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カブトムシとクワガタ~森のレストラン~


<8月の生き物 カブトムシとクワガタ~森のレストラン~>

ミーンミンミンミン♪
ツクツクボウシツクツクボウシ♪
と蝉の大合唱で目を覚ます真夏。

人間が起きだす頃には、すでに開店し大反響しているレストランがある。
この時期限定の森のレストランだ。

朝早く起きて子供達がそのレストランに向かう。
彼らの目的はカブトムシとクワガタムシだ!

カブトムシとクワガタムシは永遠のライバル。
餌場の特権を得るだけではなく、繁殖の機会を得るために命懸けで戦う。
昔から子供達は彼らの戦いに目を丸くして観戦してきた。

彼らは似ているようで全く違う成長をしてここに集まった。
カブトムシは寿命は1年間。
そのほとんどを幼虫として過ごすカブトムシはたくさん食料にありつけたものだけが大きくなる。
その角の大きさはそのまま強さにつながる。
だから、カブトムシは角の大きさを見ただけで逃げ出す小さなカブトムシもいるくらいだ。
しかし、そんな小さなカブトムシは知恵を絞る。

まだ大きなカブトムシがやってくる前に早起きして餌場に集まることもあるし、
身体が小さいのをいいことにメスのふりをして、蜜を吸い、メスをゲットすることもある。
身体が強くなければ、頭を使え。
強いばかりが生きかたじゃない。

クワガタムシは幼虫期間が2~4年間と長い。
カブトムシと違って成虫になってから越冬する種もいる。

クワガタムシは人間と同じように身体の中に微生物を飼い、
消化しにくい朽ち木を分解してもらい、ゆっくり成長する。
食糧に恵まれた環境では、早く成虫になってしまい肝心のアゴが弱いままになってしまう。
逆にゆっくりじっくり育った成虫はアゴの強く、カブトムシに勝つこともある。
昆虫は成虫になったらもう大きくならない。下積みがすべてなのだ。

一人じゃ難しいなら、仲間と協力しよ。
早いだけが強いわけじゃない。

実は日本のようにカブトムシやクワガタムシを身近な自然の中で観察できる国はほとんどない。
彼らが好きな樹液を出すコナラやクヌギといった樹木は日本の雑木林を代表する樹木だ。里山ならどこにでも生えている。
その落ち葉から堆肥づくり、ホダ木で椎茸栽培、木材で炭焼きをしてきた。その過程で幼虫はぬくぬくと冬を越してきた。
つまり、私たちの先祖が植えてくれた、管理してくれた森があるおかげなのだ。
昔はどんな集落にも、村にも、町にも必ず共有の雑木林があった。

しかし、その雑木林も都市開発の流れでどんどん伐採された。
夏の田舎にで過ごしていれば、ありふれた生き物が
都会ではホームセンターのカゴの中でしか見かけることがない。

秋の雑木林を歩きしめるあの感触と匂い。
夏は涼しい風が吹き、発酵した樹液の甘い香りが漂う。
冬は太陽の温もりを身体に受けて静けさの中を過ごす。
春になれば鳥が歌い、リスが走り、人々はピクニックに出かける。

その足元でカブトムシやクワガタムシは繊維質の多い木資材を分解し、大地に還元する。
昔の農業はそれらを利用し、土を豊かにすることで恵みを得ていた。

3月初春に作った踏み込み温床(落ち葉を利用した温熱育苗床)も
夏の間にメスが卵を産み付けてくれるおかげで、来春には素晴らしい堆肥に生まれ変わっている。
5月から6月にかけて幼虫は蛹になり、夏になると大地に姿を表す。
踏み込み温床の残りは片付けるのではなくて、そっとしておいてあげよう。
飼育ケースに移して羽化の様子を観察するのもオススメだ。その美しさに感動を覚えるに違いない。

その歩みは現代の熱や微生物資材を使用した方法よりも、ものすごく遅い。
しかし、その歩みの中で繰り広げられる自然界のドラマを、子供達は見て学ぶのだ。
いや、自然と自分を統合させていくのだ。
そんな貴重な体験を生み出す役割もあるのが雑木林の本質だろう。

そんな彼らの自然のドラマを見たい場合は
昼間の間に樹液が出ている木を見つけておこう。
オオムラサキやゴマダラチョウなどの蝶やハチ、カナブンなどが集まっているのですぐに見つけることができる。
森のレストランは実は夏の間だけ24時間営業なのだ。

さて、森のコックさんは数十年間、じっくりゆっくり樹木が熟成させた料理(樹液)を大判振る舞いする。
フタを開けるのはクマだ。この話はまた今度。
(他にもカミキリムシなどがいます)

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