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アメリカの火星探査の歴史(1900年代)

2020年は空前の火星探査イヤーとなりました。具体的にいうと2020年7月に次の火星探査機が一斉に打ち上がりました。

アメリカ   ・・・   Perseverance Rove
中国          ・・・   HuoXing-1
UAE          ・・・   Hope

このほかにも、コロナがなければヨーロッパとロシアが共同で進める「ExoMars」も打ち上がる予定でした。この状況を見ても、世界的に火星探査への注目度は大きいことが伺えます。
近年は、NASAを中心に2年に一回は火星探査機を送り、ことごとく成功し新たな探査データをもたらしてくれています。しかし、一昔前までは失敗の連続でした。今回は現在の火星探査に至るまでの、アメリカの火星探査の歴史について詳しくみていくことにしましょう。

1990年代のアメリカが打ち上げた火星探査機一覧

1990年代にアメリカが打ち上げた火星探査機を以下の表にまとめてみました。こうみると、だいぶ昔から多くの探査機を打ち上げているのがわかりますね。

スクリーンショット 2020-10-31 9.48.36

以下の章で、各探査機がどのような成果をもたらしたのかを紹介します。
ミッションタイプ(フライバイ、オービター、ランダー、ローバーなど)の違いがわからない方は、次の記事も参考にしてください。

マリナー3号

アメリカ初の火星探査機。
打ち上げには成功しましたが、太陽光パネルの展開がうまくいかず、ミッションは失敗に終わってしまいました。

マリナー4号

マリナー3号とほぼ同時期に打ち上げられました。マリナー4号は順調に火星への航行を行い、世界で初めて火星のフライバイに成功した探査機となりました。この際に、22枚の火星の画像を取得・送信してきました。下の写真は、高度約12500kmから撮影された火星表面の画像です。(Credit: NASA/JPL)
画質は粗いですが、クレーターの存在を認識することができています。

画像2

マリナー4号のミッション成果としては、火星を撮影できたということにとどまらず、以下の成果をもたらしました。

【マリナー4号の成果】
・大気の主成分が二酸化炭素であることを発見
・大気圧が500~1000Pa程度であることを発見
・微弱な固有磁場が存在することを発見

マリナー6号/マリナー7号

マリナー4号ではフライバイ及び地表面の撮像には成功しましたが、高い高度からの観測のみであり(最も近いところで9846km)、火星の地形、地質を理解するには十分ではありませんでした。
そこで、マリナー6号は高度3437kmで赤道域を、マリナー7号は高度3551kmで南極域をフライバイすることで、マリナー4号より低高度かつ様々な地域の観測データを得ることに成功しました。
マリナー6号/マリナー7号で得られた成果は以下の通りです。

【マリナー6号/マリナー7号の成果】
・200枚を超える火星表面の画像
・地表および大気の温度データ
・火星表面の分子組成
・大気圧データ

マリナー8号/マリナー9号

これまでに打ち上げられた3つの探査機によって、火星の重要なデータが取得されてきました。しかし、これらの探査機はどれも「フライバイ観測」を目的としており、得られるデータの量、地域ごとの観測データ、時間変動の情報については十分ではありませんでした。
そこで、マリナー8号/マリナー9号では、火星の周回軌道上からある程度長期間、継続的に火星を調査することにしました。
残念ながら、マリナー8号はエンジンのトラブルにより打ち上げ失敗となってしまいますが、マリナー9号は無事に火星周回軌道に乗り、驚くべき成果を私たちにもたらしてくれました。

これまでの観測データから、火星は温度が低く、乾燥しており、地球とは環境が全く異なる天体であるため、「Dead World(死の世界)」と考えられていました。
しかし、マリナー9号は従来の考えを覆す見事な観測結果を取得します。
地表には太陽系最大のオリンポス山などの火山やマリネリス峡谷に代表されるような谷地形など地球に類似した地形が見つかりました。これらの地形の発見は、過去に火星で火山活動があったこと、そして地表を水が流れるような環境があった可能性を示しました。
この発見以降、火星における生命の存在が徐々に取り沙汰されるようになります。

ちなみに、下の写真は太陽系最大の火山「オリンポス火山」のカルデラを撮ったものです。(Credit: NASA Goddard Space Flight Center)
マリナー4号が撮った写真と比べると、だいぶ鮮明になったことがわかります。

画像3

マリナー9号での成果をまとめると次のようになります。

【マリナー9号の成果】
比較的形成年代の新しい火山、渓谷、チャネルの発見
・気象現象の観測(砂嵐、氷雲、朝霧など)
・火星衛星(フォボス・ダイモス)のサイズや形の詳細観測
・表面や大気のより詳細な観測データ
【コラム】
マリナー9号は火星衛星(フォボス・ダイモス)の観測も行いました。
もともと、火星衛星の観測は計画になかったようですが、マリナー9号が火星周回軌道に入った際、火星では砂嵐が発生しており、地表面の様子がほとんど見えませんでした。そのため、砂嵐が止むまでの間、火星衛星を撮影することになりました。火星衛星の探査はこの後、ロシアが計画することになりますが失敗続きであり、2024年に打ち上げ予定の日本の「MMX」が最も直近の探査機になるでしょう。それを考えると、マリナー9号の時に観測していたということは重要な意味を持ちますね。

バイキング1号/バイキング2号

マリナー9号の観測から、火星には水があるかもしれないもしくは過去にはあったかもしれないことがわかり、火星生命への興味関心が高まりました。そこで、今度は火星表面にランダーを着陸させ、火星の土壌中に生物がいるかを調べることになりました。

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