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厄介な雑草の増やし方


<厄介な雑草の増やし方>
これは決して、あなたの嫌いな人の敷地内を雑草だらけにするために教えるわけではない。むしろ、あなたの敷地内に厄介な雑草を増やさないようにするために知ってもらいたい。なぜならあなたの敷地内に厄介な雑草がいる原因はあなた自身にあるからだ。
さぁ、雑草について学ぼう。

①草を根っこごと抜く
いきなり、ビックリする人が多いのではないだろうか?
雑草は根っこごと取り除くのが基本で、そうしなければ文字通り根絶できないと。

しかし、これは雑草のことを全く理解できていない人の妄言である。
雑草と呼ばれる植物の種子の発芽条件のひとつに「強日光」というのがある。植物の種子には日光が必要な好光性種子と必要ない嫌光性種子があるのがよく知られている。その中でも雑草と呼ばれる植物たちは強い日光を当てられることで発芽のスイッチが入る。

根っこごと生き抜けば一緒に土も掘り起こされてしまう。それによって強い日光が当たらない土の中に眠っていた雑草の種子が土表面に運び出されてしまう。そして、強い日光を浴びて発芽のスイッチが入るのである。

確かに根ごと取り除けば、その雑草は死ぬだろう。しかし、新たな雑草の種子の発芽のスイッチを押している。だから、雑草は抜いても抜いても生えてくる。いや、抜けば抜くほど発芽するのだ。雑草の種子は1ha &表土15cmで5億個、1m×1m表土15cmで5万個ほどあるという。いったいいつまで草を取り続けなくてはいけないことか。

草が全く生えておらず、土が裸になっているところは自然界では砂漠だけである。そんなところには植物どころか虫もいないし、人間も生きていけない(オアシスに住む人間はいるが)雑草は絶対に砂漠を作らない。いや、作らせない。

だから、自然農では草は抜かず刈って、その場に置いて土を裸にしない。こうすれば雑草は抑えられるのである。

②土表面を整地する
畝を立てたり耕した後に農具でペンペンと叩いて、表面を綺麗に整地していないだろうか?これもまた雑草の種子の発芽のスイッチを押しているに過ぎない。植物の種子は土とくっつくことで発芽の条件が整う。
正しく言えば、吸水することが発芽条件の一つである。植物にとって吸水した後に強い乾燥に当たることが一番嫌がる。それでは最悪種子は死んでしまう。だから、乾燥を防いでくれる土とくっつくことは植物にとって発芽の条件となるのだ。

さらに言えば空気に触れていると種子から出る根が空気に触れる可能性が高いので、種子は発芽しようとしない。根は光の無い方に進む性質があるため、種子に土がついていると光の無い側面が生まれて種子は発芽のスイッチを入れる。①と合わせて言えば、強い光が片側にあたり、その反対側に土がついていて暗い条件でこそ、雑草の発芽条件が揃うのだ。

植物を種から栽培したことがある人なら、タネを蒔いた後に土を叩くことを当たり前にやっているだろう。これこそ、種子の発芽のスイッチを入れる方法なのだ。それを雑草に対してしまえば、育てたい植物よりもさきに雑草を育ててしまうだろう。

だから、畝を立てたり耕運したあとすぐにタネを蒔くか、タネを蒔くまで荒らしておくのが良い。もちろん、それまで土を裸にしないのもオススメだ。タネを蒔くときも、タネを蒔いたところはしっかり圧着し、それ以外は荒らしたままにしておく。こうして、雑草との競争でフライングスタートさせよう。

③地面すれすれで草を刈る(地際刈り)
雑草が嫌いな人は駆除しようとして、草刈機などを利用する。
その際にさまざまな工夫をして草刈りをしているが地面すれすれまで近づける人が多い。さらにナイロンコードなどを利用する人もいる。

さて、これもまた雑草を増やすことになる。実際は雑草の中でも「厄介」と言われる地下茎の雑草を積極的に増やすことになる。

地面すれすれで草を買ってしまうと、イネ科などの成長点が低い草だけが残る。こういった成長点が低い植物は成長が早く背が高くなるので、こればかりを生き残らせれば何度も何度も草刈りが必要となる。

その代わりに地面から20cm程度の高刈りをすれば、成長点が高い植物が生き残る。成長点が高い植物は花を咲かすまでは背を高くしない。さらに他の植物とも共生関係を結ぶものが多いため、食べられる雑草やあなたが育てたい野菜や草花を生かすこともできる。逆に成長点が低いイネ科の植物は光合成の邪魔をしてしまうし、通気性を悪くしてしまうのでやはりこまめな草刈りが必要となってしまうのだ。

こまめに草刈りをすると確かにイネ科植物も姿を消していく。しかし、その代わりに増えてくるのが厄介な雑草たちである。地下茎の植物は成長点が土の中にある。だから、草刈りでは成長を一時的に止めることはできても終わらせることはできない。草刈りで他の植物を殺してしまえば、地下茎の植物たちは競争する必要がなくなり、やすやすと生きていける。人間が草刈りをサボっている間に養水分を地下茎に蓄えて、次の草刈りに備えることになる。

最終手段の農薬を使えば確かに厄介な雑草たちもいずれ死に、他の植物も芽を出さないようになるだろう。しかし、そんなことをすれば何が起こるか。土は雨が降るたびに、誰かが通るたびにどんどん固まっていく。まるでコンクリートのように。こうなればもう植物は育たない。
植物が育たないということは人間も生きられないということだ。
雑草が生えてくるということは人間が生きられる環境ということを忘れてはいけない。

④土を耕して、肥料をまく
土壌撹乱に適応したのが雑草という植物の特性。草を除去するために耕せば、雑草の発芽スイッチがオンになる。

また耕してしまうと、土表面に散らばっていた雑草の種子は土の中に埋没し、休眠状態に入り、条件が揃うのを待つ埋土種子集団となる。それが次に耕す時に発芽のスイッチが入ることになり、次から次へと雑草は出てくる。

雑草に肥料をまいてやる人など、雑草好きな人でもいないだろう。しかし、農業では作物に対して肥料をまく。作物の中にはチッソ肥料が多すぎるとチッソ焼けと呼ばれる生理障害が起きて、枯死してしまうことがある。しかし、その横で雑草はイキイキとしているだろう。雑草は過チッソを好み、適応している。そのためむしろ雑草が余計なチッソ分を吸い取ってくれているとも考えられる。

⑤等高線に対して交差(平行の逆)して畝をたてる
番外編として、畝立ての話。自然農を教えているとよく畝を等高線に対して平行ではなく、交差して立てる人がいる。畝が傾斜してしまっている状態のことだ。

確かに農家さんなどにはそういう風に畝を立てる人はいるが、それは機械の都合である。機械では傾斜している農地に対して水平に動かしてしまうと、横転してしまうため、わざと傾斜を登ったり下ったりする。
人によっては排水性を良くするためにわざと交差した畝立てを教える人もいる。

さて、これをすると実は厄介な雑草がイキイキとする。それについて説明する前にぜひ地方の里山に出向いて、傾斜地に生えている雑草を観察してもらいたい。そこには間違いなく厄介な雑草たちが蔓延っていることに気がつくだろう。

どうして厄介な雑草たちはわざわざそんな場所に生えてくるのだろうか?傾斜地とはそこに立てば分かるが倒れないように踏ん張る必要があるし、雨の多い日本では雨水が土をさらっていってしまうしがけ崩れのリスクあるし、晴れが続けば乾燥が強くなる。厄介な雑草くらい強い生命力があるのなら、もっと生きやすいところで蔓延ってしまう方が楽チンなのに。

厄介な雑草たちはこういった過酷な場所に生えてくる。なぜならば彼らは崖が崩れて土砂が流失するのを防ぐためだ。彼らは強い根っこを土中内に伸ばし、岩石もろとも掴む。さらに地下茎や蔓を伸ばし、まるでネットを張ったかのように土全体を覆う。

そして、地表面に大きな葉で日陰を作り出すことで虫たちや微生物を強い紫外線と乾燥から守り、彼らの生息環境を整える。それによって、傾斜地も土壌生物が豊かになり団粒構造の土となる。そして、その大きな葉っぱで雨を受け止めて衝撃を和らげ、雨水を地下へゆっくり流すことで土砂崩れを防ぐ。彼らの強い生命力は他の生物を守るために備わっているのだ。

さて、人間がそんなことを考えずに自分たちの都合から傾斜地を作ってしまうとその厄介な雑草たちがどこからともなく現れて、必死に土砂の流失を防ごうとするだろう。そこでさらに土を裸にしたり地面スレスレで草刈りをすれば、もっと彼らは頑張る。

生物学の雑草の特性として「絶えず外的な干渉や生存地の破壊が加えられていないと、その生活が成立・存続できない一群の植物群」とあるように、雑草はイキイキとしてしまう。むしろ雑草を追い出したいのなら、何もせずに森林にしてしまえば良い。

彼らは人間に抵抗しているわけでは無い。人間が作り出す災害リスクを減らすために頑張っているのだ。悲しいことに人間はそんな様子を観察し共生する道を選ぶこともなければ、理解することもない。

厄介な雑草ほどあなたの行動が呼び寄せ、イキイキさせていることに気がつかなければ、あなたの労力は減らないばかりか、共生の道もない。
自然と調和した暮らしは必ずあなたも身近な自然も豊かになる暮らしだということをぜひとも理解してほしい。

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