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漫画が教えてくれる未来、戦い、社会。

下記のお題企画に投稿します。

私が選んだ漫画は次の5つです。最初に「構成する」ということの意味をはっきりさせた後、順に漫画のご紹介をしていきます。

・ドラえもん 藤子・F・不二雄
・三国志 横山光輝
・ピンポン 松本大洋
・るろうに剣心 ~明治剣客浪漫譚~ 和月伸宏
・機動警察パトレイバー ゆうきまさみ

漫画が人を構成するということ

まず、今回選んだ5つの漫画は、繰り返し読んだことがあります。
2点目、全て比較的小さい頃に読んだものです。この条件によって『デスノート』や『ヒカルの碁』等が外れました。
3点目、現在も記憶が明朗であること。繰り返し読んでもハッキリ覚えていない漫画はあります。
4点目、漫画が自分に何を与えたかが明確になっていること。藤子・A・不二雄の『まんが道』なんかも大変素晴らしいと思うのですが、力作すぎて、自分に何か与えたことよりも彼ら漫画家の青春時代の存在感が圧倒的に強いため、迷った末に候補から外しました。

以上4点を、ランクインの条件とします。

1.『ドラえもん』 藤子・F・不二雄

私は小学生の頃に麻疹で入院したことがありますが、その際に家族が買ってきてくれて病室で読んだのがドラえもんで、人生で初めて読んだ漫画でした。世の中にこんなに面白いものがあるのかと思いました。

当然繰り返し読んだし、大長編に関しても漫画・アニメとも全て見ました(制作・声優陣が交代するまで)。どれくらい記憶が明朗かと言えば、主題歌を全て空で歌えて、漫画の1コマを見れば何の秘密道具が登場するか当てられるくらいと言えば伝わるでしょうかw

私は学生時代に物理学を専攻し、社会人になってからも科学の話題はとても好きです。特に大長編のドラえもんでは、恐竜時代など大昔の地球、海底、宇宙、秘境、ロボットなど様々な冒険の要素があって、様々な世界に興味を持つことになった人はそれはもう大勢いるでしょう。

2.『三国志』 横山光輝

分厚い歴史を学ぶことになりますが学校の教科書では数行しか登場しない、で有名な三国志です。アニメも漫画も全て見ましたし、人形劇・三国志も、吉川英治の文庫本も読んだことがあります。

横山光輝の三国志を読んでいて爽快なのは何と言っても諸葛亮孔明が大活躍するところで、私もそこは大好きです。しかし最後に勝つのは孔明の主君・劉備玄徳の国「蜀」ではなく、宿敵曹操の「魏」なんですね。

君主の志が正しければ勝てるわけではない、最強の軍師がいれば勝てるわけではない、英雄も当然老いるし間違えることもある、どの国も自分たちの正義のために戦っている。そういったことが強く感じられるのが三国志です。

横山光輝以外の作品も併せて見ると、曹操の人情味であったり孫権の調整型リーダーぶりが見られたりして、蜀以外にも感情移入できるようになります。そういう意味では横山光輝の漫画は視点が劉備・孔明に寄っているのですが、まずは1つのチームに全力で感情移入する経験がないと3国のぶつかり合いなど理解できません。そうした出発点となってくれる作品です。

3.『ピンポン』 松本大洋

卓球スポ根マンガ。卓球好きの仲良し男子2人組の成長を描きます。
主人公のペコは人気者で、小さい頃から卓球の才能を見せ、内気なスマイル(ペコがつけたあだ名)のヒーロー的存在でした。スマイルは最初は下手でしたが、ペコや卓球教室の人々と試合をするうちに強くなっていきます。

2人は同じ中学校の卓球部に入りました。部自体は弱小ですが顧問はかつての有名な選手です。スマイルはこの顧問に見いだされ、強豪校を打倒するため猛特訓をします。一方ペコは努力をしない性格で、あるトーナメント戦で中国選手に吹っ飛ばされますが、スマイルはその選手に勝ってしまいます。

それですっかり自信を失うペコ。色々あって、プライドを捨て、卓球教室の先生であるオババに教えを乞うて、特訓の末に復活していきます。
そのような物語です。

ペコとスマイルどちらが好きかとアンケートをとったら、スマイルのほうが勝つんじゃないかなと思います。内気ですが実直な人柄で、そのプレイスタイルは攻守にバランスがとれ奥深さがあり、三国志の孔明と同じように、勝っていく様を見ていて非常に痛快だからです。

しかし読後感として、私に強い印象を残したのはペコのほうでした。漫画に登場する卓球が強い人物のうち、本当に卓球が好きでやっているのはペコだけです。どんなに特訓しても、技術を磨いても、最後に勝つのは卓球が好きで好きで仕方ないヤツ。この漫画はそう言っているようです。

単純なプロ意識や責任感は続かない。何のためにそれをし続けるのかというモチベーションは、自分がやりたいという欲求に基づいていなければならない。私はこの漫画を読んで、そう思いました。

4.『るろうに剣心 ~明治剣客浪漫譚~』 和月伸宏

幕末、倒幕の立場で幕府要人の暗殺を請け負った通称「人斬り抜刀斎」が、明治の世になって心を改め、愛する人々のために剣を振るう剣客として様々な敵と戦っていくお話です。映画にもなりましたので、有名ですね。

剣士たちが動乱を生き残っていく中で、剣の腕だけでなくそれぞれの思想を研ぎ澄ませていくのですが、そのぶつかり合いがこの漫画の裏テーマとも言える部分です。

例えば、明治政府の転覆を目論む悪の親玉「志々雄」は、この世は弱肉強食、つまり強い者だけが生き残るので、強さこそ正義だと言っています。
新選組の斎藤一(はじめ)は、「牙突」という1つの技だけを徹底的に磨き上げ、愚直なまでにそれに頼り、「悪・即・斬」を貫きました。

私が気に入ったのは、主人公・緋村剣心の師匠、比古清十郎の思想です。
彼が剣心に教えた飛天御剣流は、とてつもなく強いので、味方した陣営に必ず勝利をもたらしてしまう。飛天御剣流をそういうことに使っちゃいけないよ。自分の大事な、目に見える人を守ることだけに使いなさいと教えました。

強大な力や知識、権力を持っても、容易にそれを使うべきではない。これは実に我慢を要することで、大体の人は実践できていないんじゃないでしょうか。実践できているんだったら、原爆も、その他の凶悪な兵器も、この世に誕生することはなかったんじゃないかと思わされます。

5.『機動警察パトレイバー』 ゆうきまさみ

 機動戦士ガンダムは当初、勇敢にカッコよく戦うのが定番だったロボットものを現実的なレベルに引き寄せ、葛藤する主人公や戦争の悲哀を描いて、少年たちに不人気だったという話がありますが、パトレイバーはそれを更に推し進めたという印象を受けます。

レイバーとは、労働者。人が乗って作業するロボットです。これが量産される社会になってくると、レイバーを使った犯罪も起こるようになりました。そうした犯罪に対抗するべく開発されたのがパトレイバーです。

本作では、パトレイバーを操縦したいと警官になった泉野明(のあ)が警視庁警備部特科車両二課(通称:特車二課)に配属となるところから始まり、特車二課の同期や先輩らと協力したり喧嘩したりしながら、レイバー犯罪に立ち向かっていく様子が描かれます。

パトレイバーは犯罪があって初めて出動となるのは勿論、レイバーと戦う以外の地味な事件があったり、壊れたら直さなければならなかったりと、極めて現実的です。ライトノベルでは、1冊を通して全くパトレイバーが出動しないような作品もありました。

私にとって本作は、最初に労働社会の姿を見せてくれた漫画、ということになります。ニュータイプのパイロットが圧倒的な存在感を示すのではなく、壊れた機体を修理するメカニックあり、部品を納品するメーカーあり、通常車両で周囲の情報など知らせるバックヤードあり、分析係あり、全体の状況を判断する隊長あり、警察組織や外国組織との駆け引きあり。

一人では何もできなくても、力を合わせて大きな問題に対応していく。
メンバーそれぞれの長所や欠点、個別の事情が描かれることで、適材適所にパズルのピースを置いて噛み合わせていくイメージを持たせてくれます。

ガンダムやエヴァンゲリオンには、そこまでこの感じがありません。本作の登場人物は多様なのに、それぞれキャラクターが細部まで完成しています。また、本作も敵を倒す爽快感がありますが、みんなで苦労して作ったパトレイバーとチームに対する思い入れがより一層、そこに厚みを加えています。

私がプログラミングやプロジェクトマネジメントの道に進んだのには、ひょっとしたら本作の影響があるかも知れません。

最後に

私は学生タイトルを取るほど小さい頃から将棋に打ち込んでいたこともあり、戦うということに関して強い興味を持っていたものと思います。

ピックアップした5つの漫画を見渡せば、ドラえもん以外は全て戦闘を伴う内容であり、ドラえもんにしても最も好きなのは大長編「のび太と鉄人兵団(自律したロボット軍団と戦う話)」ですから、私の戦いに関連する知識は漫画から吸収していた部分も大きそうです。

もちろん上記のことは、後から振り返って初めて書ける話です。漫画を読み終わったその瞬間に何か教訓を引き出せたとか、そんなことはなく、将棋で勝ったり負けたり、会社に入って仕事がうまくいったりいかなかったりして、そういえばあの漫画で言っていたのはこんなことだったのか、と理解を積み重ねてきました。

しかしこれらの漫画は小さい頃の私にたくさんのモヤモヤを残していたことは、はっきりと言えます。頭に刻み込まれているモヤモヤがあるから、それが何なのか考え続けることができ、大人になって説明する材料が揃った時にリンクするのです。

そういう意味で、漫画は私の一部を即時に構成したのではないが、影響因子を確実に植え付けたとは言えそうです。
特にピンポンとパトレイバーに関しては、大人が初めて読んでも面白いと思いますので、興味があれば是非ご一読をお勧めします。

ではでは。


ちょび丸(1歳)の応援をよろしくお願い致します~😉