海を舞台に世界を旅する 13 NZ編
仕事を辞め、英語も話せず、大男が、情熱と好奇心で海を舞台に世界中を巡るノンフィクション青春ストーリー。 笑
思いっきり笑い、たくさん泣いて、仲間と共に世界の絶景に出会います。僕の大切な3年間にわたる冒険のお話
当時の書きためたノートや日記、メモをもとに書いていきます。
はじまりはじまり。
Opua(オプア)という町にやってきた。毎日虹のかかる素敵な町だ。
目的はもちろん帆船R・タッカートンプソンに乗船できるように、ソーレンラーセンの船長ジムが紹介してくれるためだ。
ロバトン島で見た、沖を飛ぶように帆走る帆船の姿が目に浮かび僕の心は踊る。
港に着いて、いざご対面!!と意気込んでいたら、船はすでに次の航海に出た後で港は空っぽ。地元の少年がなんだか知らないが小魚をバンバン釣っているのどかな風景が見れるだけだ。
ジムはこの町にあるヨットの部品を売っているショップに久しぶりに行けるので興奮している。楽しそうだ。僕もいつかこんな少年のような、魅力的な船長になって見たい。
ジム「船はいないな。よし、ヨット部品ショップに行こう!」
かい「事務所とかないんですか?」
ジム「ある。よし、事務所行く前にショップに行こう!」
落ち着け。ジム。
事務所に行き、船がいつ帰ってくるか聞き、その後ショップに行くことにした。
事務所に行くと迫力のある女性がお出迎え。声も野太く、よく通る。
聞けば小型のマグロ船を何隻か所有する船長なんだとか。彼女の名前はレイチェル。R・タッカートンプソンのボスだ。このボスにこの後数ヶ月、僕はとんでもなくお世話になる。
NZはかっこいいやつ多すぎないか?今でも海外移住するならNZが一番だと思ってる。
レイチェルによれば、船は日帰りのデイセイル時期前に、長期の地元の非行少年構成プログラムの時期に入ってしまっているとか。このプログラムはしっかりとした、経験と知識、英語の能力と信頼が必要なので、いくらジムの紹介でも、英語の拙い日本人をいきなり乗船させるのは難しいとのこと。1週間ほどすれば、またデイセイル時期に入るので、そこまで待つことになった。
ジム「よかったな、カイ!ショップ行こう!」
乗船できることが決まって、とっても嬉しいはずなのに、その1週間がとても先に思えて、なんだか気持ちが空回りしてる。
ショップに着いた。ここにはヨット用の服、道具、ヨットの部品、ロープ、なんでもある。帆船乗りの間では「セイラーズポルノ」と呼ばれる大型のヨットの部品屋さん。日本でまず手に入らない、珍しいものもある。とても楽しいはずなのに、なんだか気が乗らない。
しかも自分のヨットに使う滑車や部品を真剣に悩むジムにほっとかれて、居場所がない。
ショップを離れ、港をてくてく歩き、さっきの釣り少年のところに行く。英語力のなさが乗船できない理由の一つなので、「もっと英語を話せるようになりたい」と思うようになっていた。英語なんて全く興味がなかった僕にこの頃から、少しずつ変化が生まれる。
少年に話しかけた。「エニーラック?(何か釣れる?)」
彼は口いっぱいにリンゴをほうばりながら、「小さいやつ釣って、これからでかいの狙う」と言ってきた。高校は水産学校に行ってたこともあり、釣りのことは少しわかるつもりでもっと聞いて見た。
かい「何が餌なの?」
自分からこんなに人に話しかけるようになるなんて、少し驚いているのを覚えている。僕は普段、明るく見えるけ、ほんとうは引っ込み思案で、臆病な性格だ。
必要がなければ知らない人に話しかけることなんで滅多にない。ましてや相手は英語話す人だ。ここは僕以外、全員だけど 笑
「リンゴ」
彼がいう。口いっぱいにリンゴをしゃりしゃりして。
(心の声)
もうおしまいだ。コミュニケーションはここまでだ。「餌は何?」と聞いたはずだ。何が間違っていいたのかもわからない。なぜか、彼は今食べてるものを僕に教えてくれた。
これはもしかしたら、失礼があったのでは・・・!?
やはり・・僕は・・英語の国ではカスみたいな存在・・・
良い思いができたのも奇跡みたいなもん・・・
日本でも勉強してこなかったし・・・
(心の声終わり)
ネガティブ全開で、そそくさと退散するのが良いと判断した時、彼の竿が上がり、
ちいせー魚が数尾釣れた。
針には白い角切にされたリンゴ。
かい「リンゴ・・・リンゴで釣れたの!?」
「そうだよ?」
「オモリはエンジンのスパークプラグで〜・・(覚えてない)」
笑った。なんだか気持ちがすっとなった。自分の常識や、知識なんて信じられないほど世界は広くてそこに自分が居れることが嬉しくて、自分の常識や凝り固まった頑固な思いが恥ずかしくて。たくさん笑った。
島に帰り、今日のことをテリーに報告し、ジムとテリーに、こう言われた。
「次の船は決まったんだ。安心しろ。帆船ばかりに拘らず、この素晴らしい場所をもっと楽しめ。人と国と、地球自体を自由に行き来できるのは船乗りだ。君は興味ないかもしれないが、ここNZノースショアは世界でも有数自然あふれる地域だ、ここにきて船だけ乗って帰りましたなんて、よくない。もっと英語を覚えて、もっと自由に動けばいい。船はその手助けになる。世界は広い。必要なものはそんなに多くはない。」
この地域のことや歴史、観光名所や特産品まで、たくさんの魅力を教えてもらい、次の船R・タッカートンプソンに乗船するまでここを全力で楽しむことにした。
そうだよな。船に乗ってしまったら、逆にここの土地は知ることができない。なんだか、「船ばかり追う」ということ自体が、「船に乗っていない」ことの裏返しなのかななんて感じた。あれ!?今でも追いかけてる(笑)
次回はNZノースショアを全身で楽しむ観光ガイド的な回になると思います。
初めてカイに船以外で友達もできます!
続きまーす。
あなたのサポートのおかげで僕たちが修理している船のペンキ一缶、刷毛一つ、ロープ一巻きが買えます。ありがとう!!