〔憲法コラム10〕統治行為論
統治行為とは、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為で、法律上の争訟として裁判所による法律的な判断が理論的には可能であるのに、事柄の性質上、裁判所の司法審査の対象から除外される行為をいう。
このような統治行為を認めることは、徹底した法の支配を原則とする日本国憲法の下では許されない、という考えも有力である。しかし、日本では、多数の学説がなお、統治行為の存在そのものは是認している。そして、統治行為を認めるとしても、その根拠についてはさらに争いがある。
〈論点1〉統治行為論の採否
A説(否定説)
結論:許されない。
理由:日本国憲法は徹底した法の支配を原則とする。
B説(肯定説)
結論:許される。
B①説(自制説)
理由:司法審査を行うことによる混乱を回避するため、法政策的観点から裁判所が自制すべきである。
B②説(内在的制約説 判例)
理由:高度に政治性を帯びた行為は、政治的に無責任な(民意を反映していない)裁判所が判断するよりも、その当否は国会・内閣の判断に委ねられていると考えるべきである。
B③説(機能説)
理由:統治行為論が妥当する理由は、事案により異なる。それゆえ、事案に応じて具体的に統治行為論を採る論拠が明らかにされるべきである。「統治行為」というカテゴリーを一般的に設けるのではなく、自制説と内在的制約説のいずれの説の要素も加味しつつ具体的事件の中で統治行為の存在を認めていく。
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