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父の風邪とマスク

#大学生〜大学院生

父は昔から病院が嫌いだ。

そのわりにアレルギー体質であり、年中鼻炎気味だし。
よく風邪をひく。

それでも絶対に病院に行ったりはしない。


ある冬の12月。

とても寒い日だった。

その日、どこに出かけていたのか知らないが、
帰ってきた父はとても体調が悪そうだった。

まるで ”私体調悪いです、気遣ってください。”

と言わんばかりに咳き込み、鼻をすすり、
"熱あるかも"、 "身体がだるい" などと独り言を言いながら、
部屋着に着替え、扁平足の足をベチベチ鳴らし(つまり裸足)、
家中をペタペタ歩いていた。

父は明らかに風邪を引いていた。

実は、その冬はぼくにとって大事な冬だった。
というのも修論提出の期限が残り2週間程度に差し迫っており、
追い込みの時期だったのだ。
ぼくは連日徹夜で論文の執筆作業を行っていた。

そのため、ぼくは父の風邪が感染るのがどうしても嫌だったので、
直ちにマスクをし、さらに

「ぼく、いま感染ったら大変だから、マスクしてくれない?」
「すぐ病院に行って薬飲んでさっさと寝て。」

と頼んだ。父は

「風邪じゃないし、体調悪い人にそういうことしか言えないの?」

と言った。

ぼくは若干のストレスを感じながらも、
父を避けて、自室にこもって作業することにした。

翌日、父は熱で寝込んでいた。病院に行かなかったようだった。
かなりの高熱らしい。風邪が悪化したようだった。

同時に父の体調悪いアピールも悪化していた。

トイレに行く時、食事の時は
コレでもかと言わんばかりに咳とくしゃみをしていた。

父はマスクはしていなかった。

父の風邪は長引き、数日後に体調が回復した。

一方、入れ替わるようにぼくは高熱に苦しんでいた。
徹夜続きで免疫が下がっていたため、感染りやすくなっていたのだろうと思う。

流石に苛立ちを覚えたので父に
「だからマスクしてって頼んだのに。。。」
といった。

父は
「日がずれてるから、私の風邪ではない。」

といった。
そう言いつつも、少し責任を感じていたのか、
ポカリスエットや栄養ドリンクなどを買ってきてくれた。

ぼくは高熱で意識が朦朧としつつも、
なんとか修論を書き上げて提出することが出来た。

提出した日、まだ高熱は続いていたため、病院に行った。
インフルエンザと診断された。

後日、ぼくが回復した後、若干の怒りを込めて、
何故マスクをしなかったのか、と言う事を父に聞いた。

ぼく「なんでマスクしてくれなかったの?感染って大変だったんだけど」

父「だって、マスク嫌いなんだもん。」

ぼく「でも、ぼく風邪ひいたらまずい時期だったし、ちゃんと頼んだじゃん。」

ぼく「だからとりあえず簡単な対処としてマスクくらいしてよ。できる事やっとかないと、あなたのせいだと思っちゃうし、そう思ってるよ。」

父「おい、親に向かってその口の利き方なんだ」

ぼく「ぇ、どこで怒ってんの?」

父「あなたじゃなないだろ」

ぼく「それはどうでもいいよ、謝ればいいんなら謝るよ。すみませんでした。」

ぼく「で、マスクって人に感染さないための最低限の対処だと思うから、次からちゃんとして欲しいんだけど。」

父「うん、でもマスクって気持ち悪いじゃん」

ぼく「でも、たとえば電車で隣にマスクもせずに咳とくしゃみしてる人が座ったら、嫌じゃない? マスクしてても嫌だけどさ、さらに嫌じゃない?」

父「嫌だけど調子悪かったときは、電車というか外出してないもん」

ぼく「そういうことじゃない。とにかく風邪っぽかったら感染さない努力をするべきじゃないかな。すくなくとも、努力を見せたほうが良いと思う。」

父「わかった。」

ぼく「というか長引いたのは早めに病院に行かなかったせいなんだから、これからは病院にも行ってください。」

父「そうかもね。」


最近また父が風邪をひいたが、
当然病院にはいかなかったし、
マスクもしなかった。

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