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みんなが不幸になった夜

どんな結果になっても、誰も幸せにならない事ってあるよな。
勝った方も負けた方も、それなりの不幸が待っている。そんな事ってこの世の中ではたまにあるんだけど、人間はアホだから、わかってるのにそっちへ突き進んでしまう事もある。

だからせめて、そんな結果になったあとは、そこから何かを学ばなきゃならないし、その後に活かさないといけない。

これは俺と息子、ひょっとしたらママも、
家族全員が不幸になった夜の話。

記念すべき30本目の投稿がまさかのちょっとヘビーな話になった。
今回は笑える話じゃないかもしれないから、
もし笑いたい人は、別の記事を。

まぁ、家族なんていつも笑顔でなんかいれないからな。でもそれこそが家族だったりもするんだろうし。

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正直に言うと、キッカケなんて忘れてしまったのだ。

とある平日の22時ごろ。

「宿題、いつやんの!!?」

ママの怒号が飛んだのは覚えている。
そして、それに対する息子の反応も。

不貞腐れの最上級クラスをかましている。

たしか、そんな事から始まったんじゃないかな、と。

まぁ、最悪の状況を招いたキッカケなんて、
結構みんな忘れちゃうんだよな。
あれ、なんで今、戦争ってしてるんだっけ?
みたいに。

ママと息子の小競り合いに、なんとなく俺も参加してしまった。
これが大きな間違いだった。
ほっときゃいいのに。ほっとけなかった。

何も言わずに不貞腐れている息子。

「なんだよ、おまえ。言いたい事あれば言えよ」

しかし、不貞腐れの国の王子は一向にスタイルを変えない。

「もう、遅いし、いいよ、寝ろよ、もう!」

そう言った俺への当てつけなのか、
急に宿題をはじめる息子。

「いや、いいから!寝ろって!」

すると今度は宿題をぶん投げて、ふて寝。

今、振り返ると息子の心は、この時、乱気流のように乱れまくっていたんだろうな、と思う。

宿題やらなきゃいけない(使命感)
でも、やるの忘れてた(自己嫌悪)
眠い(欲求)
でもやらなきゃいけない(使命感)
でもやりたくない(本心)

みたいな。

そんな態度をする息子を見て、
修行が足りない俺は、そんな息子を包み込んでやるどころか、
軽くプチっときてしまった。

そこからは、もう何がなんだかわからん状態。
お互いに振り上げた拳を下げれなくなってしまった。

お互いにチャゲアスのYAH YAH YAHが頭で流れている。


息子「うるせー!!」

「何ぃ?!てめー誰に言ってんだ!」

息子「おめーだよ!!」

「おまえ!?おまえって誰だ!?」

息子「おまえは、おまえだよ!」

「ふざけんじゃねぇ!!」


すご。いま改めて文字にしても凄い。
昭和の家族ドラマによくある親子喧嘩シーン。
こんなのね、ドラマだからね、
と思っていたが、まさか自分が演じるハメになるとは。

ドラマだと、大体その後、
息子役が「もう、出てってやる!」とか言って、
親父役が「勝手にしろ!」とか言っちゃうんだけど、
目の前にいる息子も玄関に向かっている。

「どこいくの!?」

と、ママが問いかける。

息子「もう、家族でもなんでもないから、この家には居れない。出ていく」

「え、、!?何言ってんの?!やめて!」

息子「出ていく!」

「ちょっと、やめてよ!」


そんなママと息子のやりとりを聞きながら、
それでも俺はドラマのように
「勝手にしろ!」とは言えなかったのだ。
なぜだ。役者失格。

強引に出て行こうとする息子をママは体を張って止めている。
母、強し。世の中のママ達をリスペクトっす。

息子「うるせー!」

ママの制止する手を振り払った息子の手が
ママの顎あたりを直撃する。

「痛っ!」

それを見た瞬間、俺の頭の中で、
ハッキリとプチッと言う音がした。

「てーめー、この野郎!」


くんずもぐれつ。
間にママが入って止める。


「パパ、やめて!」

母、超強し。
ほんと、男って嫌ね。

その後、なんでかわからないんだけど、
気づいたら俺は玄関に向かっていた。

「パパ!どこ行くの!!?」

というママの声に、

「うるせーっ!」

と答えてる俺。

なんなの、これ。

そして、俺は家を飛び出した。

近くの公園で1人、不審なおっさんが
ブランコに揺られている。
完全な職質対象者。
俺、弱し。

しばらく頭を冷やして家に戻ると、
息子も冷静になっていた。

話ができるようになるには、
そこからしばらく時間がかかったけど、
やっと会話ができるようになった。

そこで、3人で話したのは
それぞれの懺悔、謝罪だった。

俺は言いすぎた事を、
息子は自分が言ってしまった事を、
ママはカッとなった事を、
それぞれが誤った。

みんなが不幸な結末を迎えた瞬間だった。

だってそうでしょ。
全員が誤ってるって。
もう誰もが悪いって思ってるって。
そんな喧嘩、はじめてかもしれないな。

ただ、こと、ウチの家族にとって、
このみんなが不幸になった経験は
決してダメな事ばかりじゃなかった。

あれだけ言い合ったから、
その後はお互いがお互いのことを、
もっと良く分かり合えるようになった。
ような気がする。

あの時、何故ああなってしまったのか感。
それをそれぞれが分かったこと。

まぁね、こんなね、昭和ドラマのような事は
無い方が良いに決まってるんだけどね、
ウチの家族は面倒くさいので、仕方なし。

ケンカするほど仲が良い、
を、じで行く親子として
これからも面倒くさいんだろうなぁ。
そこは、流行りの「自己責任」で覚悟するしかなし。


いや、面倒くさいのは、俺と息子だけ。

今回もっとも思ったことは、

母、強し。


ママさん、半端ないって。

ママを泣かしちゃいけねぇと
息子と硬く誓った10と44の夜。

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