野球の試合の応援に来た父
#幼少〜小学生
ぼくは小学生の頃、
リトルリーグという硬式野球リーグのチームに入っていた。
始めた理由はあまり覚えていないが、
ぼくは野球を観るよりもやるのが好きな子供だった。
所属していたリトルリーグのチームでは、
基本的に各々親御さんが車を出し、練習場所や試合まで集合していた。
しかし、ぼくはコーチと近所であったため、いつもコーチが車を出してくれて、近所の何人かと監督をピックアップして練習場所・試合場所まで送り届けてくれていた。
コーチが車を出してくれるにも関わらず、月謝は他のみんなと同じだった。
そのため、ぼくら(コーチの車組)は、
コーチと車を出している親御さんたちに嫌われていた。
それでも、監督とチームメイトは仲良くしてくれたし、そういったことで差別をしなかった。
まあチームメイトはそもそもそういった事を知らなかった可能性が高い。
とにかく楽しく野球をしていた。
ある日、試合で中野の方に行くことがあった。
朝5時くらいにコーチが迎えに来てくれて、いつものように試合へ向かった。
しかしその日はいつもと違う点が1つだけあった。
父が来てくれると言っていたのだ。
初めての応援だったので、恥ずかしさもあったけど、頑張ろうと思ったのを覚えている。
ぼくは低学年であったが、高学年チームのレギュラーになれたのが効いたのだと思った。
試合場所へ着くと、荷物を出し、アップなどをテキパキ行った。
試合直前のお昼くらいになって、父が車でやってきた。
そして朝早くから来ている他の親御さんたちに挨拶して、父は応援団に加わった。
試合が始まり、打席に立ち、応援席の方をちらりと観ると、
父は応援をしながら、英語の勉強をしていた。
試合が終わった。
チームは負けた。
でも、その日のぼくは4打席3安打2打点でわりと活躍をしていた。
そのため、そんな悪い気分ではなかった。
父を見つけたぼくは感想を求めて近寄っていった。
父は「負けて残念だったね。次は頑張れ」といって先に帰っていった。
ダウンのキャッチボールをした後、片付けをして、
父は一体何しに来たのだろうと、思いながらコーチの車に乗り帰った。
帰りの車には、コーチと監督、そしてぼくとチームメイト2人が乗っていた。
帰りの車では他のチームメイトは疲れて寝てしまうのだが、ぼくだけはいつも起きていた。
コーチと監督の反省会の会話が好きだったのだ。
監督はぼくのことを褒めてくれていた。
なんだか恥ずかしかったので、ぼくは寝たふりをしながら二人の会話を聞いていた。
いつもは否定するコーチも褒めてくれていた。
温かい気持ちになって。
このまま家に着かなくてもいいのにとか思っていたけれど、普通に家についた。
21時過ぎだったと思う。
帰ると父はぐっすり寝ていた。
慣れない応援で疲れていたのだろう。
お母さんに洗濯物を渡して。
その日のことを話して、ぼくも眠った。
よくわからないけど、悲しい気持ちだった。
翌週から、親御さんたちのあたりが明らかに激しくなった。
当時は理解できなかったけれど、今なら理解できる。
結局ぼくは2年生から6年生までリトルリーグに所属していたが、
思い返すと父が練習や試合に来たのは数えるほどしかなかった。
それで良かったんだと今は思う。
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