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超短編/ふとんがふっとんだ

午前五時、今日は風が強い。最初の客は早朝出勤のビジネスマンだ。

タクシー運転手の一日はなかなか忙しい。会社員、病院に向かう人々。乗るお客様は多種多様なのだ。私もこの仕事を十四年ほど続けてきたがなかなか楽しませてもらっている。

日も沈み、運転手は会社に戻っていた。夜とはいえ、人通りが多い道なので車はそこそこ走っている。運転手はぼんやりと今日の客のことを思い返しながらハンドルを握っていた。その時、街頭がふっと消えた。目の前を走っていたトラックもふっと消えた。それだけではない。帰路のサラリーマンも店の明かりも全て黒い闇に沈んだのだ。運転手はパニックになり、得体の知れない恐怖を感じた。


ーーーー次のニュースです。タクシーが歩道に突っ込み運転手一人が死亡する事故が起きました。警察によると原因は、強風により閉められていなかったトラックの荷台が開き、その中の黒い布団がタクシーを覆ってしまったことのようです。

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