〔民法コラム31〕共同相続に係る不動産から生じた賃料債権の帰属と遺産分割


1 問題の所在

 民法は、共同相続に関し、相続財産は共同相続人の共有に属するとする(898条)一方で、遺産の分割は相続開始時に遡って効力を生じるとしている(909条本文)。
 そこで、相続開始後に遺産から生じる賃料債権の帰属が、後の遺産分割により影響を受けるのかと関連して、相続開始の時から遺産分割までの間に遺産である賃貸不動産から生じる賃料債権が最終的に誰に帰属するのかが問題となる。

2 共同相続に係る不動産から生じた賃料債権の帰属と遺産分割

 相続開始後に遺産から生じる賃料債権については、①これが遺産に含まれるか否か、②含まれないとしても遺産分割により影響を受けるか、が問題となる。
 判例(最判平17.9.8百選Ⅲ(第2版)[64])は、①の問題につき、遺産とは別個の財産であること(898条にいう遺産共有の対象ではないこと)を前提とした。この点については、昭和55年以降の多くの裁判例が同旨の判断を示しており、896条に素直な解釈である。
 また、②の問題につき、上記判例の原審(大阪高判平16.4.9)は、果実収取権(89条2項)と遺産分割の遡及効(909条本文)を理由に、元物に関する遺産分割により果実の帰属も当然に定まるという理解を示した。すなわち、遺産から生じる法定果実は、それ自体は遺産ではないが、遺産の所有権が帰属する者にその果実を取得する権利もまた帰属するのであるから(89条2項)、遺産分割が遡及効を有する以上、遺産分割の結果、ある遺産を取得した者は、被相続人が死亡した時以降にその遺産から生じた法定果実を取得することができるとした。これに対し、上記判例は、可分債権たる賃料債権は発生と同時に共同相続人に分割して帰属し(427条)、遺産分割の影響を受けないとの判断を示した。

[重要判例]
・最判平17.9.8百選Ⅲ(第2版)[64]

[参考判例]
・最大決平28.12.19百選Ⅲ(第2版)[66]

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