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交通事故の6倍!おふろで落とす命は防ぐことができる。

スーパー銭湯の運営と悲しい出来事

17年間、3つのスーパー銭湯の運営に携わってきた中で、私が一番心に残っているのは、あるお客様が浴室で亡くなられた悲しい事故です。

閉店間際の静かな男子露天風呂で、スタッフが湯船で浮かんでいる男性を発見しました。すぐに引き上げたものの、すでに脈はなく、意識も戻ることはありませんでした。

後に心臓発作が原因で意識を失い、そのための溺死と判明しました。。

救急車の出入りが多いスーパー銭湯の実態

スーパー銭湯を運営していると、救急車を呼ぶことはそれほど珍しくありません。特に冬場は、毎月のようにどこかの施設で「緊急搬送を行なった」という報告が上がることもあります。

急激な温度変化で体温が乱れ、ヒートショックを起こすケースが主な原因です。

脱衣所で裸になる際や、急に熱いお湯に浸かると、血圧や体温が急変し、心臓に負担がかかります。その結果、気分が悪くなるケースがほとんどです。

また、浴槽から上がるときに、のぼせて倒れてしまう方や、意識を失う方も少なくありません。ですから冬場の入浴は特に注意が必要です。

自宅より安全?—スーパー銭湯の意外なメリット

日本では年間19,000件ものお風呂での死亡事故が報告されています。この数は、交通事故による死亡者数の6倍以上です。車の性能向上や、シートベルトの義務化、飲酒運転の罰則強化などで交通事故死者数は大幅に減少しましたが、入浴中の事故はむしろ増加傾向にあります。

高齢者の数が増えたことが大きな要因ですが、特に一人暮らしや、高齢夫婦だけの家庭の増加が原因です。

発見が早ければ一命を取り留めることができますが、こうした家庭では誰にも発見されないまま命を落とすリスクが高いと言えるでしょう。

人の目が命を救う—スーパー銭湯での発見の重要性

19,000件の入浴中の死亡事故のうち、溺死は5,000件。残りの14,000件は、発作を起こして倒れ、そのまま命を落とすケースです。発作を起こした際、発見が早ければ助かる可能性が高まります。

スーパー銭湯では常に誰かが見ているため、発作が起きた場合でも迅速に対応できる環境が整っています。

しかし、前述した露天風呂で亡くなった方は、閉店前の静かな時間に、一人で入浴されていました。もし、近くに他のお客様がいれば、溺れる前に助けられたかもしれません。

命を守る仕事—救急車の出動が意味するもの

私が属していたスーパー銭湯には、年間120万人近いお客様が訪れます。先に述べたように、頻繁に救急車を手配することがありますが、逆に言えば、そのたびに助かっている命があるとも言えるでしょう。

入浴中に体調を崩すリスクはありますが、自宅で誰にも気づかれずに亡くなるよりも、他の人の目があるスーパー銭湯のほうが、命を救える可能性が高いのです。そう考えると、私たちの仕事は、お客様の命を守る、誇れる仕事とも言えるかもしれません。

これから、季節が進み寒くなってきます。ヒートショックの予防は、脱衣所や浴室の温度が低すぎないことです。十分ご注意くださいね!


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