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60代、人類史の数秒をどう生きるかを考えよう;コテンラジオの正しい使い方!

60年近く生きていると「どう生きるか」よりも、むしろ「どう生きたか」といった発想で物事を考えるようになる。人類の歴史の中のほんの少しの時間の中で、いったい自分は何をしたのか!したかったのか!むりやり答え合わせをしようとするが、答えは出ない。

そういったモヤモヤを解消するのに、とても面白いポッドキャスト番組がある。この番組の面白さについて語ってみたい。


なぜ人は歴史に興味を持つのか

番組に触れる前に、歴史を学ぶことについての僕の見解を述べておきたい。

歴史は割と好きではあるが、歴史から学んだことを、実践で活かした生き方をしてきたかといえば、とてもそうとは言えない。

多くの偉人や、先人が残した史実を教訓とすれば、もう少しはまともな人生だったことだろう。勝負すべきところで逃げてしまったり、選択してはならない選択をしてしまう、学ばない男なのだ、僕は!

でもね、愚かなことだと知りながら、戦争がなくなることはない。

領土をめぐり、宗教をめぐり、利権をめぐり、争いはつづいている。民主主義でも、共産主義でも、世の中が公平になることはなく、貧富の差や差別意識は根絶しない。情報化社会というけれど、イデオロギーは、武力の前で寡黙となり、独裁者を許容する。どうやら、愚かなのは僕だけでない、人類の問題らしい。

人が歴史に興味を持つのは、いつまでたっても変わることのできない自分や人類を、それ見た事か!と肯定化するための慰めだろうか?などと感じてしまう。

そんな僕が、ここ数年ハマっている歴史を学ぶツールが、「コテンラジオ」というポッドキャススト番組なのだ。

歴史キュレーション番組コテンラジ

コテンラジオというポッドキャスト番組は、知らなかった歴史、知っていたつもりの歴史を「それ見た事か!」ではなく「そういう事だったのか!」と捉えなおすことができるネット配信ラジオである。

毎回歴史的人物や社会現象をテーマに、その歴史背景と、その時代を生きた人々の挙動を掘り下げて解説される。

他の歴史を扱った番組との違いは、史実を現在の思考でなく、その時代や、その地域の立ち位置に立って語ろうとする姿勢にある。時代に向き合うのではなく、寄り添うことを意識している点なのだ。

そのため、時代や人物の考察に多くの時間が割かれることとなる。一つのテーマは、1話30分から50分程度、少なくとも6話、長ければ15話くらいの長さで放送される。

つまり一つのテーマを、3時間から、時には10時間以上かけて語れるのだ。大学の授業なら単位習得できそうな時間である。

人物をテーマとした内容の場合、大作だとその人物が登場するのは5話目くらいからとなり、その人物が登場するに至った社会的なバックボーンが丁寧に解説されていく。

三人のパーソナリティ

基本的に、番組は三人のパーソナリティで進行される。

株式会社COTEN代表取締役の深井龍之さんと、研究員で中国人の楊睿之さん(通称ヤンヤン)の二人が、テーマとなる歴史の文献を毎回100冊以上読み込む。また、時には専門家の意見を取り入れながら、作成した台本を練り上げるのだ。

そして、歴史を得意としないM Cの樋口聖典さんに、史実と、それをどのように解釈したかを解説しながらの進行となる。

樋口さんが理解できているかが基準となるので、内容が専門化しすぎることなく、分かりやすい。

株式会社COTENについて


株式会社 COTENは、世界史をデータベース化することを事業の柱としており、将来的にこのデータベースは人類の叡智に誰もがアクセス可能なものとすることを目的としている。

例えば、世界史の中で部下に暗殺された人物にはどのような人がいて、彼らが行ってきた史実にはどのような傾向にあり、挙動があったのか、それらの情報をタグ付けして共通点を見出すといったことだろう。

上記の例で言えば、織田信長とカエサルの共通点を発見することができる。

番組は、事業活動の一環としての側面と、企業アピールの側面を兼ねている。

活動面では、歴史調査自体が、事業活動であるため、番組出演の2名が歴史を研究することはその作業に直結している。

番組出演者以外にも社内スタッフによる調査も含め、史実をどう捉えるかが議論され、その結果得られた解釈を台本としているようなので、語られる内容には厚みと深みがある。

このことに関して、深井氏は、史実を学ぶために本にはあたるが、そこには、それを記した著者の想いや意志が反映されている。どの記述をどのように切り取るかの判断は難しく、さまざまな考え方を知った上でメンバーと議論し、出した結論を話すことになる。

採用した内容と、違った解釈の書籍があったとしても、そのことは分かった上で出した答えである。一冊の本の要約ではなく、様々な著者の様々な解釈の書籍を学んだ上で出す答えに価値があると述べている。

一方で、企業アピールの面では2018年放送開始からじわじわと人気となり、2023年には登録者数
22万人の人気番組となっている。

これに伴い、社会的には無名であった企業が、現在では大手企業も含め多くの企業が企業スポンサーとなり、事業の取り組みを後押ししている。

また、取り組みに賛同するものも多く、個人サポーターによっても支えられている。わずが数人規模の企業であったのが、今では求人に500人以上の応募があり、着実に事業規模も拡大しているのだ。

学ぶ姿勢を学ぶのが歴史である


深井さんも、ヤンヤンさんも、歴史研究家だが、歴史学者ではない。歴史を学ぶことが好きな大いなる素人が、興味を持って歴史を学んでいる。

つまり、学者が当たり前とする所与のものがないので、いきなり専門的な言葉や、概念を前提にはしない。あくまでも自分達が理解するに至った道を辿りながらなので、その解説は分かりやすく、頭に入ってくる。

そして、何より勉強となるのは、新たに知ったことに対して、彼らがどう感じたかを語るところにある。リスナーは新たな史実を知るのではなく、史実を知った彼らがどう捉えたのかを知ることに、学びがある。

もちろん、彼らが感じたことに共感できる部分も、できない部分もあるのだが、それはそれで良い。歴史を学ぶということは、人がその史実をどう捉えるか。そのパターンを知ることだと気付かされる。

株式会社COTENの事業である、歴史ダータベースの構築は、史実の中の多くの項目をタグづけして、共通点を見つけ出すこととにあるのは先にも述べた。つまり、過去の実例をメタ認知に生かすことなのだ。

メタ認知とは、自分の認知活動を客観的に捉えることであり、そのための判断材料を歴史の中から検索することができれば、優位となる。まさに、歴史から学ぶことではあるのだが、裏を返せば、歴史は繰り返されることを前提とした考えとも言える。

歴史を学ぶ本質は、歴史は繰り返すことを学ぶことである。

コテンラジオが面白いのは、多くの文献にパーソナリティが自ら当たり、そこで得た史実を彼らがどのように受け止めたのかを知ることだ。彼らは決して答えを強要しない、あくまでも答えを出すのはリスナー各人であるとの姿勢なのだ。

長い人類史の中で、一瞬を担う自分が、残された数秒にも満たない時間をどう生きるかを知るための、実に面白い番組だと感じている。

音声配信なので、ながら聴きができる、超おすすめ番組ですので、お試しあれ!


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