【インタビュー】第二回 演劇無料塾、その後。
早2ヶ月が経とうとしている。
当時は記録としてこのマガジンに記事を書き、ドキュメンタリー映画用に撮影を行っていた。
あの時聞けなかったこと、今想うこと。
私もここで話すのが初めてな考えも口をついて出てきて驚いています。
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_____無料塾を始めようと思ったきっかけはなんだったのでしょう?
まず、人と出会いたかった。WSやってると来てくれる層って限られてくるんだよね。よほどの理由がない限り外からの出会いってない。才能がある人と出会いたいし、一緒に仕事ができるといいなって思ってたから、そのきっかけ作りかな。
_____1回目は自分のお金で開催されましたよね。そんな高い金額をなぜ出せたんでしょうか?
なんだろうな・・・
俳優の学校を作るっていうのがビジョンの一つにあって。
そのためには自分が思う、俳優を育てるカリキュラムを実験する場所が必要だったし試したかった。
どこまでお金をかけたらいいのか、抑えたらいいのかがわからなかったし。
第一回の方がお金をかけたかな。外部講師も呼んだし合宿にもいった。
お金をかけることにネガティブさはなくて、投資は自分にとっての覚悟でもあった。
(なるほど…!!!!)
そのおかげで、こんなふうに形にしたらいけるのか〜というのが大体見えたから次はクラファンとかでやっていくのかいいのかなって。見通しが立ったから。
_____1回目も2回目もかけた時間は同じだったんですか?
同じだったけど1回目の方が1回あたり3時間とかだったかな。朝昼、でもやってたし。
_____そうだったんですね。…そういえばメンバーは口々に「必要なものは持ってる」という考えが衝撃だったという話を終わった後も何度も言うんです。(私も)
誰かから教えてもらったりしたのでしょうか?
やっぱりインプロと出会ったのが大きかった。インプロって恐れや抑圧を手放していくもの。人はもともとストーリーテラーだし、もう十分に必要なものは持ってるっていうのがベースにある考え方。
海外の演技メソッドを学んでいっても、そのベースはあった。
(そうなんだ・・・!)
日本だけだと思うんだよ。あなたはまだ未熟だから経験を積んでください、何十年もやってください、とか。もちろん長くやった方がいいけどスタート地点が違うよね。
_____直接的に言われた、というより経験で身についていったものだったのでしょうか?
言われたりもしたけど、ベースの考え方がもう十分に必要なものは持ってるっていうのはやっていったらわかる。今まで教えたり、しおむすびを作ってた経験とかで人はすでに持っててそれを開かせてあげるのが大事なんだなっていうのはわかってた。
_____インプロを始めた頃からわかってたんですか?
インプロ始めたのが12年くらい前だから、その時からわかってたんじゃないかな。
_____初めて知った時は衝撃はありましたか?
やっぱり(そうなんだ)って思ったね。
(やっぱり、だったんだ・・・)
俳優って、一番いい状態が子供時代って言われるんだよね。 じゃあなんで劣化したんだろうって考えてて。その答えが恐れだったんだなって知った。
もともと問いとして持ってたからね。
(持ってたんですね・・・!)
だって感受性豊かだったじゃん。昔って。じゃあなんで今できないの?って。
(確かに。)
_____第一回のときも衝撃だったというような意見ありました?
どうなんだろうね(笑)今回みたいに頻繁には言ってなかったかな。第一回と第二回のタイプが違ったから。
(それ聞きたい・・・!)
第一回は演技は技術として捉えてる人が多かった気がする。
第二回は自分の精神状態と演劇を結びつけて考えている感じ。
わかってたと思うけど。
(そうですね!! 私もそうだったな…)
_____タイプが違うとなるとワークは1回目と大きく違った点はありますか?
半分くらい変えたかな。クラウンは同じだったけど、第一回はモノローグの後にダイアローグの流れだった。一個の脚本を長くはやらなかったかな。
_____第一回とワークを変えようと思ったのは、個性が見えたクラウンのワーク後でしたか?それとも参加者の選出時点で考えてましたか?
やりながら考えていった時に、第一回のようにクラウンからモノローグの流れではない気がして。クラウンの手放す感覚が台本演技へつながってくれるのが一番望ましかったから変えたかな。
(初耳・・・!)
_____やりながら考えていったんですね。全員個性は違うから、指導の時の声のかけ方とか考えてました?
特に考えてなかったかな。ここでつまづくだろうなって思ってたらそうではないこともあるし。エクササイズとかもその場で作ったりするからね。
_____インプロですね、まさに。
同じだよね。
(私は普段考えすぎるからグサグサくる!)
_____そういえば精神的に辛い時期(5-6月)、無料塾を続けるのがきついと思っていましたか・・・?
思ってたね。でも時間を置いたらベストな状態で関われるのか、みんなの状態、スケジュールもわからない。
ここまでの積み重ねが無くなって、どうなるかわからなくなる方が嫌だった。クラファンもしてたし。
だったら様子見ながらでもやった方がいいと思ったから皆に話したよね。
こういう状態です、って話した時にみんなOKしてくれたから進めたかな。
_____「今から大事な話があるから撮って」と言われた時、精神状態が苦しい時は撮ってほしくないと私なら思ってしまう気がして。
そんな状態を撮って欲しいと思えた理由はなんだったんでしょう?
それが役者の変なところじゃないかな(笑)
感情とか状態を俯瞰して見る目があるから、この感覚使えるなって思っちゃう愚か者なんですよ。
ある意味で美味しいものだと考えようと思って。なんの苦労もなく進んだらドラマがないじゃん。って思ってた。
_____そうだったんですね!
確かに俳優じゃなかったら弱さは隠したいですよね。
実はあの時「いつもは撮るタイミングなんて言わないのにな」と不穏な空気を察知して、撮っていいのかな…と思いながらカメラを向けていました。
うんうん(笑)
_____何かしたいけどできることないからそっとしておこうってメンバーとも話してました。よくなっていく段階で、無料塾は影響していましたか?
影響してたよ。僕にとって安心できる場所だったし元気にやっている様子を見てハッピーになってくし、支えになってくれたよ。
(よかった...!)
_____話は変わりますがモノローグ、台本について。後半で演出、指導は使い分けしてました?
できないことはさせないように、とは思ってて今感じてるものからもっとできること、違うところへ行けるかをガイドしよう、を心がけていたかな。
_____できないことはさせないように、とは俳優を操作しないということですか?
演出家に言われてやる経験も糧だけど、僕は本業が演出家じゃないし、演技の前提は共有しつつ、それを進めるために何をしたらいいか?を提案していたね。課題はそれぞれ違う。
別の場所に行ってもできるようにって。
動けなくて止まる人には動いていいよ、相手ばかり見る人にはいろんなところを見れるんだよってガイドする。
_____動きを指定することはなかった気がしますね。許可を出したり、違う考え方を持ってみて、など気づかせることが多かったですね。私がイメージする指導と全然違ったから驚きました!
そうなの?(笑)
_____動きを与えるイメージでした。演技は行動ということも知らなくて。
メンバーもやりやすかっただろうな、と。
海外に行って学んだことですか?
自分の積み重ねかな。もちろん海外を参考にしたものもあるけど、俳優が自分のアイデアを提案できることが一番やって欲しかったこと。
指示待ちじゃなくて、提案を演技で提案できる人たちになって欲しかった。
外からのアイデアを押し付けず、自分のアイデアにどれだけ自信が持てるか。それを実際にやるか。
尊敬する演技指導者のスコット・ウィリアムズは、演技指導者の仕事は勇気づけ(勇気を持たせる、自信をつかせる)と可能性の提示(こんな可能性がある)と言っている。
その二つに徹したかな。
もし違うと思っても否定しない。台本の読み込みとか、違っててもそれに自分で気づかないといけない。気づかせて発見させる。
相手をどう変える? 何を得る? 自分だけでやっても適当なところで納得しちゃうから、より深くさせるために疑問を投げかけるよね。
_____確かに問いを投げかける場面が多かったですね。
メンバーから帰り道で不安を聞くことがあって。こうした方がいい、とは思ったけど私はプロではなく
言うべきことでもない。
大丈夫だよ、と励まして良い点を伝えていました。
簡単だからね。答えを教えるの。言ってやってもらうのは楽じゃん。
ずっと一緒にやるわけではないし、自立する俳優になるのが目標だったからね。良くなった、自立した風を装うのは簡単だけど問いを受けて気づく、が当人のためではあるよね。
...私もグサグサ来ます。
なんで〜笑
_____生き方とか悩んでる最中なので(笑)
でも、今までの悩みのレベルが変わったかなと。
期間中にもう持ってるんだなって気づいたので。矛盾ですけどこんな悩みを持てるようになったのは嬉しいなと思ってます。
メンバーとたまに会って、そう言い合ってます。
自由な方が悩みは多いよね。
だって自分で選べるわけじゃん。これだけしか選べない、となったらその範囲でしか悩みがない。
見れる範囲も広くなるから、人生の責任者にもなるわけで。
目の届く範囲が広くなったってことだと思うよ。
(なるほど!!!)
_____無料塾が終わって外に出たら自分なんて、と否定的な自分にもどってしまうなって言ってたメンバーがいて。
筋トレと同じように心のトレーニングも日々言い続ける必要があるなと思いました。
終わった後どう100時間を生かすのかも課題なのかなと。
どっちでもいいんじゃない。必要な時に引き出されたりすると思う。
経験したかしてないか、では違うけど。無料塾のために頑張る必要もないし。勝手に活かされるんじゃないかな。
_____(またがんばろうとしてた...)身体は覚えてるんじゃないかなと思いますね。
やっぱり覚えてるんじゃない。
_____突然あの時にこんなこと言ってたな、とか思い出すことがあって。
それが身体が覚えてるってことですよね。
_____思い出す、と言えば忍翔さんに質問するのが怖く無くなってよかったと思ってます(笑)
よく言われるからおかしいことではないよ。(笑)
_____たぶん自分がそう思ってるだけだったんですよね。
こんなつまんないことを言って聞いていいのかって何か学んだりするとき、特に思ってしまうんですよね。
哲学対話で対等だよって教えて、メンバーがどんどん提案していっている様子は後半特に生かされててよかったなと思いますね。
ドキュメンタリー映画、楽しみにしています、ありがとうございました!
〈取材、文責〉中島早紀
無料塾に参加するまでの自分は、演劇について話せるようになるなんて思ってもいなかった。
忍翔さんのアシスタントになり、出会いが増えてまた人生が広がっている。
しばらく経ってから見直す時、どこにいて何をしているんだろう。
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