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スポーツチームで収まらず、地域のコミュニティとなれ【実践!スポーツビジネス道場#13】

←第12話

ポッドキャスト番組「実践!スポーツビジネス道場」の文字起こし記事です。
「実践!スポーツビジネス道場」は一般社団法人スポーツビジネスアカデミ(SBA)の公式オンラインサロン「THE BASE」が毎週木曜日に配信しているポッドキャスト番組です。
スポーツビジネス界で奮闘する若手ビジネスパーソン、酒井翼さん(東京都社会人リーグ2部所属のサッカークラブ「TOKYO.CITY.FC」でスポンサー営業を担当)が日ごろの業務での葛藤や悩み、アイディアをスポーツビジネス界の第一線で活躍し、SBA代表理事を務める荒木重雄さんに壁打ちし、成長していく様子をお届けしています。


荒木)ただ一方でサッカーの強さの定義というものが、なんでその定義が必要なのかわかってないんだけども、普通に考えたら他のスポーツもそうだと思うんだけど、一般的に言ってメガスポーツクラブの戦略とそうじゃないシティスポーツクラブの戦略って当然違うわけで。メガスポーツクラブっていうのはネーションワイド、あるいはインターナショナルのレベルで強いチームになっていくっていうことは当然マスマーケットを相手にしていくということ。マスマーケットにおける強いチームの定義は、強くないといけないし。ちょっと乱暴な言い方だけど強いだけでソーシャルインパクトってあるわけよね。当然強いチームであり続けるために経営面も強いだろうし、ソーシャルインパクトもある。
でもこれからはチーム力と経営力に加えて人間力も問われる。

酒井)人間力…

荒木)つまりフィールド以外でチームが活動するというのは選手も演者になるわけで。そうなったときにフィールドでサッカーだけが優れているだけではサッカー以外での活躍の場っていうのは無いわけだから、選手の人間力は問われていくし、フロントスタッフもチーム・選手を支えているというよりはソーシャルに対してのサービス提供者になるわけだから、チームの演者になるわけだよね。そうなると選手もフロントも人間力が問われて、はじめてソーシャルに対しての評価がもらえるという総合力の力になっていく。それができて本当の意味のソーシャルインパクトのレベルが上がるという事だと思う。

酒井)はい

荒木)今の流れで行くと個人的にはマスマーケットじゃない「コミュニティマーケットにおけるスポーツクラブの価値」って必ずしもそういうことではないんだろうなあと思っていて。その中で社会的なインパクトがあるっていうのは存在としてあるのか、あるいは結果としてソーシャルにインパクトのある活動ができているのかっていうのは、似て非なるものがあるなと思っている。前者はソーシャルインパクトのあるエンティティはそれを活用する事によって別の事に使えるっていうイメージがあるけど、コミュニティマーケットにおけるスポーツクラブの価値は、どっちかって言うとそこを使って何とかというよりは、それがあるが故にコミュニティが存在していて、そのコミュニティ自体の何かの活動によって社会的なインパクトがある活動が起こり得るみたいな。だからコミュニティ主導みたいな…わかるかな?エンテイティ主導じゃなくてコミュニティ主導で社会的な課題、ソーシャルイシューみたいな事を解決するというのは間接的にシンボリックなスポーツクラブがソーシャルインパクトのあるコミュニティをリードしている存在になり得るみたいな。
…ちょっと難しいんだけどわかるかな?

酒井)ちょっとまだ理解が追い付いてないです。

荒木)あくまで俺の考え方だけど、マスマーケットにおけるソーシャルインパクトのあるエンティティ、組織団体はどういうことかというと、エンティティが圧倒的ってこと、マスマーケットにおけるチームだから一般的に見て優れている強いチームで経営基盤もしっかりしていて、誰もが知っているクラブ。そういうもの自体にさらに人間力も付加されてトータルのクラブの価値が高まっていく。そこがあるがゆえにそこのクラブを活用してソーシャルのイシューを解決できるように、そういう一つの存在になり得るというね、(チームのブランドを)活用するというね。

酒井)例えばNBAという団体があって、NBAケアーズという活動をするのはNBAというそもそもマスマーケットに対して強さもあるし、稼いでいるしという母体、ある意味ブランドみたいな。

荒木)ブランドだよね。だからいろんな掛け算ができて、NBA×OOができるようになってくる。掛け算ができうる存在になる、そこにはやっぱり強さも必要だし、ブランド力認知力も必要だからそうなってくれば必然的にソーシャルンパクトがやりやすい環境になる。
だけどそうじゃないマスマーケットじゃないマーケットにおけるスポーツチームが真似ができるかというと必ずしもそうではない。同じ事は出来ない。そこで言いたい事はそれのミニチュアバージョンを狙えますか、どうしますか?という事。
つまり小さなコミュニティ、地域のコミュニティにおいてNBAじゃないけど、小さなレベルでNBAと同じレベルの事をやっているチームがあったとして、例えば強くはないんだけどその地区における気持ちは一緒だからそのマーケットにおいてシンボリックなエンティティ、存在になって社会的なインパクトを目指しますって言っても、ちょっと同じようにはたぶんできないんじゃないかなって思うんだよね。切り口的にはソーシャル・地域におけるスポーツチームの役割・キーワードは「地域コミュニティの中に必要な存在」だという事だと思う。これはマスマーケットと違うやり方で、どっちかっていうと地域コミュニティはサッカーだけではないという事になる。もちろんサッカーっていうのは一つの武器としては有るんだけど、それ以外の活動も含めて地域とのコミュニティをリードする存在になっていくっていうというブランディングモデルがあったとして、そうなると地域の一員なわけだよね。そこで集まったコミュニティに対して同じ目線でいろんなアクションが起きてくる。そのTOKYO CITY F.C.だとしたらTOKYO CITY F.C.があるから存在する渋谷のコミュニティがあったとして、そのコミュニティがTOKYO CITY F.C.とともに何かのアクションを起こしていくという事。そのアクションが渋谷のイシューにとっても貢献しているとか、社会的意義がある活動をコミュニティメンバーの一員としてTOKYO CITY F.C.がやっていく、みたいな。掛け算というか一体型で、チームアップしてやっていくという方が規模感も含めてうまくような気がする。

酒井)ある意味前者の場合はクラブが旗振り役というか一番目立つところに出てくるけど、後者の場合地域のコミュニティと並列で活動をしていって、その中で僕らの名前も出てくるけど、みたいな感じでしょうか?

荒木)そうだね、もう少し極論をいうと、前者の場合はNBAという名前が無いと成立しない。後者の場合は名前が無くても成立できる可能性がある。なぜならばTOKYO CITY F.C.があるからできたコミュニティの中のコミュニティの同士でプログラムが単独で動くことができるから。でもそれはTOKYO CITY F.C.があるからこそできているコミュニティだからこそ存在するんだけど、TOKYO CITY F.C.がプログラムに参加しなくたってできる。
じゃあTOKYO CITY F.C.のブランド広がらないんじゃないか?という問題があるが、そこはTOKYO CITY F.C.(が存在するからこそ)のコミュニティだからこそ出来ているんだっていうことをどう見せるかということ。そういう規模感でやったほうが近い事ができるんじゃないかと思うよね。
例えば渋谷区の長谷部区長はすごく有名な方というか、カリスマ性もリーダーシップもあって、いろんな政策を打っているけど、いろんなプログラムをわかりやすく表現しているよね。例えば長谷部区長のマニフェストというか社会的にやりたい事って、高齢者とかホームレスとかいっぱいある中で、そういう問題点に対してTOKYO CITY F.C.のコミュニティがどんどん出て行っていろんな社会課題を解決する事がもしできたとしたら、コミュニティの力を証明できるよね。言葉遊びとかじゃなくて、それだけでソーシャルインパクトがあるというか。

酒井)PR寄りというか実地に根ざして一緒に汗水流しているという感じでしょか?

荒木)そうそう、そうやってあるときに区長が「実は今までの取り組みはTOKYO CITY F.C.のコミュニティがあったからこそ成果が出たんです」みたいな発言があったらそれ自体が間接話法だけどソーシャルインパクトがあるというか。TOKYO CITY F.C.そのものがアピールするのではなく、TOKYO CITY F.C.が溶け込んでコミュニティと一緒にやった活動が、もっと大きな存在(区長・マスメディアなど)に別のカタチで、塊で報道されてブランドができてくるみたいな。メガスポーツチームはそうじゃなくて、あくまで自分たちが主語で情報発信するし、メガスポーツチームであるが故にできる事ってあると思うけど、そこは餅は餅屋じゃないけどマーケットが違し、戦い方が違くてもおかしくないと思うんだよね。
当然浦和レッズみたいなビッククラブの事業戦略とTOKYO CITY F.C.の事業戦略は違うよね。

酒井)そうですね。

荒木)だから小さいからダメとかでなく、場合によってはコミュニティの熱量の塊と、クラブの関係値って絶対に浦和レッズにできない事がTOKYO CITY F.C.にはできるわけですよ。
あれだけのサポーターを抱えている中で何かやろうとしても、当然できる事・できない事が出てくると思うけど、今のTOKYO CITY F.C.がやろうとしたらもしかしたらもっとリアリティのある事ができるかもしれない。渋谷という場所が限定されたり、人数も100人とかかもしれないけど、ものすごい熱量を持ったコミュニティが渋谷に対してアクションを起こす事は出来るかもしれないよ。それは小さいクラブだからって話ではなくて、自分のクラブの中で、アクションとして起こせる体制ができてきて、結果を出せれば一つ大きな成果になると思うし、そこにうまくスポンサーとかつけられると良いと思うんだよね。


≪第13話 終わり≫

■登場人物
➤荒木 重雄 Shigeo ARAKI

一般社団法人スポーツビジネスアカデミー(SBA)代表理事。
株式会社SPOLABo、株式会社スポカレ代表取締役。2005年に千葉ロッテ球団の執行役員・事業本部長、パシフィックリーグマーケティングの取締役執行役員を歴任。日本サッカー協会(JFA)の広報委員をはじめ、官公庁のスポーツ関連プロジェクトなどにも多数参画。
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➤酒井 翼 Tsubasa SAKAI
J1から数えて8部に相当する、東京都社会人リーグ2部に所属するサッカークラブ「TOKYO CITY F.C.」にてスポンサー営業などを担当。
スポーツクラブで働きながら、1000万円プレイヤーになることを目指し、日々奮闘中。
TOKYO CITY F.C. 公式サイトはコチラ

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日米英に拠点を置き、スポーツビジネス界の第一線で活躍する理事4人が世界の最新スポーツビジネストピックスを発信する「理事会」や、スポーツビジネスの各専門分野に長けたゲストをお招きし、担当理事とのトークディスカッションをお届けする「サロン」など、スポビズパーソン注目のコンテンツを定期的に発信しています。昨今のコロナ禍を経て、オンラインでのコンテンツを強化し、直近のサロンはほぼアーカイブにて配信中!(いつでも何度でもご視聴可能!)
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