雑記(最近の慢性期病院の動向、そして患者様の変化)

始めに

いつもお世話になっております。伊東零一です。
最初に断っておきますが(もともとそのつもりで書いておいますが)、今回も自分が個人的な意見をもとに書いておりますので、「あぁ、伊東零一という人間はそのように考えているんだな。」と思って頂けたら幸いです。
私の言っていることは全てではありませんが、そんな風に思っている言語聴覚士がいる。と思ってくれたら嬉しいです。それではよろしくお願いします。

慢性期病院に対して思うこと。

まず、昔の慢性期病院のイメージですが、かなり長い期間の入院になる患者様が多かった印象です。それこそ、3年、4年、もっといくと7年以上入院されている患者様も多くみられました。逆に、現在の状況はというと(患者様入院データを見る限り)長くても5年(長いですが)よりも下回る傾向にあると思います。

色々な理由があると思いますが、私が見ている点で昔と変わったなと思ったのは、寝たきりになった患者様の栄養手段と家族様の考え方の変化があると思っております。

患者様の栄養手段が変わった

昔の患者様の栄養といえば、「胃ろう」が多かったように思います。
次点でCVやIVHと呼ばれる経管栄養でしょうか。慢性期病院、療養病棟に長期入院されている患者様は大体この二つの栄養が多かったように感じます。

現在を見ると、末梢点滴の患者様が圧倒的に多いと感じます。
ご本人の意思もそうですが、家族様が胃ろうという体に穴を開ける行為に抵抗を持たれた事や、テレビ等の情報で寝たきりで長生きすることの意義や辛さ等がクローズアップされた事もありましたので、それが影響しているかもしれません。
「自然の流れで、手術などをしないで過ごして欲しい」
と考えるご家族様が増えたのも要因かと思われます。

CVやIVHに関しても、無理矢理寿命を長くしているだけなのではないか?という意見もあるようで、
「自然の流れ、自然な形」
という選択を本人もご家族様も取られる事が多くなったと思います。

自然の流れというのは、末梢点滴のみで余生を過ごされるということ。
はっきり言いますと、もって数か月、早いと1か月以内でお亡くなりになる可能性があります。
最近は、そういった患者様が多いため、良い言い方が思いつかないためそのまま書きますが…療養病棟もベッドの回転率が上がり、今までゆっくりの動きだった療養病棟も物凄いスピードでベッドコントロールをしているのが現状かなと思います。そんなに動きが激しい病棟ではないため、大変だろうな…と正直思っています。

家族や患者様の事情が変われば病棟の動きも変わっていく

今まで私は長い期間患者様とかかわりをさせて頂きました。長い人では5年以上、リハビリテーションをする方もおられました。
喋れる患者様もいれば、全く喋れない患者様とアイコンタクトや頷きでコミュニケーションを取り、リハビリテーションをさせて貰っておりました。
今後は、あまり長い期間リハビリテーションをする人が減ってくると思いますが、これからも誠心誠意努めさせて頂きたいと思います。これから関わって下さる患者様、ご家族の皆様、そして病院スタッフの方々。どうぞよろしくお願い申し上げます。

最後に、言い訳

患者様やご家族様に大きな声では言えないのですが、私にとっては大きな問題なので、ここで言い訳をさせて頂きたいと思います。
胃ろうや経管栄養(CV、IVH)等を行っていない患者様、そしてそのご家族様へ向けたメッセージです。
胃ろうや経管栄養はしないけれど、再度口から食べられるようになって欲しいとずっと思っているので何とか食べさせて下さい。と仰る家族様が時々来られますが、申し訳ありませんが難しい場合が多いです。むしろ、ほぼ無理です。ご理解下さい。

理由は、栄養の確保がなされていない状態でリハビリテーションを行っても、嚥下困難な状態を改善するのはかなり難しいからです(栄養がしっかり供給されていても、難しい患者様が沢山いらっしゃいます)。
栄養なくして改善無し。
この言葉を覚えておいて頂けると幸いです。

私は、数々の理不尽にあってきました。
「どうして食べられないのですか?説明して下さい。」
と言われ、栄養の事やご本人の状態を説明しても納得して頂けない家族様。
「あの言語聴覚士の腕が悪いから食べられないのではないか」
と、私の前で言われた家族様もいましたが、それは否定しません。実際、私より腕の立つ言語聴覚士は沢山いると思っております。
「最近まで食べられていたのに何で急に食べられなくなったのか」
と仰られる家族様もいますが、それは食べることに限ったわけではありません。昨日まで歩いていたのに、次の日歩けなくなる人もいます。昨日まで見えていた目が見えなくなる人もおります。
栄養というものは、それくらい大切なものです。
自然の流れで最期を迎えて欲しい反面、ご飯は食べさせて欲しいというのも自然だと思うのですが、
栄養なくして体の改善は見込めません。
末梢点滴程度の栄養では人間の体を維持するには足りないのです。
ご飯を食べる、食べるための機能を改善するというのは非常に難しいことで、栄養も必要ですし…本人様の努力も必要になります。
大変申し訳ありませんが、あまり栄養も入っていない状態でのリハビリで摂食・嚥下機能を行い改善させるほどの腕は持ち合わせておりませんので…。
せめて、患者様が唾液を飲み込めない状態にならないようにリハビリをするとか、体が硬くなって痛くならないようマッサージをする等のリハビリテーションを実施して少しでも楽な状態を保てるようリハビリテーションを行っていきたいと、精一杯行っていきたいと考えております。
以上、言い訳終わり。

まとめ:言い訳が長すぎる

人間が生活していく上で重要なもの、運動も大切ですが、栄養を摂ることも事も大切です。
リハビリテーションという運動だけしていても、栄養が無ければ改善することは非常に難しいです。
摂食・機能療法を専門として何年もリハビリテーションをさせて頂きましたが、理不尽な目にあってきたのは正直何度もあります。
栄養なくして改善無し
この言葉だけは忘れないで覚えていて欲しいなと、思う私なのでした。

…新人さんも、この手の理不尽さをこれから知る事になると思います。
私たち言語聴覚士は淡々と患者様の現状を把握し、患者様の状態を改善するために行動していくという事を念頭に置いて行動していくことを忘れないようにして貰おうと思います。
勘違いして欲しくないのですが、じゃあ栄養をがっつり入れたら治るのか?と聞かれたらそれにはNOと答えます。
例え栄養をとったからと言っても、良くならない人は良くなりませんから…。
前提として、栄養が少ない人はそれだけで良くなりにくいよ、栄養が取れていても良くならない時は良くならないよ。でも、栄養を摂れば良くなる人もいるよ。という曖昧な事しか言えない私を許して欲しいなと思います…<(_ _)>

本日はここまでにしたいと思います。最後までお読みいただき、有難うございました<(_ _)>


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