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昔、どこかの賢い犬
私が子どもだった頃の話です。
私の実家は、大阪の郊外、北摂というところに位置する住宅街の中にありました。
食材の買い出しは、母に連れられバスに乗り、阪急沿線の駅近くまで行かないといけませんでした。
お魚屋さんからお肉屋さん、野菜、果物、お菓子、食器、布地、服、金物屋さん、といったように多くのお店が集まっている、所謂、市場というところ。
母は大きなかごを二つ持っていました。
でも、日々の暮らしの中で不足するものはどうしても出てくる、かといってバスで出掛けるのは中々たいへんなこと。
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◇ ◇ ◇
そういう時、家の前の坂道を下って少し歩いたところに一軒の八百屋さんがありました。野菜が中心でしたが、お肉やお魚、お菓子、アイス等も売っていて、なかなか活気のあるお店でした。
母に頼まれて何か一品を買いに行くことがよくあり、そこのご夫婦が「○○ちゃ~ん、いらっしゃい!」と満面の笑顔でいつも出迎えてくれました。
おばさんは割烹着にくるくるパーマ、おじさんは長靴に黒ゴムの前掛け、頭にタオルをぐるっとターバンにして、二人とも頭に鉛筆を差していました。
レジならぬ大きなザルが天井から紐で吊り下げられていて、そこから貰うお釣りを手に握って来た道を帰りました。
◇ ◇
その頃出会って、今でも忘れられない一頭のドーベルマンという犬種の犬がいます。
大型犬で、きゅっと引き締まった筋肉質の身体、足が長く、被毛は極めて短かく光沢があり、色は群青っぽい漆黒の犬でした。
警察犬、と言えばシェパードを思い浮かべますが、ドーベルマンもその資質を備えています。
◇
当時、家でマルチーズという片手で抱っこ出来るふわふわの犬を飼っており、そんな視点で見るドーべルマンはとても近寄りがたい存在でした。
でも、断尾されていることを母から聞き、とても可哀想で仕方ありませんでした。
◇◇
そのドーベルマンのこと。
当時、普通にその光景を目にしていたのですが、今になって思えば、それはすごいことで……。
買い物かごを咥えて、八百屋にやってくるのです。
私はその犬と道を歩いていてすれ違ったり、遠くから見かけたりすることがよくありました。
でも、実際八百屋のなかでご夫婦と犬がどんなやりとりをしていたのかを見たことはありませんでした。
きっとかごの中に飼い主さんのメモとお金が入っていたのでしょう。
…………… どうしつけられたらそんな超犬的?なことが出来るのでしょう?
主たる飼い主が自分となっている今だからこそ、そう思います。
子どもだった私と全く同じことを難なくやり遂げていたわけですから。
何処のお宅の犬かも知りませんでしたが、「行ってらっしゃい」と見送られ、八百屋まで真っ直ぐ歩いて行き、用事を済ませ、そしてまた少し重くなったかごを咥えて家へ帰ってくる。
顎が疲れそうです。でも途中で休憩??なんてしていなかったはずです。
交通量は少なかったのですが、八百屋の前の道はバス通りで、昼間でも1時間に4本くらいは通っており、飼い主さんはきっと時刻表を見て犬をお使いに出しておられたのでしょう。
犬が帰ってきたら、そこまでの「信頼」にこたえる「忠実」に、どんな褒め方をして、どんなご褒美を与えていたのでしょうか。
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今の世の中では、犬のお使いは危なくて到底無理なのですが、それよりもここまで賢く躾けられる犬はまずいないと思います。
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※ そしていま、こんな犬もいるわけです'。
最近、短歌を考えているとき、順番に折ってゆく私の指を舐めるという、謎の行動をするようになりました。何のお手伝いてしょうか (?_?)
多分、私が何か新しいコマンドを出していると勘違いして、ご褒美欲しさに「取り敢えず、舐めとこ」なのだと思います (^ω^U)v
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