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店舗開発のお仕事7:内装工事監修① (コンストラクションマネジメント:工事入札は本当に安くなるのか?)

Tanoue@店舗開発P

 前回、内装工事おける設計者・工事会社・設備設計について記載しました。今回は内装工事の監修、コンストラクションマネジメントについて説明します。

1:コンストラクションマネジメントとは

初めて耳にする方もいると思いますが「コンストラクションマネジメント」とは、どのようなマネジメントでしょうか?
元々はアメリカで生まれた建築プロジェクト実施方式です。
 建設プロジェクトにおいて、建設発注者から準委任を受けたCM(コンストラクションマネージャー)が、中立的に全体を調整して、所期の目的に向かって円滑に事(建築プロジェクト)を運ぶ為の行為のことです。
 日本では2002年に国土交通省が「CM方式活用ガイドライン」を発行しました。その後 2010年4月1日、一般社団法人日本コンストラクション・マネジメント協会として法人化しています。

Wikipwdia:コンストラクションマネジメント

では、内装工事におけるコンストラクションマネジメントとは、どのような業務を指すでしょうか。
事例として、私がチェーンストアの店舗開発職に在職の際は、以下の流れでコンストラクションマネジメントを行っていました。
*大型物件(SCや大型オフィスビル)への出店のCMとして、工事を円滑か
 つ漏れの無い工事を進める、ことが基本のミッションです。
 ① 大型物件建築を担当するデベロッパー指定のゼネコンや内装監理室(若
  しくはゼネコン指定の建築設計会社)との打合せ
 ② ABC工事の確認とB工事依頼内容の打合せ、B工事費用の確認と打合せ
 ③ 設計監修
 ④ C工事入札(コスト管理)
 ⑤ 工事スケジュール管理
以上の5つの業務を行っていました。

一番注意する点は入札です。
工事入札を行うためには、全ての工事業者が設計内容を同じように理解する必要があります。その為には、設計図面は基本図以外に詳細図面を細かく起こします。その分設計工数が嵩み設計期間が延びるため設計費用は高くなりますが、億単位の工事が掛かる場合、工事入札の効果が高い可能性が大きいため、各社入札を行っています。
*入札はコンストラクションマネジメントの業務のひとつです。
*意匠が多く内装工事の坪単価が高いほど、入札の金額差が大きくなる傾向
 があります。

以上は会社員時代の事例ですが、現在、これから多店舗展開を目指して出店されるクライアント様や店舗開発者育成を行う場合は、コンストラクションマネジメントは2つあると説明しています。

2:コンストラクションマネジメントは2つある

コンストラクションマネジメントは2つあります。
①:大型物件の入札を伴うコンストラクションマネジメント
②:多店舗展開時におけるコンストラクションマネジメント
今回は、①について説明します。

①:大型物件の入札を伴うコンストラクションマネジメント

建築を伴わない内装工事でも坪数・意匠によっては数億円の内装工事費が発生することがあります。
 SCやオフィスビルの商業フロアに出店する場合のCM業務は、上記に私の会社員時代の事例を記載しましたが、一棟借りや大坪数の路面物件ではコンストラクションマネジメントは投資コストの管理の点から重要です。

大型物件でコンストラクションマネジメント(入札含む)を行う目的
店舗構築にあたりMICEかつスムーズに進める
投資回収率(ROI)の向上と早期の投資回収

家賃が発生しているなら1日も早く開業したいところですが、大型物件であればコンストラクションマネジメント(入札)を行う方が、総投資金額が安くなることが多くなります。一方で、総投資金額で考えると全ての物件を入札すればよい、というものでもありません。以下で検証します。

【前提条件】
一般的に、SCや新築オフィスビルの商業フロアなどデベロッパー物件では、開業日から家賃発生します。
一方、路面ビルでは、契約後家賃発生が一般的です。未契約では内装工事着手は不可なため、賃貸借契約後、設計・内装工事に入ることになります。
無論、可能な限りフリーレント交渉もしますが、今回は考慮しません。

用途変更や建築工事が無く、内装工事(設備含む)のみで開業を前提とした場合、以下の表の設定でA・B・C 店舗について、非入札工事と入札の場合を比較説明します。
注)以下の比較では、内装工事終了後の開業準備期間費用は含みません。

工事期間:用途変更・建築工事を含まない

店舗Aの場合
工事期間は1カ月です。
家賃60万円 20坪 内装工事予算800万円
設計・施工会社に依頼
20坪程度の物件では、設計・施工の内装会社に依頼する場合に設計・施工込みで総予算800万円、と伝えた方がスムーズに進みます。この場合、周囲に店舗経営している方がいたら、数人から工事金額を確認しておくと良いでしょう。
オーナーとして開業の場合、ある程度店舗イメージができていると思われ、設計業務は事前ヒアリング・平面プラン➡設備図面で2週間程度見ます。
事前打ち合わせ後に平面プランと設備設計ができた段階で見積もり➡確認➡工事契約➡工事着手 の流れです。
 スケルトン渡し物件では墨だし工程に入り、防水層など時間に掛かる工事を先行して進めながら、残りの設計(看板デザイン等)と工事を並行しながら工事を進めることができます。
この場合、空家賃は設計0.5カ月+工事1カ月:計1.5か月分:90万円
上記のように、90万円の工事外予算が必要になります。
設計者に依頼:入札
入札の場合は,必ず中立な設計者に詳細に図面を描いて貰う必要があります設計期間に1カ月+入札説明・見積り提出2週間+工事期間1カ月
合計=計2.5カ月
①空家賃:2.5ヶ月:150万
②設計費用:工事金額×15%=120万
(設計者に設計費用の設定が違います、建築費用予算×〇%、坪数×〇万円
や、有名設計者に依頼すると設計料+新幹線移動はグリーン車など付帯事項がつく場合もある:要確認)
ここでは、解りやすくするため工事費×15%で設定します(工事費1億以下)
一方、入札効果は工事投資800万円予算では、上下2割程度のブレがでることがあります。そのため、入札金額は960万~640万程度だと思われます。
工事予算金額に対し△160万円減額です。
③入札結果:160万(予算より減額)
④入札効果:①150万+②120万ー③160万=110万円
【非入札:入札比較】
①金額比較:非入札 90万 >110万 入札
②工事終了までの期間: 非入札 1.5カ月 > 2.5カ月 入札 
以上から、A店舗の場合、信頼できる設計・施工の内装会社にお願いした方が得策だと考えられます。

店舗Bの場合
工事期間は2カ月です。
家賃600万円、坪数は200坪のため、引渡し後の準備期間は2週間とします。
設計・施工会社に依頼
設計・施工の会社に依頼した場合でも、ヒアリング含めて設計期間は3週間~1カ月は必要です。設計が見積もり可能状況まできた時点で見積り➡確認➡契約後➡工事に入ります。
設計期間1カ月+工事期間2カ月=合計3ヶ月➡空家賃:1800万円
設計費用は工事金額6%を設定します➡設計費用:420万円
合計金額:2220万円

設計者に依頼:入札
中立な設計者に依頼。入札を前提とするため詳細設計まで1.5カ月とします。
入札説明・見積り提出:3週間(見積り精査含む)、工事期間:2カ月
設計期間1.5カ月+入札・見積り3週間+工事期間2カ月=4.5カ月
➡空家賃4.5カ月×600万:2700万
②➡設計費用(工事金額×15%):1200万
  ①+②=3900万円

入札結果:6400万~9000万の範囲➡1600万円(8000万の予算に対する減額分)
④入札効果:3900万(①+②)-③1600万(入札による減額分)=2300万
非入札:入札の比較
 ①金額比較:入札 2300万 < 2220万 非入札(設計・施工)(80万安い)
 ②工事終了までの期間:
入札:4.5カ月< 3ヶ月 非入札(設計・施工)
この場合、金額だけを比較すると殆ど差分が生まれません。一方、開業までの期間が1.5カ月設計・施工で依頼し方が短くなります。
 発注金額の妥当性確認や稟議書のための検証が必要な場合を除いて、入札を行うか良く検討した方が良い開業プロジェクトです。入札を行うには発注者側の工数も多く取られます。
数店舗展開している場合などは、過去に実績のある設計・施工の内装会社に依頼し、良く話し合いながらコスト管理して行く方が良い場合もあります。

店舗Cの場合
工事期間は3カ月です。
家賃800万円、坪数200坪、内装工事坪単価想定が80万という設定から、意匠造作などがB店舗よりもかなり多いことが想定されます。
設計・施工会社に依頼
設計はヒアリングや意匠詳細図含めて1.5カ月~2カ月掛かると思われます。
設計が見積り可能な状況まで来た時点で、見積り➡確認➡契約後➡工事に入ります。
①空家賃➡設計期間2カ月+工事期間3カ月=合計5ヶ月:4000万円
②設計費用➡工事費×5%=800万円
③合計➡①+②=4800万円
設計者に依頼:入札
中立な設計者に依頼。入札を前提とするため、設計期間:2カ月とします。
入札説明・見積り提出:3週間(見積り精査含む)、工事期間:2カ月
設計期間2カ月+入札・見積り3週間+工事期間3カ月=5.75カ月
➡①空家賃:4600万円
➡②設計費用:工事予算×10%=1600万
 工事予算が1億6000万のため、設計費用を10%で設定
 ①+②=6200万円
➡③入札結果:2億~1億2800万:3200万円 予算よりも減額
➡④入札効果:6200万 - 3200万=3000万
【非入札:入札の比較】
①金額比較:4800万 非入札<3000万 入札
(入札した方が1800万安い)
②工事終了までの期間:5カ月>5.75カ月
(非入札が0.75カ月短い)
➡0.75カ月×800万(家賃)=600万
 3000万+600万=3600万
最終結果:非入札4800万<3600万入札、工事終了までの期間に発生する金額は、入札した方が1200万安い。
店舗Cの場合は、明らかに入札した方がトータルのコストは安くなります。

以上のA B C 店舗を纏めると以下の表になります。

*設計費用は設定金額
*工事期間:用途変更・建築工事を含まない期間
*入札のふり幅は上下20%で設定

上記の比較で示した通り、内装工事費が高いほど入札効果は高くなります。

入札の注意点

*今回、工事入札の金額ふり幅を予算から上下20%で設定しています。
 理由は、一般的な内装業者の利益が20%前後とされています。工事原価の 
 ふり幅は5%~15%の差分があり、そこに利益をどれくらい乗せてくる
 か、で入札結果が変わるためこの設定にしています。
 しかし私の過去の経験の中には、2億~3億程度の工事予算に対して、入札
 金額の最高金額と最低金額の差額が1億を超えたことが数回あります。  
 この様な場合、以下の理由が考えられます。

① 設計者が顧客の要望を取り入れすぎ、工事予算を上回る図面を作成した。 ➡この場合、最安の工事業者と減額プランを調整で帳尻を合わせるため  空家賃期間が延びる可能性があります。

② 入札に参加した工事業者の中に資金繰りの厳しい業者がおり、キャッシュ を回すために、通常では考えられない金額で入札を入れた。 
➡この場合は、開業後のメンテナンス対応時に既に工事会社が無い、等の  トラブルも発生し易いため、入札見積り精査の段階で良く発注検討した   方が無難です。大型物件の入札業者選定では特定建設業免許を持っていても、小規模業者は避け 物件に見合う工事業者選定を行うことが重要です。

③ 設計図面の意匠図がパース的な図面やスケッチで、詳細が読み取れず業者 の見積り内容に違いが生まれた。 
➡意匠図が多いと図面に時間が掛かるため、予定した入札日に間に合わず  スケッチやパースで乗り切る場合があります。  
この場合、見積り期間中に意匠図面を送付するなど対応が必要です。

④大型物件で、設備が複雑な場合は指定業者として設備業者を固定する場合があります。また、大型飲食店の場合、入札をいくつかに分け*内装工事 *厨房機器 *家具といった複数の入札を行うことがあります。

次回は、2つ目の多店舗展開時のコンストラクションマネジメントについて書きます。


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