万葉を訪ねて ―序の10オモテウラ―
前項では「田安家出仕時代」の真淵の勉学についての感想を述べたが、本項ではこの時期の生活ぶりや社交について考えてみたい。
結婚した翌年に妻と死別するわ、すぐ再婚して宿屋の主人になるわ、家族を捨てて京都に飛び出すわ、アテもなく江戸を放浪するわ、御三卿の田安家に拾われるわ、ここまでの真淵の人生はわりと劇的に展開していったが、ようやく大きな波乱もなくなり生活が安定してきたのが、この50歳から64歳にかけての時期である。
したがって今回は、真淵の人生から劇的なモノをえぐり出すよりは