未来は大丈夫!
”息子はレギュラーになれますか”
そう聞かれて、グルグルグル〜っと脳内が猛スピードで動き回った。
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彼は学校で多動症のような行動があったようだった。授業中にじっと座っているのが苦手らしい。でもそういうことは、言われるまで気が付かなった。
サッカーより、こちらの話より、友達との会話に熱中してやめられない。そういうことはよくあったけど、それは別に彼だけじゃない。低学年の頃にはよくあることだし、別段気にも留めなかった。
彼の様子を見に、教頭先生が見学に来たこともあった。彼は、とっさに猫を被り、マジメに、そしていつもよりつまらなそうにサッカーをした。
その日は、お母さんとお父さんが練習を見に来ていた。どうやら、お父さんがサッカーを続けることに反対しているようだった。
”レギュラーじゃなければ、周りからバカにされるだろう。そんな辛い思いをするぐらいなら、やめたほうがいい”
お父さんは子供の頃に、嫌な思いをしたのかもしれない。真剣さの感じない息子のサッカーライフ、それを案じての見学だった。
”低学年のうちは、みんな平等に試合に出してもらえるかもしれないけど、高学年になればそうもいかないだろう”。そう思ったお父さんが、高学年になる前の、そんな時期に決断を迫ろうとしていた。
彼はその日もやっぱり、真面目に、そしてつまらなそうにサッカーをした。いつもは、誰よりもふざけて、誰よりも楽しそうにサッカーをする。
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”レギュラーになれますか”
お母さんは、真剣で不安げな表情だった。
”楽しくサッカーをしてくれれば、それでいい。お母さんがそう思えるようになった頃に、きっとレギュラーで試合に出ていると思います”
お母さんは、何かを察した様子だった。その後、お母さんもお父さんも練習を見に来ることはなかった。そして試合にも、たまにしか観に来なかった。
高学年になって担当コーチが変わる。彼はすぐにレギュラーとなり、中心選手になった。その後、地域の選抜チームに選ばれた。
彼は敏感に察する。友達とサッカーをしたい。だからサッカーを続けられないのは嫌だった。その件があってから、家の前で一人でボールを蹴る彼を、多くの友達が目撃していた。
お父さんがやめさせようとしたことで、スイッチが入ったのかもしれない。何が正解かはわからない。ただ僕は、その後もグラウンドで楽しそうにボールを蹴る彼を見ることができて、幸せだった。
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