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ホストクラブでジェネリック・ラブ

31歳、ホストクラブデビュー

20代のうちに経験してみたいことのひとつが「ホストクラブに行くこと」だった。あまりの異空間を一度は覗いてみたかったから。しかしそのひそかな夢は叶うことがなく「やりそびれたこと」のリストに入ってしまっていた。

20代最後の年はコロナ禍の真っ只中。地元で働いていたので、万が一にも知り合いと出くわしたら気まずすぎるな…と妙な自意識が働いていた。実質、地元の知り合いのみならず、自社や取引先の面々と顔を合わせる可能性は高く(歓楽街が一つしかない)お酒を呑む訳でもない私にとって、その遭遇は恥ずかしい出来事になる予感しか無かった。

こうしてまんまと人生経験の機会を逃していたのだけど、巡り巡って、今春ついにホストクラブデビューを果たしてしまった。

歌舞伎町の老舗で

せっかく新宿に来たのだからと「歌舞伎町の老舗のホストクラブ」といえばすぐ名の挙がる、あのお店に連れて行ってもらった。

想像通りのギラギラした内装や「卓」に感心していると、改装中の仮住まいだから全然しょぼい状態なのだと言われる。バブル崩壊後に生まれた私でも「バブリー」ってこういうこと?と思う。

初回の私たちには代わる代わるホストの皆さんがついてくれ、名刺と笑顔をひたすら配ってくれた。隣の卓の人は名刺しかもらっていないので、顔写真が載っていないと記憶にも残らない。あまりに刹那的な出会いだった。

流石の老舗勤めだからか、ほぼ全員トークが上手な人たちだった。お茶のお茶割を一生飲んでいたのに、話していたらふわふわした気分になったのは、雰囲気に酔わされていたのかもしれない。

優しく話を聞いてくれる。隣でお酒を呑んでくれる。ホストクラブで得られるのは、お金で買えるジェネリック・ラブ。

明日、私は誰のカノジョにもならないけど

そんな感じで「やっぱり本物のホストはトークも上手いしお酒もいっぱい呑んで凄いなぁ」というアホの子丸出しの感想を抱いて帰るはずだったのに、最後のターンで、自分の中の「沼」要素と不覚にも相対することになった。

入店して数ヶ月、ハイトーンヘアの二十歳の子。私の正面に座った彼は先輩方と比べてもトークスキルが未熟で「いつ話しかけよう」と私の顔色を窺っているのが、他の人と話しているときも視線で感じるくらいだった。笑

名刺を切らしているからと手書きのものを渡され、印刷中のサンプルを見せてくれて「出来たら渡したいからまた来て」と言われてリアル「あざとくて何が悪いの?」状態。

「彼氏いないよね?」
「いない前提なの?笑」
「いたら嫌だなと思ったから!」
「???」

「私がこの子をトップにしてあげたい」と思ってしまう気持ちがちょっぴりわかった夜だった。お酒が吞めなくてよかった、そして『明日カノ』を愛読していてよかった。これは非現実のお話。


自分のお金を出していないし、お酒も呑めないので、継続して課金することは無い。寂しさが募りすぎて、ジェネリックなラブ欲しさに再び扉を開けないよう、自戒の意味も込めてここに記録しておくことにする。

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