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秋冬野菜のコンパニオンプランツ スリーブラザーズ


<秋冬野菜のコンパニオンプランツ スリーブラザーズ>

秋から春に向けて、畑を彩るのはアブラナ科・キク科・セリ科のスリーブラザーズだ。お互いがそれぞれの害虫を忌避し合い、それぞれが必要とする栄養素が被らないことから混植はもちろん密植でも栽培ができる。

乾燥が好きなアブラナ科に、湿気が好きなセリ科、その間くらいが好みのキク科が合わさることで畑は中庸が維持される。土質がどちらかに傾いている場合は畝の形を工夫したり補うこともありだが、実際に育ててみてよく育つものをどんどん収穫して楽しむのも良いだろう。

里山を観察してみるとこれらの科に属する雑草・野草や越冬する雑草・野草は夏草が枯れて倒れたところから顔を覗かせていたり、落葉広葉樹の落ち葉の絨毯から顔を出しているのが分かる。それはまるで草マルチや落ち葉マルチの隙間から野菜が顔を出す自然農の畑のようだ。先人たちは自然から、野山から着想を得たのだから、真似しているのは私たちなのだが。

冬の太平洋側では晴れと乾燥した日々が続く。放射冷却による冷えと霜が降りる。そのため植物たちは身を寄せ合って暮らすかマルチが十分な環境で生き残る。代わって冬の日本海側ではどんよりとした天気と冷たく湿った強風が吹く。寒波の度に雪が積もり、田畑を白銀の世界に帰る。そのため植物たちは背丈を大きくしすぎないように地面すれすれに葉を広げて育つ。

地域によって雪の積もり具合や乾燥具合が違うため、育ちやすい野菜は変わる。しかし雪が深く積もる真冬を除けば、これらの野菜の栽培期間は比較的温暖で安定した秋になるため、無農薬栽培がしやすい。草刈りも夏ほど大変ではないため、夏野菜よりもケアが少なくて済む。初心者は夏野菜のケアで疲弊してしまいがちだが、秋冬野菜のほうが始めやすいかもしれない。

アブラナ科野菜は世界中で栽培され、地域特有の姿形に進化してきた。そのため交雑してしまう可能性が高いが、魅力的な野菜がたくさんある。カブや水菜を除けば、たいていのアブラナ科が水はけの良いところを好む。また葉菜類は大きくしようとしたければどうしても肥沃な土が必要だ。はじめのうちは液肥を利用するのも良いだろう。

菌根菌と共生しないアブラナ科は自身の根から有機酸を出して、積極的に石の中にある養分を溶かして吸い上げる。養分が足りなければ積極的に古い葉を虫に食べさせて糞を落とさせて、その養分を利用する。自然農の畑で育つキャベツや白菜は見事に外葉はレーズじょうとなり、結球部分は被害がない。秋の温かい頃は虫が付くが、中心部分に虫がいなければ安心してそのままで良い。

アブラナ科植物のように菌根菌や窒素固定菌との共生をやめ、独立することにした植物は数えられるほど少なく、誕生はごく最近のことである。ほうれん草やアカザなどのアカザ科、アマランサスやスベリヒユなどのヒユ科がある。

キク科はその独特の風味から分かるように虫がつきづらく、お油分もあまり必要としないため栽培がしやすい。しかし、アブラナ科に比べて発芽も成長もゆっくりなので、大きくしたい場合はしっかりと育苗してから定植した方がよく育つ。暑さに弱いので、秋のはじめや春の終わりには半日陰くらいの場所になるようにしてあげたい。

肥沃な土ほど大きく育つが、独特の風味は少なくなる。またサニーレタスなどのように紅褐色の葉はチッソ分が多くなると緑色が濃くなってしまうので、養分は少なめを意識したい。そのため、養分はアブラナ科にしっかり吸ってもらい、残りの限られた養分で育てるイメージを持とう。キク科も世界中で愛されてきた植物で、ハーブ類も多い。ハーブ類も同様に養分が多すぎると風味も薬効も落ちるので気をつけたい。

セリ科は数は少ないが、キク科同様その独特の風味から世界中で愛されてきた。もともと湿地や水辺の近くで自生する種であるため、水が豊富な場所を好む。むしろ水さえあれば育つといっても過言ではない。しかし葉が細いことから分かるように他の植物との光合成の獲得競争には弱い。そのため他の植物に覆われてしまうと一気に弱ってしまうので、こまめな草刈りが必要だ。セリ科のキク科同様チッソ分が多くなると風味と薬効が落ちてしまうので、控えめで育てたい。

このスリーブラザーズのタネを混ぜてばら撒くのは一興がある。大抵の場合まず最初にアブラナ科が発芽し、次にキク科、最後にセリ科となる。成長もこの順番で進む。そのため、適宜アブラナ科を間引きしていかないと畝の上がすべてアブラナ科で終わってしまう。

また、結球させたい野菜がある場合はその野菜の成長具合に合わせて自立根圏を意識して間引きしていこう。そして、間引きの後には土を裸にしないように草や落ち葉のマルチを被せていく。葉菜類がよく育てば土が肥沃な証拠で、根菜類がよく育てば貧相な証拠だ。自身の畑の様子を観察して、葉菜類と根菜類を分けて栽培することも適地適作である。

スリーブラザーズはそれぞれの葉と根に害虫忌避成分を持つ。そのため輪作・間作としても価値がある。収穫・間引きする際は根を残し、茎葉も必要以上に畑から持ち去らないようにしよう。根菜類の場合は虫に食われている葉や黄色に枯れ始めた葉などは美味しくないので畑に置いておく。そして、収穫・間引き後のお礼肥として有機物マルチはもちろんのこと自家製堆肥や液肥をすれば、春先まで葉菜類が食べ放題となる。そして、春には菜の花食べ放題になる。

畑が狭い場合は積極的に育苗をして、夏野菜の終わりととも畝の上の隙間に植えていく。その場合寿命が短いキュウリなどからはじめるが、それでも定植スペースを探すのが難しい場合がある。その場合は積極的に夏野菜に根切りを施すのも良いし、夏野菜を種取り用だけ残して諦めるのも考えたい。どうしても夏野菜は秋が深まると味が落ちてしまうからだ。もしくは結球野菜やブロッコリー・カリフラワーなどのアブラナ科は晩生の品種を利用して、春先に楽しむようにするのも良いだろう。

春先に菜の花食べ放題となることで、側根の成長をさらに促して、土を耕し、微生物を増やし、土中内の栄養分を蓄えてもらう。もし、タネ採りをしたい場合は畝や畑の端っこに移植したり、プランターに移し替えるのもアリだ。そうすれば、夏野菜の定植の時に邪魔にならないし、花がミツバチや狩りバチを呼び寄せてくれる。花や葉にも害虫忌避の香りがあるので、期待ができる。

スリーブラザースに補助的な意味を込めて、ユリ科とマメ科も採用したい。隙間があればニンニク(らっきょう)とマメだ。夏野菜のコンパニオンプランツで紹介したように、ユリ科は土中内を殺菌してくれ、マメ科は窒素固定をしてくれることで、土中内の生物多様性に貢献してくれる。ユリ科は雑草に覆われてしまうと弱るので、野菜に囲まれている方が都合が良い。マメ科は夏野菜に向けて養分を補給し、そして秋冬野菜と夏野菜の隙間の閑散期を埋めてくれる。ユリ科とマメ科の収穫とタネ採りを考えた場合、植える場所は畝の端になるだろう。むしろ、その方が乾燥を好む彼らには都合が良い。

もちろん玉ねぎのように補助的ではなくメインの収穫としたい場合はその専用の畝を作りたい。これはマメ科にも言える。コンパニオンプランツのプランで大切なことは目的だ。まずはメインの収穫となるものを選び出し、それに合わせて補助的な野菜とその配置をデザインしていく。それは草刈りや間引き、マルチも同様に。


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