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あなたを感じる花のある空間が好き!

妻には花を飾る習慣がある。彼女は色のついた花を好まないので、基本淡い白か、ほんのりグリーンがかった色の組み合わせのものが多い。

弱視になった僕は、花の存在をはっきり見ることはできなくなった。彼女の好む淡い色はなおさらなので、食卓に飾ってある花瓶に気づかず、落としてしまうこともある。

それでも、花のある雰囲気は好きだ。そこに妻の存在を感じるからかもしれない。花を飾るときに不機嫌な人はいない、鼻歌を奏でながら花を飾る、そんなごきげんな彼女の空気を花はもたらしてくれる。

店舗商売に長く携わってきた。宝石店、飲食店、温泉施設、どの商売であっても良い店とは花のあるお店であった。

その店のオーナーや、スタッフが自発的に飾りつけをしている一輪挿しのような花がある店舗は、お客様から支持されているといって良い。

当然のことで、その店に愛着のある人が、そこで商売をしているからだ。彼らには自分のお客様をおもてなしをしようとする気持ちがある。

若い頃はチェーン店の宝飾品店に勤めていたが、経費で花代などは認められていなかった。ディスプレイや、装飾品は本部で一括して送付してくる。

マニュアルにも各店で花を飾る項目はなかった。ともすれば、個人の趣向で店を飾るのは良くないことと捉えるむきもあったかもしれない!

しかし、店長なり、スタッフが自発的に花を買ってきて、あるいは摘んできて、ちょこっとディスプレィしているような店は、おしなべて業績は良かった。

もちろん、そこにはセンスも必要だ。しかし、何より気持ちがあることはもっと大事である。

花心や、色彩センスのない自分にとっては、どの商売であっても、そういう気持ちを持つメンバーのいるチームづくりをするのが仕事だと思ってきた。

豪華な花や、お金を出してプロに飾り付けてもらう花ではない、自分の感性で自分の意志で飾る花がそこにあるのが重要なのだ。そこには、そういう人がいるということだから。

僕には、胡蝶蘭や○○流といった生花の良さはよくわからない、それは作品の花としての美しさはあるのかもしれない。でもお店に飾られた胡蝶蘭はプロが撮った集合写真を見ているようだし、○○流の生花はポーズを決められたモデル写真のようで萌えることはない。

写真家の幡野広志さんは、著書「うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真」の中で以下のように書かれている。

たくさんの人が誤解をしているんだけど、うまい写真はいい写真ではない。いい写真というのはもっと別次元の話になる。いい写真の答えは哲学のようにそれぞれが辿り着くものだけど、うまい写真がいい写真ってわけじゃないって答えはほとんどのフォトグラファーと写真家の共通認識だろう。うまいから……で? となる。いい写真の答えは自分で出さないといけない。

「うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真」より

いい写真にも、いい商売にも、そこには哲学がある。花を飾る人に哲学があれば、花は美しさを増す。

だから僕は、あなたを感じる花のある空間が好きなのです。


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