でソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)に入社し、プロジェクトリーダーとして多くの新商品企画や新規事業推進プロジェクトに従事。その後、動画制作のスタートアップ企業 Crevo株式会社にて、経営企画・人事・財務・新規事業開発領域をNo.2として統括。2020年4月に札幌へ拠点を移し、北海道の成長産業・ベンチャー支援をテーマとして株式会社POLAR SHORTCUTを創業。2021年4月にベンチャーキャピタルファンドを組成。

Spread 事務局長 種市 慎太郎
IRENKA KOTAN 合同会社 代表社員
IRENKA KOTAN LLC 代表。2001 年生まれ。学生時代より若者の挑戦の場をつくる団体を立ち上げ運営し、札幌を中心に活動を展開。2020年4月により良い社会設計の方法を自身で探究/実践するための組織として、「緩やかで確実な社会変革の手法を探る研究共同体 IRENKA KOTAN LLC」を創業し代表社員に就任。自社のプロジェクトとしてコミュニティ・シンクタンク「C.R.A.B」や探究メディア「SENSE:D」を立ち上げ運営するほか、札幌市の高校生向け起業教育事業「START U-18」のプロデューサーや北海道のテックコミュニティ「未完project」のプロデューサー・社会教育事業「ミカタバ大学」の事務局長など様々なプロジェクトの企画運営を担当。NoMapsで学生担当として大学連携をコーディネート。

Spread コミュニティマネージャー 長幸絵子
北海道札幌市出身。札幌学院大学在学中。アルバイトスタッフとして札幌市内コワーキングスペースで働きながら、社会教育事業やコミュニティ関連など複数のプロジェクトに広報・コミュニティ運営で関わっている。

Spread magazine 編集部 いけだみほ
北海道札幌市出身。北海道大学在学中。アルバイトスタッフとして札幌市内コワーキングカフェバーで働きながら、ライターとして活動中。


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そもそも、VCって何だろう?

いけだ:大久保さんは先日VC(ベンチャー・キャピタル)である「POLAR SHORTCUT1号ファンド」を設立されていますよね。そもそも「ファンド」や、「VC(ベンチャー・キャピタル)」とは何なのか、併せてVCの仕組みについて伺いたいです!

大久保:はい。まずファンドは、出資者が出したお金を資産運用者が預かって、何らかのところに投資する仕組みのことをいいます。ファンドにも種類があって、例えば不動産に投資をするなら不動産ファンド、経営不振の企業に投資をするなら企業再生ファンド。その中でベンチャー企業に投資をするのがベンチャーキャピタルファンドです。

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お金を銀行に預けたり、投資信託をすることに並ぶような資産運用の手段の一つですね。ベンチャー企業への投資は、比較的「ハイリスクハイリターン」なのが特徴で、その投資を専門に行う組織をベンチャーキャピタル(以降VC)と呼びます。

種市:VCってすごくお金を持っているイメージですが、大久保さんは別のところからお金を預かって運用しているんですよね。

大久保:そう。僕は、資産運用の運用者という立ち位置です。POLAR SHORTCUTを例にしてVCの仕組みの話をすると、VCはお金を運用する人(=GP:General Partner)お金を出す人(=LP:Limited Partner)から成り立っていて、GPはPOLAR SHORTCUT、要は大久保です。LPは、今回の場合インキュベイトファンドを始めとした複数の出資者がいます。

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大久保:実は今回出資をいただいているインキュベイトファンド自体もファンドで、資金を出すLPが他にいて、彼らがお金を運用するGPでもあるという仕組みになっています。

彼らからするとPOLAR SHORTCUT1号ファンドが投資先であり、他にもVCへの投資をいくつもして大規模な額のお金を運用しているという仕組みです。

いけだ:投資はお金を貸し付けているのとも違いますよね?VCはベンチャー企業へのハイリスクな投資から、どのように利益を得る仕組みなんですか?

大久保:例えば、種市くんが北海道で起業して、株式会社種市という会社を作ったとしましょう。僕が株式会社種市の価値を計算して、「この会社は時価総額1億円だから1,000万円渡します。その代わりに、10%株式をもらいます。」というのがVCファンドからの投資です。

その後に、株式会社種市が無事上場したとします。現実では、そこにいくまでがいろいろ大変なのだけど…...今は飛ばします。

その時会社の時価総額が投資を受けた時の100倍、100億円になっていたら、1,000万円で買った株式も同じく100倍の10億円になっています。するとVCファンドとしては1,000万円の投資から、9億9,000万円の利益を得ることになりますよね。これがVCファンドの基本的なビジネスモデルです。

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種市:GPとLPの関係も同様ですよね。LPが大久保さんのところに3億円預けていたとして、POLAR SHORTCUT1号ファンドではそのお金で30社に1,000万円を投資することができる。その内の一つだけでも株式会社種市みたいに大成功すると、3億円の元手が約10億円になって返ってくることになります。

:そうはいっても、預けた会社が失敗したら終わりじゃないですか?

大久保:もちろんその通りです。でも、POLAR SHORTCUTが1,000万円を30社に預けるように、LP自体も数億円規模のお金をPOLAR SHORTCUT以外に複数のVCに預けていることが多いです。資金を沢山持っているほど、成功する確率が高まるとも言えますね。

「北海道のVC」が持つ意味って?

いけだ : 投資する企業を北海道内に限定したのが、今回大久保さんが設立されたPOLAR SHORTCUT1号ファンドということなんですね。

種市:大久保さんのファンドの何がすごいかって、まだ投資先が見つかっていないのに、数億円規模のお金が集まっていることなんですよね。これから投資先企業を開拓していきます!で設立しちゃったことがものすごい。

それだけ地方に価値があると思われていて、北海道と大久保さんに東京からそれだけのお金を出させるポテンシャルがあったということですよね。地方創生という意味ではこの10年で最もすごいことをされた人だと思う。

大久保:既に東京ではVCの数も増えて投資資金も飽和しつつあり、東京だけでなく地方のスタートアップ開拓にVC側が注目していたことも、今回ファンドをスピーディに設立できた理由の一つです。

地方のスタートアップ開拓をする際のポイントは、その地方に拠点をおいて動ける人が必要な点。VCビジネスは現場に深く入りこんで支援していかなければいけないから、しっかりその土地に根を張って、起業家支援ができる人がいないと、どうしても上手くいかないんです。そこが東京のVCが地方に進出するときのハードルになっている。

今回はたまたま僕が北海道の成長産業支援にコミットすること前提で独立していて、彼らからすると地方展開を考えていた所に良い人材が現れた!みたいな感じだったんじゃないかなと思いますね。

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もう少し広い視点で見ると、ゆくゆくはこのモデルを他の地方都市で展開するという流れがあるのだと思います。札幌で成功すれば、日本全国で同じようなことが起きてトレンドになっていく可能性が非常に高い。現に今回のファンド組成のリリース後に、東北や中四国のスタートアップ支援組織からも情報交換をしたいというご連絡をいくつもいただきました。

今回作ったファンドは、僕個人や北海道という地域だけに閉じた取り組みではなくて、日本の地方創生の一つのテストケースになり得ると思っています。

種市:東京の人たちがリスクをとってお金を出して、それを使って地方の人達がきちんと成長する産業を生み出していく。この流れってすごく素敵で、成功すると本当に大きいですよね。上手くいけば、日本が変わるくらい影響力があるチャレンジだと思います。

POLAR SHORTCUTはどんなVC?

いけだ:大きな期待を背負っているPOLAR SHORTCUT1号ファンドですが、これから様々な起業家と話をして投資先を決めていくフェーズですよね?「北海道のVC」として、投資する事業領域などイメージされているものはありますか?

大久保:まず大前提ですが、北海道の会社でポテンシャルを感じるサービスであればどんな領域でも投資をします。その上で、ファンドとしてやっていきたいのが「北海道の新産業を作る」ことなので、農業や水産業など北海道らしい業界のサービスだとなお良いと思っています。農家向けアプリの開発、みたいなものはわかりやすいですね。

あとは、北海道産の何かを使ったD2Cビジネスに注目しています。D2Cは「Direct to Consumer」という概念で、これまでお店で売っていたものを、インターネットを活用して顧客に直接アプローチしていくというブランドの在り方です。販売店を介さずにダイレクトにお客さんに売る仕組みができればその分利益も沢山得られるし、お客さんと直接接点を持つことで必要な情報も自分たちのデータベースに貯めていける。いま全国的にトレンドになっているビジネスなんです。

北海道は長い間「素材は良いのに売り方が下手」と言われ続けているのですが、素材は良いのだから上手くビジネスが作れれば伸びるはず、という逆転の発想で北海道と相性が良い事業だと感じています。

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他にも北海道の課題としては「過疎化」が重要なキーワードとしてあるので、過疎地に対するオンライン教育やオンライン医療サービスも、切迫度が高い分良いものが作れる可能性があるんじゃないかと思っています。北海道らしい産業と、D2C、過疎化にアプローチするオンラインサービスなどが、今注目している領域です。

投資を受けたい!と思ったら

いけだ:ここまで読んで気になっている人も多いと思うのですが、事業領域は問わないとはいえ、投資は「ください!」と手を挙げた全員にあげられる訳ではないですよね?POLAR SHORTCUT1号ファンドが選定の際に注目するのはどんな所ですか?

大久保:まずそうやって自分から手を挙げてもらわないと始まらないのだけど......個人的に重要視しているポイントは二つあります。

一つは起業家自身のパーソナリティの部分です。投資したお金を正しく事業成長のために使えるかや、事業が苦しくなったときに逃げずに踏みとどまれる忍耐力がある人かどうか。投資をしてから5年、10年と一緒に付き合っていけるような信頼できる人かどうか、という人間性や性格の部分をできる限り理解するようにしています。

もう一つ、やろうとしている事業やサービスと起業家自身のフィット感(=ファウンダー・マーケット・フィット)は意識しています。

例えば、普段あまりゲームをしない普通の大学生が、流行りそうだからという理由でスマホゲームの開発をします!という話をされても、正直上手くいくかなあと思ってしまいます。

それよりは、実家が農家で自身も農学部で勉強している大学生が、実家でやっているこの仕事が非効率だからスマホを使って簡単にできるようにしてみました!というサービスの方が、詳しく聞く前から、なんだかイケてそうな気がしますよね。

実際、今までの人生経験のなかで自分が何らかの形で関わったことのある領域のほうが、顧客や課題の解像度がぐっと高くなります。良いサービスを作るためには、サービスと起業家の相性はとても大切なんです。

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いけだ : VCが企業の中に入って経営の支援をする「ハンズオン支援」という言葉を聞いたことがあるのですが、大久保さんのVCから投資を受ける際もそのサポートは受けられるのでしょうか?実際、どのようなことをするのか気になります。

大久保 : 資金の提供以外に何をするかはそれぞれのVCのスタンス次第ですが、POLAR SHORTCUT1号ファンドではかなり幅広くフォローをしたいと思っています。

例えばビジネスの経験があまり無い人が起業する場合、今後5年間の収益計画を出せといきなり言われても、作ったことがないと計画も書けないですよね。

他にも銀行からお金を借りるときに手伝ったり、手間のかかりにくい経理の仕組みを一緒に作ったりとか。僕は前職でCFO(最高財務責任者)もしていたので、皆さん経験の少ない経営企画や財務の領域での支援ができるのは強みかなと思います。

また、事業やサービスづくりは一人で考えていてもなかなかアイデアが広がらないので、考えが行き詰まってしまったときに壁打ちする相手にもなれますし、サービスを1から作る時にどういうステップで進めていくのか良いかなどの相談にも乗れます。

少し時間が経って、会社が大きくなってきたら組織作りや人の採用など人事系の話も含め、僕の知識や経験値で補える所は全てサポートできたらと思っています。

いけだ:すごい!幅広いですね。

大久保:会社の経営は「組織(ヒト)・サービス(モノ)・財務(カネ)」が重要とよく言われますが、その三つを網羅的にサポートできるので、起業家自身に一部のビジネススキルが足りていなくても、そこは最大限サポートするというスタンスです。

いけだ : 起業準備も済んで会社をおこす寸前です!という場合でなくても、大久保さんに相談に乗っていただくことはできますか??熱意はあるし、自分なりに勉強しているけどまだまだ不安です、という場合とか。

大久保 : はい、大丈夫です。現に今も大学生の起業相談だとか、一週間に数件のペースで何らかの相談の連絡を頂いています。資金調達を本当にするほどの具体的な話になっていなくても、北海道から起業家や新しいサービスを産み出していくという観点で、できるだけ力になれたらと思うので気軽に相談してもらいたいですね。

いけだ : 一緒にランチに行きたいです!くらいの軽いお誘いでも......?

大久保 : もちろんです。メールや、TwitterのDMから気軽に連絡してくださいね。

文・いけだみほ

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今回の「VCに聞く」編では、VCとは?の基礎基本の解説から、「北海道のVC」が背負う期待、大久保さんのPOLAR SHORTCUT1号ファンドについてお話を伺いました。

北海道で起業を検討する方、大久保さんに相談してみたい!と思った方はぜひお気軽に大久保さんのメールやTwitterのDMまで↓
https://twitter.com/OkbNori


Spread magazine 次回の記事は「創業シュミレーション」編です。実際にあるビジネスモデルを例に置き、このサービスをスタートアップにするなら!と仮定。創業するにあたって必要なステップについて順を追って解説します。

ビジネスモデルをつくるってどういうこと?競合調査って?事業計画書は何を書くの?楽しく読める創業ガイドを目指します。お楽しみに!

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もう少し読みたい方へ ↓
Spreadって何だろう?(北海道のスタートアップコミュニティ「Spread」はじまります!


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