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あの言葉と出会えたから

私は高校を卒業後、18年間過ごした地元を離れ、

就職を選択し温泉旅館の仲居さんになった。

知らない街、知らない人達、初めての一人暮らし

不安とドキドキでいっぱいだった。

女性だらけの環境では、本当にいろんな性格の人が

いた。気の強い人、理不尽な人、新入社員の私に

意地悪をしてくる人もいた。

当時の私は、まるで大奥の世界みたいだと思った。

親の元を離れて自分の力で生きてみたい。

そう思って地元を出てきたはずなのに、すぐに

ホームシックになった。

地元に帰りたい。家族に会いたい。

毎日そんなことを思い泣いていたのだ。

けど唯一優しくしてくれる人物がいた。

その人は自分のお父さんより少し歳上の男性の方で

そこの会社の上司だった。

私と地元が同じというだけで最初から可愛がって

くれていつも気にかけ話しかけてくれたのだ。

しばらくしたある日、社内で各部署の代表が集まり

経営についての向上ミーテイングが行われた。

中堅社員になった私は部署の代表として出ていた。

この頃私は転職を考えていた時期だった。

環境にも仕事にも慣れた頃だったが、本当にこれが

自分に合っていることなのかと考えていたのだ。

そんな時行われた社内ミーティングで、クレームを

出さない為にはどうしたら良いかを問われた。

私自身が招いたクレームでは無いが、その時期に

何件か同じようなクレームが続いていた為である。

その時上司が、私の名前を挙げてこいつがクレーム

を出さない理由、お客様から褒められる理由は

いつも笑顔だから。

どんな時でもニコニコしているからだろう。

まず大切なのはこいつみたいな笑顔だろう。

そう強めの口調でみんなに言ったのだ。

私は少し照れ臭かったが、凄く嬉しかった。

自分がここまでやってきたことは間違ってなかった

のだと思えた。

そして、自分が持つ強みに気づけた瞬間だった。

私はこの日の上司の言葉をきっかけにもう少し

ここで頑張ろうという気持ちになれた。

それから役職にも就き、かれこれ10年勤めあげた。

上司がいなかったら私は頑張ることを諦めていた。

たった一人の味方が、たった一つの言葉が、

私をここまで踏ん張らせてくれたのだ。

あそこで諦めなかったおかげで沢山の人や思い出と

出会い、今年新たなスタートを切ることができる。

ちなみに新入社員時代に意地悪された人とも今では

とても仲良しな関係だ。

続けるのも良し、新たな道を選択するのも良し。

重要なのは自分の人生において糧となる出会いがあ

るかどうかだと思う。

自分の中で何か見つけられたらそれでいい。

とりあえず頑張っていればきっと誰かから

素敵な言葉を貰えるから。それを大切にね。


#あの選択をしたから

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