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辛い味噌汁選手権2021!!

辛い味噌汁が好きだ。

この「辛い味噌汁」との出会いは、10年以上前にさかのぼる。

10年前。

当時の僕は、「残業代はきっちりもらえるけど猛烈に忙しい会社」で下っ端オブ下っ端として働いており、忙しい時は終電、もしくは終電がなくてタクシーということもざらだった。

で、そんなある日。

終電でへとへとになって帰った僕は、とりあえず何か食べたいと思い、家から一番近かった某牛丼チェーンに入った。24時間営業というのは、こういうシチュエーションの時非常に役に立つ。だって家に帰っても誰もいないし(彼女なんてできるはずもない)、コンビニ飯を食べてごみを捨てる動作すら億劫なのだ。

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(当時を再現するために某牛丼チェーンに来ました。)

季節は冬。とにかく体をあっためてさっさと家に帰って寝よう。そして明日もまた社会の歯車として頑張ろう。

そんな僕の目に入ったのは、牛丼チェーンならどこにでも置いている「七味」だった。

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(こういう容器に入りがちな七味さん。ピントが合わない。)

普通だったらこの七味は牛丼にかけるのがセオリーだ。辛さや様々な風味が、牛丼をさらにお箸が進む一品に昇華させる。

けれど僕はこの時「とっととあったまりたい」その一心で七味を、これでもかと味噌汁にぶちまけたのだ。

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(ワシャーっと放り込まれた七味さん。ピントが合わない。)

この時僕が考えてたことは「あったかい味噌汁に辛い七味入れたら体ぽかぽかですぐ寝れるでしょ」ということだけだった。食事を楽しむではなく、ただただそこには機能的側面(空腹を満たす。体を温める)だけがあった。

けれど、一口飲んでびっくり。

「あれ、これすごい美味しいぞ???」

そう、七味をこれでもかと入れた味噌汁は、すごい美味しかったのだ。


あれから幾星霜。前の職場は止めたけれど、いまだに牛丼についてくる味噌汁に思いっきり七味唐辛子を入れるのは僕の好物になっている。

2021年夏。

猛暑、コロナ、様々なことで鬱屈していた僕はこう思ったのだった。

「そうだ、最強の辛い味噌汁を決めよう」

と。

集まった辛み調味料たち

というわけで、「最強の辛い味噌汁」を決めるべく、辛み調味料さん達にお集まりいただいた。

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(オールスター感が出る写真が取れました)

選手紹介。

1番:中国出身 餃子にこれがないと始まらない「辣油」

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ごま油をベースに唐辛子の辛さを抽出させた、中国を代表する辛み調味料。餃子だけにとどまらず、最近はそばに入れたりする人もいますよね。好きです。

2番:韓国出身 コチュジャン

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 唐辛子と麴などを発酵させることによって出来上がる、韓国料理に置いて必要不可欠ともいえる辛み調味料がコチュジャン。

 肉にもつけるし、魚にもつけるし、鍋にも入れるし炒め物にも入れる。多分日本における醤油のような存在なんじゃなかろうか。好きです。

3番:インドネシア出身 サンバルソース

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 正直最近最も愛している辛み調味料。インドネシア島で使われている辛み調味料で、唐辛子とニンニクと玉ねぎがベースらしいが、トマトの酸味や発行したエビなども入っているおかげで、辛いのにコクがすごい。

 休みの前の日に、オーブンで焼きあげた豚肉にサンバルつけて食べるのは人生の至福の瞬間だと思う。

4番:中国出身 豆板醤

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 辛み調味料でこいつを外すわけには、と思ったら中国出身が2つ出ることに。でも辣油も豆板醤も辛み調味料には欠かせないと思うからこれでいいのだ。個人的には炒め物との相性が良すぎる気がする。汁物との相性やいかに。

5番 アメリカ代表 デスソース 

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調味料と言うか罰ゲームで御用達度の高いデスソースですが、れっきとした辛み調味料である。「FEEL ALIVE!(生きてることを実感しやがれ!)」というコピーが何とも挑戦的。でも少しだけトマトソースとかにいれると、美味しい辛いナポリタンが作れたりするので実は優秀。辛さにおいては優勝候補。ちなみに我が家ではこれが2本目のデスソースです。

6番:日本代表 七味

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日本における辛み調味料の代表と言ったらこちらの七味唐辛子。唐辛子に黒ゴマや陳皮(みかんの皮を干したもの)などの香辛料をブレンドすることで、風味豊かな辛さをあなたにプレゼント。辛い味噌汁界の創始者であり、生きるレジェンド、キングカズ。

今回は以上の6調味料の参戦に寄り、最強の「辛い味噌汁」を決めることとした。

なおレギュレーションとして

同じ量の味噌汁に小さじ一杯分の各辛み調味料を入れて飲む

というものを用意した。

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比較するうえで安定した味噌汁づくりは欠かせない。今回は生タイプのレトルト味噌汁を使用し、一袋にお湯160mlをきっちり注いだ。

また、「あんまりにもたくさん一度に辛いの飲んだら翌日に活火山が噴火する恐れがある(隠喩)」という警報に基づき、テイスティングは三種類ずつを2日に分けて行うことになった。

 東京で各国のスポーツ選手たちがしのぎを削る2021年の夏、我が家の台所では文字通り熱く、辛い戦いが幕を開けたのである。

美味さのコチュジャン 香りの七味 暴力のデスソース

ついに、計六種類の辛いみそ汁による、夢の競演が始まった

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(投入されていく辛み調味料たち。これはコチュジャンですね)

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(その様子を固唾をのんで見守るほかの調味料たち。SASUKEみたいだ。)


味噌汁に溶かしてみた結果、見た目はこんな感じになった。

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 安定の見た目の七味、「油だからそうなるよね」の辣油、「辛そうだもんね」のコチュジャン、サンバル、豆板醤に比べて、恐ろしいまでに見た目が変わらなかったのが、意外にも「デスソース」だった。溶けてないのかな?と思って何度混ぜても色が変わらず。

 で、飲んでみた結果をそれぞれ書くと

①辣油 おいしさ★★ 辛さ★★ 

 浮いている油の部分(辛い)が喉にヒュッと入って来るので、辛さが喉に刺さりこんでくる感じ。その後に味噌汁が「どうもうちの息子が馬鹿をしまして…」と言った顔で場を納めに来る。それぞれは美味しいが、一体感はなし。

②コチュジャン おいしさ★★★★★ 辛さ★★★

 現地で味噌のような扱われ方をすることもあって、味噌汁との相性が抜群。うまさの中にきっちりと辛さがある。溶けにくいのが難点だけど、牛丼屋に会ったら積極的に味噌汁溶かしていきたい

③サンバル おいしさ★★+ 辛さ★★

 個人的には大本命なサンバルソースだったが、微妙な酸味とニンニクの風味、つまりはふだんだったら「くぅ~~!たまらん!」となる味の部分が、味噌汁と喧嘩してしまっていた。意外な結果に場内(僕一人だけど)は騒然とする。宮﨑あおいが宮藤官九郎の映画に出た時を思い出す。

④豆板醤 おいしさ★★★ 辛さ★★★★

 辛い!むせる!が美味い!味の系統としてはコチュジャンにかなり近い。強いて言うなら味が強くなりすぎてしまっているのでこれを味付けに使ってラーメンとかにしてしまった方が美味しいのかもしれない。ご飯とかをぶち込みたくなる味。

⑤デスソース 計測不能

 飲めない。辛い。痛い。痛い。すすれない。痛い。辛い。

 瞬間最大風速的に「あ、美味しさはある」と思うけれど、すぐさま辛みと痛みが襲ってくる。こんだけ辛いのに見た目が全然普通なのがもはや恐怖。

⑥ 七味唐辛子 おいしさ★★★ 辛さ★★

 辛いけれど味噌汁の味はきっちりする。他のと比べてみるとはっきりと柑橘系の味や香りがするので、風味の豊かさならダントツ。飲んでたら牛丼が食べたくなる。つまり、万物は流転するのだ。


まとめ

 というわけで、辛い味噌汁最強としては「コチュジャン」という結果が出た。味と辛さのバランスで行っても、これがベストなのではないかと思う。

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(喜びのあまり、ぶれるコチュジャン。)

 僕個人は辛さに対しては「普通」な人間だと思うので、辛いのが大好きという方はもしかしたらデスソースみそ汁とかの方が美味しく感じるのかもしれない。さらに言えば今回は「小さじ一杯」という量に統一したけれど、小さじ半だったらまた違う可能性もある。

 また、世の中にはまだまだ辛み調味料があるので、それを試していくのも辛い味噌汁の面白い所なのだと思う。ワサビとか辛子とかの辛さは今回計測に入れなかったけれど、それがどうなるのかも気になるところではある。(ワサビとかは喧嘩しそうだけど)気になる方は是非お試しください。

 辛み調味料の多様性とそこから広がる可能性。

 ある意味で某五輪にも負けないコンセプトを、この辛い味噌汁選手権は教えてくれるのであった。


 ちなみに、辛い味噌汁が食べたいからと言って、パートナーが作ってくれた味噌汁にいきなり七味をぶっかけたりすると、それはそれは辛い(つらい、のほう)味噌汁になってしまう。

 辛いみそ汁は一人の時にひっそりと食べることをお勧めします。


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