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小惑星探査機OSIRIS-RExのサンプルリターンがもたらす科学成果

先日、NASAの小惑星探査機OSIRIS-RExが小惑星「ベンヌ」へのタッチダウンに成功しました。

上記の動画がOSIRIS-RExがベンヌにタッチダウンした時の動画になりますが、かなり鮮明ですね。サンプルもしっかり取れているように見えます。

しかし、日本の探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」も小惑星のサンプルを取ることを目的としていましたが、なぜ小惑星のサンプルをとりにいく必要があるのでしょうか?
その科学的な目的と得られる成果について見てみましょう。

OSHIRIS-RExの科学目標

科学目標として、NASAのOSHIRIS-RExプロジェクトサイトで以下の項目が挙げられています。

・Return and analyze a sample of Bennu’s surface
・Map the asteroid
・Document the sample site
・Measure the orbit deviation caused by non-gravitational forces (the Yarkovsky effect)
・Compare observations at the asteroid to ground-based observations
(引用元: https://www.asteroidmission.org/objectives/)
(・ベンヌの表面のサンプルを回収し分析すること
・ベンヌの全球マッピング
・サンプルを取得した場所の記録
・非重力的な力による小惑星の軌道偏移の観測
・探査機による観測と地上観測との比較)

なぜ小惑星が重要なのか?

宇宙といえば、銀河、ブラックホール、恒星、惑星あたりが花形で、小惑星なんて脇役でしょ?と思うかもしれませんが、NASA、JAXAを中心に小惑星探査は今や宇宙探査の主役になろうとしています。
ではなぜ小惑星が重要なのでしょうか?

現在の定説では、太陽系が誕生した頃に、恒星や惑星のような大きい星に成長できなかった微惑星と言われる星の元のようなものや、星同士の衝突によって破砕したかけらが小惑星になったと考えられています。
つまり、小惑星が作られた時期というのは、太陽系が形成された時期とほぼ同じであると考えられるのです。また、小惑星は質量が小さいため、内部や表面における熱作用や地質活動がほとんどないため、形成当時の情報をそのまま保持していると考えられています。
これらのことから、小惑星のサンプルを回収することで太陽系ができた当初の物質環境や星の形成過程、ひいては地球の進化や水の供給過程などの理解につながる可能性があるため重要なのです。

OSIRIS-RExは「はやぶさ」、「はやぶさ2」とは何が違う?

小惑星を調べることが重要だということはわかってもらえたと思いますが、日本が世界に先駆けて小惑星探査を行った「はやぶさ」、および今帰還中の「はやぶさ2」とOSIRIS-RExでは何が違うのでしょうか?

小惑星と言ってもたくさんの種類があります。
はやぶさの目的地であった「イトカワ」はS型小惑星と言われる小惑星で、ケイ酸と鉄、マグネシウムなどの鉱物化合物を主成分とする小惑星でした。
一方、はやぶさ2の目的地である「リュウグウ」はC型小惑星という小惑星で、生命にとって重要な材料である炭素(炭素化合物)を主成分としています。

では、OSIRIS-RExの目的地「ベンヌ」はというと、B型小惑星に分類されます。
B型小惑星は大きな分類の中ではC型小惑星の中に含まれますが、より細かいスペクトル分析をすると、波長が長くなるにつれ反射率が低下するものグループが存在し、これがB型小惑星にあたります。
反射率の違いは、小惑星を構成している物質の違い、進化の違いを反映していると考えられているため、「はやぶさ」「はやぶさ2」「OSIRIS-REx」それぞれの探査機で様々なタイプの小惑星を調べ、お互いに比較することで、太陽系形成当時の環境を詳細に理解しようとしています。

今後の展開

今後のビッグイベントとしては、今年の12月に「はやぶさ2」が帰還し、C型小惑星のサンプルが手に入ります。OSIRIS-RExの帰還が2023年なので、それまでの間にC型小惑星でわかることをまとめ、B型との比較につなげていけると面白いですね。個人的には、地球外生命が誕生するための条件や環境に興味があるので、物質の観点から地球外生命につながる発見があるとワクワクしますね。

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