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記憶のパーツから辿る旅の思い出

幼い子供がホテルのレストランから走ってきて
僕達を追い越して行く間際にポケットから
白くて小さい、その割りには
少し重みのありそうなモノを
ふっくらとした絨毯に落としていった。

横にいた僕の子供がそれを拾いあげ
落とした子に手渡す時に落とし物に目を向けて
「あ、」という表情をしていたのと同時に
僕は彼が幼い頃にそれをもらっては
助手席のドアポケットに並べて遊んでいた
数年前を思い出した。

落とし物を見るまえから
なんとなく帰りに寄ろうかなと思っていた
お店の会計時に小さい子供に
このお土産は渡されていたのだけれど、
僕と同じ位の背丈になっている中学生には、
もう渡されることもなく、
「もう無いのかな」といった素振りで
さすがに欲しがることもなく
階段を降りて行く背中をみていた。

お店のおばちゃんにに訪ねてみると
『あー、あれね、、
最近の子供はあんなの欲しがらないから、、』と
少し寂しそうに笑って
残っていたお土産をいくつかを
僕に手渡してくれた。
こんなもの欲しがるオジサンは
少しおかしく思われたかもしれない、、

店を出ると車の前で待っていた子供に
お土産を渡した、
「もう、こんなのいらないよ」とで
も言われるかと思っていたが
はにかみながら受け取って眺めながら
手触りを確かめているようだった

帰りの車内では昔のように
ドアポケットにお土産を置くことはないが、
「刺身も干物も美味しかったから、また来たい」と感想を話していた。
この辺りにはよく来るし
人気店だから経営的な理由で
無くなったりはないだろうから
また来て食事をすることは出来るだろう。

ふと、絵や音楽は何か記録されたりして
残すことができるが
飲食店はお店や人が無くなってしまったら
その味は永遠に失われてしまう、、
みたいな言葉を思い出した。

そんな時、このお土産は味だけではない
事柄も含んだ体験を思い出させてくれる
記憶のパーツとなるんだろうと
新しいお土産の懐かしい手触りを
感じた旅の終わり。

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