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都落ちして思うこと

「東京住んでる人がたまに田舎にくると、空気がきれい!水がきれい!って騒ぐんだけどさ、私に言わせれば東京のほうがダンゼンきれいだよ。街もきれい、男も女もきれい、食べ物も飲み物もきれい」

そんなことをぼやきながら、茶色の煮物をつつき缶ビールを飲むミヤコは4年前まで港区女子だった。

「ここに戻ってきてすぐは、あーやっぱりこっちの方が私の体に合ってると思ったよ。でもさ、緊張感も刺激も喜怒哀楽もないんだよね。無。ムだぜ。ムでチェだぜ」

ユニクロで買ったと思われるTシャツと、洗濯しすぎでゆるゆるになったハーフパンツ姿で、膝をぼりぼりと掻いている姿は女子力という意味でもムでチェだった。

「数年会ってなかった男からLINE、いわゆるザオラルよ、復活の呪文がたまに来るんだけどさ、現在地を伝えると、今度キャンプしに行くよーみたいなこと言われてそれっきり。今度っていつだよ、来世かよ」

東京にいた頃は少しだけ芸能活動もしていた。雑誌に出たりNetflixのドラマに出たこともあった。西麻布で有名人とシャンパンを飲んでいた私が、なぜ山奥で煮物をつついたりキノコを採ったりしているのだろう。

キノコうまいけど。肌はきれいになったけど。体重5キロくらい増えたけど。中学の同級生にずっと好きだったんだぜってプロポーズされたけど。子ども二人いるけど。幸せだけど、、、

きれいではないんだよね、田舎って。

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