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「実は自信がないトップの恐れ~『おまえなんかに会いたくない』~」

『おまえなんかに会いたくない』 乾 ルカ 著 (中央公論新社)
 
高校のスクールカーストの中で低層に位置する一人のいじめにあっていた女の子が、10年後に開かれるであろう同窓会での復讐を誓う。
同窓会の中でのイベントであるタイムカプセルに、とある伝説としてみんなが知る迷信がかった“モノ”を仕込む。
 
同窓会SNSで開催の告知がなされて、その女の子も参加するとわかるといじめをしていたと少なからず自覚していた者たちはザワつきはじめる。
 
カーストのトップに君臨していた眉目秀麗な女子、彼女に一目置かれたい数人の取り巻き、カースト上層部入りを狙う者やカーストに全く興味を示さない者などが中間層におり、彼らがカーストにこだわるあまりいかにいじめを加速していったか。
 
高校時代と現在を交差させながら、いよいよ迫る同窓会を前にいじめの真実をSNSでつきつけられ、自分は当事者ではないと逃げ、他人になすりつけ、伝説の“モノ”にしだいに振り回されていく。
それは「もしかして自分はいじめに加担していたのでは・・・」「いや、彼女があまりに空気を読まずカーストエラーを起こすからだ」「彼女の狙いは自分へ向かっているのか?」などの考えは、それからの彼らに憑りつき神経を蝕んでいく。
 
そしていよいよ同窓会、タイムカプセル開封式が始まる。
果たして、復讐は成功するのか?
誰が標的となるのか?
読者は読みながらスクールカーストの上層部にいた者たちの優越感と、あまり共感できるとは思えないいじめられる女子の気持ちに、登場人物たちと同様に振り回される。
 
しかし、昔から今に続くいじめの構造に無力ささえも覚えてしまう。
小さな社会の縮図である学校での、あまり思い出したくない記憶を掘り起こされ、しかし卒業後大人になって過去にどう向き合い、どう大人として進歩していけるかを問われているようだ。
 
ラストは想像していた結果となったのか、意外な結果となったのかは読者によって異なるだろう。
 
人はなぜランクをつけたがるのか?マウントをとりたがるのか?
そういう人ってランクをつけることで安心するのか?
そんなの逆に自分に自信が持てないからではないのか?
 
だからすごくカッコ悪いと思う。
スクールカーストなんて、集団でしか行動できない人たちのかたまりでしかないのでは?


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