海底より愛を込めて。
好きとか嫌いとか。妬み嫉みその他もろもろ。
他人と関わることの一切合切全て。
嫌気がさして、海へと向かう。
爪先が水に触れる。
冷たい。
膝、腰、胸。
そのまま、水平線の向こう側へ。
足をとられて海中へ。
ふわふわ。
海中から仰ぎ見る。視界は一面の青だ。
映画でよく見るような。でも私、溺れているわけじゃない。
ここはいい。とても静かだから。
時たま息継ぎをしに海面へ顔を出す。ちょうど鯨やイルカがするように。
そーっと顔だけ出して、顔色を伺い、またすっと海中へ。
私は待っている。
ここから引っ張り上げてくれる何か、誰かを。
私は知っている。
そんなものないということを。
『思ってることちゃんと言って』
そんな言葉を投げかけられるほど、私はどんどん底へ沈んでいく。代わりにぽつりぽつりと小さな泡だけが浮かんでいく。
こうやって逃げて隠れるのは、弱いですか。
水中を漂う。
これを「航海」なんて大層な言葉ではとても呼べないけれど。
同じようにどこかの海を漂う誰かに届きますよう。
最後まで読んでいただけたこと、本当に嬉しいです。 ありがとうございます。