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日本学術会議問題と赤デミズム

「学問の自由」は便利な言葉

「雉も鳴かずば撃たれまい」。まさにこの言葉を地でいった感があるのが、一連の日本学術会議騒動である。
 いうまでもなく騒動の発端は、菅首相が学術会議の推薦する新メンバー候補105人のうち、6人を任命拒否したことに対し、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が「学問の自由の侵害」と書き立てたことによる。これに朝日新聞やワイドショー、それに野党が食らいつき、一斉に政権批判の具としたのだが、なんとも違和感だけが残る。
 民主党政権時代、「事業仕分け」という名のサドマゾショー(あの時の蓮舫の嬉々とした表情に奪衣婆の顔を見た想いがする)に喝采を送り、今も何かとあれば、「税金の無駄遣い」という言葉を使いたがるマスコミが、毎年10憶円の税金がこの学者の伏魔殿に投入されていることについてスルーを決め込んでいるというのも解せない話だ。そもそも今回の任命拒否のどこが「学問の自由の侵害」に当たるのだろうか。あの仕分けで、日本の理系の基礎研究は、3年は遅れたのではないか。

蓮舫、もとい奪衣婆(だつえば)。三途の川で死者を待ち、その衣服を剥ぐのが仕事

「学問の自由」と聞くと、黒澤映画『わが青春に悔いなし』のモデルになった、昭和8年の滝川事件が脳裏に浮かぶ。京都帝国大学法学部の滝川幸辰教授が説く刑法学がマルクス主義的だという理由で、一方的に休職(事実上の免職)に追い込まれた事件である。これに合わせて滝川教授の『刑法読本』も発禁となっている。「学の独立」を謳う京大始まって以来の思想弾圧事件といわれ、これに抗議するために法学部教官22人が職を辞し、学生からも連座する形で多くの退学者を出している。

滝川事件は当時、アカデミズムを揺るがす大事件だった。


『わが青春に悔いなし』、黒澤は戦前の国策映画『一番美しく』の禊ぎのために、これを撮ったともいわれた。主演の原節子も藤田進も国策映画の常連だった。映画としては凡作に終わった。

鳩ポッポよ、どの口がいう

 ひるがえって、今回の任命拒否された6人のうち、ひとりとして大学や研究機関を追われたという話は聞いたことがない。第一、学術会議メンバーにならないと学問、研究ができないという話でもないだろう。極端なことをいえば、大学に籍を置かなくても学問は可能なのである。そういった、学閥とは無縁の名もない市井の研究者を排除してきたのが、日本のアカデミズムであり、そのアカデミズムのリベラル仲良しクラブが日本学術会議なのではないか。とどのつまり、菅首相のこの処置を「学問の自由の侵害」と言いつののるのは、かなり無理筋の話といえるのだ。
ちなみに、滝川教授に休職を迫った張本人が、時の文部大臣の鳩山一郎であった。今回の騒動では、政治的禁治産者・鳩山由紀夫までもがしゃしゃり出てきて、例によってあれこれと政権批判をしているが、戦前最大の「学問の自由の侵害」事件を起こした己の祖父について、彼がどのような見識をもっているのかぜひ伺ってみたいものだ。
 他に、前川喜平、山口二郎、上野千鶴子、室井佑月、菅野完、森達也……学術会議擁護派のメンツを見る限り、同会議がどのような組織化かはおのずと察しがつこう。

共産党に牛耳られる学術会議

 学術会議の元会員である東大教授の村上陽一郎氏は「実際、今回の件で、自分の学問の自由を奪われた人は、一人もいません」とした上で、同会議の実態をこう暴露する。
《日本学術会議はもともとは、戦後、総理府の管轄で発足しましたが、戦後という状況下で総理府の管轄力は弱く、七期も連続して務めたF氏を中心に、ある政党に完全に支配された状態が続きました。特に、1956年に日本学士院を分離して、文部省に鞍替えさせた後は、あたかも学者の自主団体であるかの如く、選挙運動などにおいても、完全に政党に牛耳られる事態が続きました。》(後日、村上氏は、F氏の会員歴について「七期」ではなく、「十期以上、三十年以上」に訂正)
 池田信夫氏によれば、このF氏は農業経済学者で農林官僚の福島要一氏(故人)を指し、「ある政党」とは日本共産党だという。つまり、事実上、日本共産党系の学者が牛耳る、アカデミズムならぬ赤デミズムの巨塔が日本学術会議だったのである。なるほど、ことの火付け役が「しんぶん赤旗」であったのもこれで合点がいく。

捨て台詞と恫喝

 彼らにとって、突っ込まれたくない部分に、菅首相が手を突っ込んできたという思いなのだろう。となれば、菅政権憎しである。ワイドショーなど、「~の自由を守れ」「権力の介入を許すな」「説明責任を果たせ」といういつものフレーズを連日繰り返しているが、今どきそれらの言葉に誘導されるのはテレビとか新聞しか見ない情報弱者か確信的サヨクであろう。
今回、任命を拒否されたうちの一人、立命館大学の松宮孝明教授もこれに便乗し、まるで振られた女の悪口を言いまわるキモ男のような未練がましい口調で「ここ(学術会議の人事)に手を出すと内閣が倒れる危険性がある」などと恫喝ともとれる捨てゼリフを吐いていたが、内閣が倒れてほしいのはアンタらなんでしょ、なら任命されなかったことを喜べばいいじゃない、と僕などは思わず突っ込みを入れてしまったほどだ。
この松宮という学匪、これにも飽き足らず、また別の場所で「(首相は)自分がヒトラーのように独裁者になろうとしているのかというくらい恐ろしい」とも言っていたが、ヒトラー、ナチスを持ち出して為政者を攻撃するのも、サヨクの使い古された手法に過ぎない。「バカのヒトラーおぼえ」とはよく言ったものである。

6人の学匪。

 その一方で、この騒ぎをきっかけとして日本学術会議の暗部が次々と明らかになっている。先ほどの村上教授の告発もそうだが、今度は新たに、同会議が、中国の海外ハイレベル人材招致計画、いわゆる「千人計画」になんらかの形で参加しているという情報が流れている。自国の軍事安全保障研究をタブーとしながら、日本の先端技術を中国の軍事拡張のために差し出していたとしたら、大問題どころではない、それこそ日本のアカデミズムを揺るがす大スキャンダルである。
「すでに中国の軍事技術は日本を抜いている。今さら日本から盗む技術はない」とこれを一笑に付す学者もいるが、その「日本を抜いた技術」の基盤は日本から流れた技術ではないか。たとえば、ステルス技術である。それらがいつ日本、いや世界の脅威となって刃を向けてくるかはわからないのだ。

おそらく、今回の任命拒否は序章であって、あくまで本丸は学術会議と中国の関係にあるだろう。同会議の大西隆元会長や野党は、千人計画云々を「悪質なデマ」としているが、デマか事実かは、いずれ明らかにされるに違いない。アメリカは何かをつかんでいるはずである。むろん、今回の菅首相の動きは、アメリカからのプッシュがあってのものとみるのが妥当だ。アメリカ本国では既にFBIが動いているという情報もあり、いずれ日本版ローゼンバーグたちの名も秘密裡に日本政府に伝わると思う。ローゼンバーグとは、アメリカの原子爆弾の機密情報をソ連に売った容疑で死刑になった夫妻の名前である。残念ながら、日本には彼らを罰する法律はない。これを機にスパイ防止法の制定に期待したいものだ。

ローゼンバーグ夫妻。最期の接吻。このあと、夫ジュリアスが、その15分後に妻エセルが同じ電気椅子に座った。死刑の様子は、全米にラジオ中継された。

 問題は、安全保障にとどまらない。たとえば、日本の顔認証システムやセキュリティ・ネットワーク技術が今、ウイグルやチベットでの人権弾圧のために使われていないという保証はないのだ。歴史上、唯一ナチスと並べ語られるべきは現在進行形で民族浄化というジェノサイドを行う中国共産党である。「バカのヒトラーおぼえ」さんには、そのことを深く胸に刻んでおいてもらいたい。

初出 維新政党新風機関紙(2020年)掲載のものを一部加筆
 

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