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「長男の心配が尽きない、でも取り越し苦労だった話」

長男が五年生の時、集団宿泊教室の参加で三日間家にいなかった。
それまで長男一人でじいちゃんちにお泊りしたことは何度もあったけど(それも生後八ヶ月くらいからすでに一人でお泊りしても平気だった奴である)、この時は初めて友だちや先生といういわば他人といっしょにお泊りするのだ。

子どもたちを宿泊させる施設というと、集団生活をきっちり教えるためにやたらと厳しい…らしい。

そこでねぼすけの長男は、早くからすごく心配していた。

「ああ~…俺、ちゃんと起きられなかったらどうしよう…」
とかなり真剣に悩んでいるようだった。

「大丈夫よ、ちゃんと起きられるって」とすごく楽観的にいう私に、

「だって、もし寝坊して『朝のつどい』に遅れたら、館長さんからめちゃくちゃ怒られるんだから!」と必死の形相。

「あのねえ、そこまで気になっているとね、人間って緊張して案外早くに目が覚めちゃうものなんだよ」とつとめてやさしく励ます私。

「でも~…それでも起きられなかったらどうするよ~」と長男。

「ちゃんと先生が起こしてくれるよ。それに、みんながごそごそ起きだしている物音で目が覚めちゃうよ」
といたって大丈夫なことをアピール。

「…でも…やだなあ…。それだけが俺、心配。他はとっても楽しみだけどさ…」
と、やたらとブルーな長男。

という風に、出発前夜までこのような会話が何度も繰り返されていたのであった。

そして当日の朝早く、私のベッドにドドドッとやってくる足音!
長男だった。
ベッドに入ってくる長男におはようと言うが、時計はまだ朝6時前!(いつもなら、七時過ぎにやっと起きてくる)

ほおら、見てごらん。
緊張するとこんなに早く起きられるのだよ!!長男くん。
きっと心配ないって。

そしていよいよ出発した長男。本番の現地での朝はちゃんと起きられたんだろうか…?

はじめての他人の釜の飯を食う長男。(おおげさか?)
こちらもなんだか緊張してしまう。
日程表を見ながら、今頃はあんなこと、こんなことやっているのかなぁ…と、行動を想像してみる。
無事に過ごしているかなあ?
好き嫌いが多いから、ご飯、残しているんじゃないかなあ?
などど、いろいろ考えてしまう。

ちょっとだけ長男がいないさみしさをかみ締めていた私。
帰ってきたら、おそらく質問の嵐をあびせかけることになるだろう。

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無事に帰ってきた長男に、朝ちゃんと起きられたのか聞いてみると、やはり時間通りに起きることができたようだった。

他人とのお泊りは、小学生とはいえ緊張感が伴う。

それでも同級生と三日間ではあるが、寝食を共にする体験は非日常感とずっと残る楽しい記憶をまだ幼い彼らにプレゼントしてくれたであろう。
我が家に帰ってきた時の長男の顔は、とても晴れやかで幸せそうであった。
きっと何にも代えがたい素敵な経験をしてきたに違いない。

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