世界一幸せなスポーツ観戦
タマジさんからタスキを引き継ぎました
「ロマンチック営業マン」長谷です。
スポーツ好きであれば誰もが人生の中で忘れられないスポーツ観戦体験があるのではないでしょうか。
私は年間100試合以上、スポーツを現地観戦しているのですが(※コロナ禍以前)、その中でも今回は「世界一幸せなスポーツ観戦体験」についてお話します。
そうだ、ブータン行こう
今から遡ること7年前。
2014年6月25日深夜。
2014 FIFAワールドカップ ブラジル大会 グループステージ
Cグループ第3節 日本対コロンビア。
その試合当日、私は南アジアの小国、ブータン王国にいました。
その日のスポーツ観戦体験が、現在のスポーツ観戦愛に繋がっています。
ところで、皆さん、
ブータンという国をご存知ですか??
「世界一幸せな国」として聞いたことがある人もいるかもしれません。
ブータンは、インドと中国に国境を接した人口約75万人の王国です。
九州と同じくらいの大きさの国土には、壮大なヒマラヤ山脈をはじめ、手付かずの大自然が広がっています。
私のブータンとの出会いは今からちょうど10年前の2011年でした。
当時の日本は3月11日に発生した東日本大震災の影響で自粛ムード一色でした。
そんな年にブータン王国の5代国王・王妃両陛下が来日されました。
ご来日の目的は、、、ハネムーン。
国王夫妻はハネムーンの行先として、未曾有の大震災があったばかりの日本を選ばれたのです。
(なぜ?)
ご来日中、ブータン国王は日本の国会で下記の演説をされました。
「我が国の成長と開発における日本の役割は大変特別なものです。我々が独自の願望を満たすべく努力するなかで、日本からは貴重な援助や支援だけでなく力強い励ましをいただいてきました。言葉には言い表せない非常に深い精神的な絆によって我が国は常に日本の友人であり続けます。
(中略)
いかなる国の国民も決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮にこのような不幸からより強く、より大きく立ち上がれる国があるとすれば、それは日本と日本国民です。」(ブータン王国第5代ワンチュク国王の国会演説にて、2011)
つまり、ブータン国王は日本へこれまでの感謝を伝えること、そしてこれからの勇気を与えることを目的に来日されたのです。
ブータン国王の演説は日本に勇気と感動を与え、その後、ブータンは世界一幸せな国として注目を集めることになりました。
当時、大学生でモラトリアム真っ最中だった私にはブータン国王がキラキラ見えて、それから、ブータンに興味を持つようになりました。
ANNnewsCH『「震災復興すると確信」ブータン国王が国会演説(11/11/17)』より引用させていただきました。
ブータンについて調べてみると、ブータンはFIFAランキングが世界最下位であること、国王は幼少期に日本人の先生から体育を教わった経験があること、などがわかりました。
それからブータンについて益々興味が強まった私は「いつか世界一幸せな国ブータンに行ってみたい!」「スポーツでブータンのために貢献したい!」という意志が固まりました。
その後、念願叶い、2014年から2年間ブータン王国へ独立行政法人国際協力機構(JICA)青年海外協力隊として派遣されることになりました。
FIFAランキング世界最下位の国
ブータンでは、GNH(国民総幸福量)という独自の概念が提唱されており、経済成長を最終目標とするのではなく、伝統的な社会・文化や民意、環境にも配慮した「国民の幸福」の実現を目指そうと考えらています。
そんなブータンを一言で例えると、「秘境」という言葉がピッタリな国です。例えば、、、
・常任理事国との国交がない
・他国の大使館、領事館は3カ国のみ(日本大使館および領事館はなし)
・外国人に対する高額なVISA(250〜300㌦ × 滞在日数)
・外国人はブータンの航空会社の飛行機でしか入国できない
・国内に信号機なし。高速道路なし。旅行者は専属のガイドおよび運転手なしでの移動禁止
・チベット仏教の思想のもと生き物を殺すことがご法度のため、肉類はほとんど手に入らない(魚は手に入らない)
・私の生活していたHaa(ハ)という県の村は標高約2,700m
・Haa(ハ)で生活する外国人は私1人
そんな秘境で私はスポーツおよび、保健体育の振興を目的に派遣された訳ですが、さすがはFIFAランキング最下位(2015年当時は208位)の国。
そもそもブータン人のほとんどは、スポーツや体育という概念に触れてきたことが全くないだけでなく、山岳国のため平地がほとんどなく、スポーツには不向きな地形であり、国内にスポーツ施設自体がほとんどありませんでした。
ブータンの国立競技場で開催された2018FIFAワールドカップロシア大会のアジア1次予選を観戦した際に驚いたことは、グランドに犬が!!国際試合とは思えないほどのズブズブな大会運営。
2018FIFAワールドカップロシア大会のアジア1次予選、ブータン国立競技場にて
そんなブータン王国でも子どもたちの間でサッカーは大人気で、学校のグランドには手作りのサッカーゴール。ラインカーや石灰がないため子どもたちが木屑に水を含ませサッカーグランドを作っていました。
子どもたち手作りのサッカーゴール
子どもたちは凸凹のグランドに転がるボールを裸足で楽しそうに毎日追いかけていました。
裸足で凸凹のグランドを走り回るブータンの子ども
一方でブータンにおけるテレビでのスポーツ観戦環境は非常に恵まれていました。
ブータンのテレビ放送が始まったのは、たった22年前の1999年で、ブータンのテレビチャンネルは、国営放送であるBBSとローカルチャンネルが2、3社ほどですが、ケーブルテレビを利用すれば隣国インドのチャンネルやCNN、BBCといった海外チャンネルも観ることができるため、プレミアリーグを代表とする英国圏の人気スポーツをブータンでもテレビ観戦することがでました。
ブータンに到着してからの最初の半年間は、日本とは全く異なる過酷な環境になかなかアジャストすることがでなかったため、仕事後は家でのスポーツ観戦が癒しの時間でした。
(そして、やっと冒頭の話に戻りますw)
世界一幸せなスポーツ観戦
ブータンでの生活をスタートしてからおよそ半年が経った2014年6月25日深夜。
2014 FIFAワールドカップ ブラジル大会 グループステージ
Cグループ第3節 日本対コロンビアの試合当日。
ブータン時間の深夜。
私はアジアの小国の小さな家から1人でテレビでLIVE観戦していました。
この時点で日本代表のグループリーグ敗退はほぼ確定していました。
前半17分にはコロンビア代表のフアン・クアドラード選手にPKを決められ0-1。
絶体絶命の状況の中、前半ロスタイム!
岡崎選手が同点ゴールを決めました。
その瞬間です!!
近所の家から「オオー!」という大きな歓声が聞こえました。それも複数の家から。
この時の光景は今でも鮮明に覚えています。
真夜中なのに世界が一瞬明るくなったような気がしました。
こんなところに日本代表を応援している仲間が自分以外にもいることにびっくりしました。この日、この場所で、この試合をLIVE観戦をしていなければこの体験はできませんでした。
これが私の世界最下位の国で経験した、世界一幸せなスポーツ観戦体験です。そして、スポーツはLIVE観戦が醍醐味であることを実感した体験です。
その後2年間、ブータンでスポーツの普及・振興を様々実践するわけですが、日本への帰国直前には、私がブータンに憧れるきっかけとなったブータン国王が私の職場へご来訪くださり、直接会話をすることができました。
職場でのブータン国王との記念写真
月並な表現ですが、スポーツには世界を一つにする力があるなと実感しました。
ー あれから7年。
今年は1年遅れてのオリンピックイヤー。
きっとブータンの仲間たちも日本代表選手を応援していることでしょう(ブータンからも84年のロス五輪以降、毎大会1〜2名の選手が出場しています)。
世界一幸せな国の仲間とのオリンピックLIVE観戦が楽しみです。
次回は、スポーツをするのも観るのも大好きな笑顔溢れるスポーツプランナー”サトナオ”さんです。競技団体様のお仕事を多く担っているサトナオさんの視点であつ〜く語ってもらいましょう!
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