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【Disc Review】#2 ポップさと渋さの絶妙なバランスでポテンシャルを全解放-ポートレイト/chilldspot

先月くらいから好きなアーティストのアルバムリリースが立て続けにやってきてて、ちょっと把握しきれていない。
正直chilldspotがニューアルバムを出すのはリリースされてから知ったというお粗末具合だし、聴くのもリリースから数日経っていたという具合だ。

単純にリリースが多かったというのも理由の1つだが、なんせ彼ら・彼女らの1st AL"ingredients”は、リリース当時高校生とはにわかにも信じがたい、海外バンドのようなグルービングと完成度の1枚だった。

それから本作までの約1年半の間に知名度も上がり、タイアップ曲などもちらほら。今回ALの既出曲"BYE BYE"などは、これまでの曲からはグッとポップな曲で、2ndはポップ路線かな…と少々様子見姿勢だったというのが正直なところである。

雷を打たれたような最高のグルーヴでのスタート

という状態で聴き始めたんだから、1曲目の”crush”には雷を打たれた。1stのグルーヴ感の大復活。かっこよすぎる。
いわゆる“ネオアコ”らしい、ソウルやジャズの雰囲気を感じるグルービーなリズム隊にレゲエの面影もありながらダークさを感じる曲の雰囲気に落とし込んだリバーヴとディレイを効かせたギター。そこにボーカルの妖艶でウェットな声がたまらないハーモニーを生んでいる。このボーカルの中低音の妖艶さはとても20年と少しの年輪で出せる雰囲気とは思えない。

前後の渋さと絶妙なバランスを作るポップな曲たち

続く“Heart Jack”では前曲の雰囲気がありつつ、少しBPMとボーカルの音域が上がって、既出曲に上手く繫がっていく。
“BYE BYE”“Girl in the mirror”、1曲挟んで“Like?”“Get High”と既出曲が続く。挟んでいる“Don't lose sight”も含めて前後のゾーンからするとポップ寄り雰囲気の曲が並んだゾーンだ。
でも改めて聴いてみると、どの曲にも一部分にはこれまでのchilldspotらしい要素が入っているし、アルバム全体で前後の渋さ満載の「醤油味」ゾーンとこのゾーンのポップさの甘味が絶妙なバランスで成り立っていて、バンドとしての音楽・表現力の幅の広がりがプラスの方向に作用しているのを感じる。特にボーカルの声の表現力の高さには曲中のどの部分を聴いてもビビらされる。
前言、撤回します。

ソウル・ファンク・UKロック…いろんな「渋さ」でポテンシャルを解放するラストスパート

この後は、一転してソウルな雰囲気たっぷりにボーカルのラップが心地良いスパイスになっている”supermarket“、ファンク色全開でライブで盛り上がること間違いない“full count”、The StrokesのようなUKロックの疾走感を感じる”please“とまた「醤油味」パートが続く。
最後はストレートなギターロック“Anymore”、誕生日という自分の1年を振り返った感情の陽陰を絶妙に歌ったグールビーな”5/7“とバラード調の2曲でアルバムは終わる。

chilldspotのアルバムとしての2作目、前作があまりにもセンスの塊だったが故にファンや周囲からのプレッシャーもあっただろうが、それに囚われず自分たちの今を思うがままに詰め込んだであろう今作は、バンドとしてのポテンシャルをさらに解放し押し広げた、これからがますます楽しみになる1枚になった。

余談だが、昨年RADIO CRAZYで、最前列でライブを聴くことができた。想像に難くないと思うが、彼ら・彼女らのライブは音源のグルーヴ感のボーカルの表現力を何倍にも増幅した、脳みそから痺れるライブなので、ぜひ一度見てみてほしい。


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