見出し画像

curry menu archive 20 アメリカカレー

20皿目はアメリカカレーです。

アメリカカレーなので、ビーフステーキとかハンバーグとかフライドチキンをでーんと乗っけて、どやあ、とやってしまえば、見た目も華やかでわかりやすいですが、わざわざ大変な方向で構想を練っていました。

当時、ヨシフジが珍しく本を読んでいたので、「なにそれ」と聞いてみると、「インディアンの食文化を勉強している」と言っていました。
それからアメリカ先住民の食文化に関して何か教えてくれましたが、知らないカタカナが多すぎて意味が理解できず、『なんだかよくわからないけど大変そうだなあ』と思ったのを憶えています。

仕上がりがこちら↓

ご飯はジャンバラヤの予定でしたが、直前にアロスコンポヨへ変更されました。
アロスコンポヨはチキンとビールの炊き込みご飯ということで、スペイン、カリブ海の島々、アメリカではルイジアナ州ニューオリンズの名物らしいです。
植民地時代にスペインからラテンアメリカへ伝わったものが、アメリカではニューオリンズに根付いたというのがなかなか興味深いです。

ニューオリンズといえばジャズ発祥の地。
南北戦争の後には、北側の楽隊の残していった楽器がその辺に転がっていたようです。
当時の戦意高揚のための軍楽隊はマーチングバンド(歩きながら演奏するやつ)スタイルでしたので、大太鼓、中太鼓、小太鼓、シンバル、トライアングル、という具合に担当が分かれていたのですが、それらを両手両足を使って一人で演奏できるように組み合わせたのが、現在のドラムセットのはじまりです。(初めてドラムやった人天才すぎる)

少人数のバンドスタイルのジャズはストリートで、酒場で演奏されました。
アロスコンポヨは夜通し演奏してどんちゃん騒ぎするジャズマン達を支えた、元祖ジャズ飯だったのではないでしょうか。
PFCバランスも完璧です。

エビのガンボはルイジアナ州発祥のスープということで、チキン、ザリガニ、カニ、その他魚介など、様々なパターンで作られるようですが、今回のアメリカカレーではエビとウインナーが採用されました。

ルイジアナ州ではタマネギ、ピーマン、セロリの組み合わせを『聖なる三位一体』と呼び、ほとんどの料理のベースに使われるとのこと。
栄養満点です。
アロスコンポヨとガンボは植民地時代から続くアメリカ料理です。

ダルとホッケのペミカンはダルカレー(豆カレー)にホッケのペミカンをのせたものです。
ペミカンとはアメリカ先住民インディアンの携帯保存食。
干し肉と脂を混ぜ合わせたもの、ということで当時のレシピも残っていないのをいいことに、ヨシフジはオリジナルペミカンを作りました。

ホッケをバターでコーティングし、ダルカレーに溶かしながら食べることでコクを楽しむという趣向でした。
当時のインディアンも、焚火にバチバチとペミカンを炙って食べたのでしょうか。

ワイルドライスのサルサには先住民インディアンの主食であるワイルドライスと赤タマネギが使用されています。
ワイルドライスは、当時どうやって食べていたのでしょうか。
炊く、煮る、焼く、など想像してみると、焼き米にしてぽりぽりかじるのが一番ペミカンと合いそうです。
ペミカンとワイルドライスはアメリカ先住民の食文化でした。

チキンスープ、コールスローのライタ、アボカドサーモンのバルサミコ醤油は現代アメリカ飯のカレーアレンジです。

チキンスープには贅沢に手羽元一本どんと入っています。

元々白いコールスローを白いヨーグルトと合わせてライタにするのはなかなか思いつかないアイデアではないでしょうか。

アボカドサーモンはカリフォルニアロール的なものを表現しているのだと思います。
仕入れによってはアボカドマグロの日もありました。

つらつら書いてきましたが、食材が豪華すぎるので、想定の原価をオーバーしたことは間違いありません。

アメリカカレーは、先住民インディアンから植民地時代、奴隷解放を経て現代に至るまでのアメリカの歴史がワンプレートにまとまりました。

南北戦争が終結してアメリカで都市化が急激に進んだ頃、都市にまともな食材が供給されないという大問題を解決するために発明されたのが、トマトケチャップやハンバーガーだったりするのですが、そのあたりを上手くスルーしているところにこだわりと技術を感じます。

アメリカカレーを食べた記憶のある方からのコメント、ご連絡をお待ちしております。
リアルな感想が発掘できれば随時追記予定です。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
つづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?