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今思い出した他の本のこと


◇◇◇

最近の書店で、ベーカリー兼イートイン兼本屋さんという、書店かパン屋さんかティールームか図書館かわからないところがある。
どういうこと? だいぶ抵抗感あります。
パン屋さんのイートインも回転悪いし、本も「一読しました」の中古になる。
誰のためになるのか?
小さい書店では、立ち読みすることでさえ店員さんの視線を気にしながらどんな本かな~?と、こそこそ見ていたのが、今や座り読み、いや椅子、テーブル付きになっている。はぁ?
でも、このシステム愛用している方々はマナー違反でも何でもないので、ただの潔癖性が言ってることだと、見逃してやって下さい。小心者です。

と、ある日、そこの書店で見付けた一冊の本、面陳列で置かれ、お客さんに読ませないよう、ピタッとビニールで梱包されていた。
度々名前を耳にする本だった。
パン屑、指紋なし、安全なので買った。

直木賞受賞、読書メーターで調べると評価が高い。気にはなっていたが読んでいない。
この本、きっと感動した人多くいるのだろう。半年近くで、6回も増刷している。

読んでみた。

簡単な文章なので早く読めそうだけど、なかなか引き込まれなくて時間が掛かってしまった。
ここ泣く所ですよ、というのが何ヵ所も出てくる。
涙腺が年々緩んでいるはずなのに……。
どうして感動出来なかったのだろう??

こんなこと書いたから、その本の名前は明かせないけど、
原因を追及してみようと思ったあたりで、何年も前に呼んだ角田光代さんの「さがしもの」という本を思い出した。

これはやっぱり人とおんなじだ。百人いれば、百個の個性があり、百通りの顔がある。つまらない人なんかいない。 中略 つまらない本は中身がつまらないのてはなくて、相性が悪いのか、こちらの狭小な好みに外れるか、どちらかなだけだ。

角田光代 「さがしもの」あとがきエッセイ 新潮文庫

◇◇
私はまだ、この域にはなれない。
選んだ本は自分にとっての当たりであってほしい。" つまらない本ではなく、相性が悪い "
でも、服の試着のように、店頭の姿見で似合うかな~?とはいかず、自分に合うか合わないかは買って読んでみないと分からない。合わない本はやっぱり買いたくない。

角田光代さんの「さがしもの」というこの本には、「本」を題材としたエッセイが、あとがきエッセイを入れ、全部で10編掲載されている。
ココというところに私は、付箋を付けていた。
付箋好き!
紙の本ならではの、付箋を付けること、どこが心に刺さったかが、後で見付けやすくてよいと思う。

その場所
付箋1*
 「ミツザワ書店」という古書店があり、書店主であるおばあちゃんが亡くなってから、かつて高校時代そこで本を万引きした少年が、作家になって11年振りに訪れ、店を継いでいる女性(孫)との会話で

「私、子どものごろおはあちゃんに訊いたことがあるの。ほんのどこがそんなにおもしろいの、って。おばあちゃん 中略 『だってあんた、開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか、本しかないだろう』って言うんです この町で生まれて、東京へも外国へも行ったことがない、そんな祖母にとって本というのは、世界への扉だったのかもしれないですよね」

角田光代「さがしもの」ミツザワ書店 新潮文庫

◇◇ 
本を開くと、中に住んでいる人達が動き出し話し出す。リアルではないその場所、場面が、頭のなかにがしっかり浮かび上がり存在する。翌日、本を開けるとまたその場所へすっと戻っていく。読むことで生まれる視覚世界は、他の人には私とは違う景色が見えるはず。それだけに、本を読むことは不思議な体験だと思う。

一番上が相性のわるかった本 _(-_-#)

付箋2*
本が好きだったおばあちゃんが亡くなり、幽霊となって出てきたときの私(孫)との会話

「おばあちゃん、あの、死ぬのこわかった?」私は思いきって訊いた。おばあちゃんは私を見、「こわいもんか」と胸をはった。「死ぬのなんかこわくない。死ぬことを想像するのがこわいんだ。いつだってそうさ、できごとより、考えのほうが数倍もこわいんだ」

角田光代「さがしもの」さがしもの 新潮文庫

付箋3*
 もうおばあちゃんは幽霊になって出てくることが無くなり私(孫)が大人になって書店に就職したあと

「あいかわらず、いろんなことがある。かなしいこともうれしいことも。もうだめだ、と思うようなつらいことも。そんなとききまって私はおばあちゃんの言葉を思い出す。できごとより、考えのほうがこわい。それで、できるたけ考えないようにする。目先のことをひとつづつ片づけていくようにする。そうすると、いつのまにかできごとは終わり、去って、記憶の底に沈殿している」

角田光代「さがしもの」さがしもの 新潮文庫

◇◇
「止まない雨は……。」とか「明けない夜は…。」で私の心は動かない。
付箋1* 本にも相性はあるのだから、刺さる言葉にも相性があるのは勿論のこと。
私は、付箋2・3*のような、角田光代さんのようなことばが刺さる、というより、落ち着く。
一見してプラスを全面に押し出していない。
だけど、静かに語りかけるこれらのことばは、不思議と磁石のように、すたっと心にくっついてくる。 
その時その時の、心に居て欲しくない得体の知れない固まりをやさしく溶かしてゆく。
欲しかった答えが頁をめくるとそこにある、これはそんな本。

◇ ◇ ◇

同じように平坦に見えるけど、くっついてきたことばを思い出した
知ってる方もいらっしゃると思うけど、清水ミチコさんのことば。20代前半に何をやっても人生がつまらなく感じていた清水さんに、バイト先の先輩がかけたことばである。
調べてみると "「カニカマ人生論」幻冬舎" でそれについて更に詳しく書かれているらしい。

その時、バイトの尊敬する女性の先輩が「最近元気ないけど、どうした?」って聞いてくれたので、自分の気持ちを打ち明けました。「頑張れば明日はやって来る」とか前向きな言葉を言ってくれると思ったら、「いや、人間は幸せにならないように出来ているのよ。だから、頑張るとか頑張らないとかじゃなくて、淡々と受け止めないといけない。良いことがあったら喜べばいい」と言われたんです。目からうろこでしたね。

◇ ◇ ◇ ◇

慎重に並べ終えた正のドミノが、負の方向へゆっくり倒れて行くことかある。最後の一枚に向かうそれを止めたくても、力無いときは追いかけることが出来ない。
その一歩手前で駆けつけ、倒れなくする。
そんなことばをいつも探している。
これからも、相性抜群の本を見付け、付箋でヒラヒラにしてみたい。
取り敢えず、「カニカマ人生論」注文した。

根っこの力でブロック盛り上がる、ここでつまずく、注意 (@_@)
昨日*サクラ咲いていないのに咲いているような U^ェ^U
昨日*これからは、雨が暫く続きそう。
サッカー⚽少年(写真中央)はなにして過ごすのかな?



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